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こ、ここが、新しく男女の出会いの場とされるカフェね。
フェデリカは、久しぶりに首都へ出かけると、レディナが言っていたカフェにやってきていた。
「あ、あのお嬢様。本当にこんな所に入られるのですか?」
侍女のテリルは不安そうに聞いてきた。
「そ、そうよ。ここは今の新しい男女の出会いの場なんだから!テ、テリルは外で待ってて頂戴」
威勢のいい事を言っているが、フェデリカの顔は強張っていてテリルは心配そうに見つめている。
ああ、怖い。入りたくない。やっぱり、また今度にしようかしら。でもここで入らなきゃ一生入らない気がする……。そしたら結婚だって……。
フェデリカの頭には、結婚適齢期を過ぎたフェデリカを悲しそうに見つめる年老いた父と母の姿が浮かんだ。
ああ、お父様とお母様の為にも!いざ!!
フェデリカは、意を決して扉を開けた。
店内は明るく可愛らしい内装で、美味しそうなお菓子の匂いが漂っていた。
そして、テーブル席には楽しそうに話す男女がそこかしこに見受けられる。身なりの良い人もいて、貴族がここに出会いを求めてやってくるのは本当らしい。
い、意外と素敵なお店ね。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
男性店員に声をかけられ、ビクッと肩を震わせるとフェデリカは高速で数回頷いた。
「かしこまりました。では、こちらファーストドリンクのアイスティーになります。では、お好きなお席にどうぞ」
え、す、好きな席!?
フェデリカはキョロキョロと周りを見渡すと隅の空いているテーブル席を見つけてそこに座った。
貰ったドリンクを飲んでいるとフェデリカの席を数人の男達が囲った。
「何飲んでるの?」
「え、えええと、さ、さっき貰ったアイスティーを」
身なりからすると、平民の男性達だろう。しかし、こんな私に話しかけて来てくれるなんて。
フェデリカが感動していると
「ここの店、初めて?なんか緊張してる?」
「ケーキは好き?とってきてあげようか?」
「ここ座っていい?」
「あ、お前ずるいぞ」
「早いもの勝ちだろ」
「ねえ、君は誰に隣に座ってもらいたい?」
「へ!?ええ!?」
矢継ぎ早に質問されて、フェデリカは混乱していた。え?え?隣に座る?じゃあ、もうお付き合いの相手を決めなきゃいけなきの!?そんな会って間もないのに!?
フェデリカはパニックになっていた。
こんなに男性に囲まれた事はないし、話している内容に理解が追いつかない。
「むむむむ、無理だわ!」
フェデリカは真っ赤な顔を押さえた。
「えー。なに、真っ赤になっちゃってかわいい。ねえ、俺にしなよ。二人で楽しも」
最初にフェデリカに話しかけてきた黒髪の男がフェデリカに寄る。
「は!?お前ばっかずるいよ。ねえ、俺にしなよ」
「こいつら、下心しかないから。俺にしな」
言い寄って来る男達の言葉はフェデリカにさらなる混乱を招く。
「ねえ、ねえ。誰にするの?」「誰がいいの?」
ああ、早く選ばないと、せっかく声を掛けてくれたのに嫌な思いをしてしまうわ。でも、だからって誰を選べばいいの!?どうしましょう!どうしたらいいの!?
ああ、もう!!
「こ、この人!」
追い詰められたフェデリカが、震える指で適当に指し示したその先は、フェデリカの事を囲っていた男達ではなく、その先で給仕をしていた店員の青年だった。それは、茶色の髪に深緑の瞳の青年だった。
「……え?」
ゴールドブラウンの髪色に瞳が深緑の綺麗な青年だった。その青年は驚いたように私を見た。
「私、あの人とお付き合いします!」
「え?お付き合い?」
「はい。私とお付き合いしてくださいませんか!?」
「お付き合いって……」
困惑した顔の青年を前に、フェデリカは自分が何をしでかしたのかやっと気づいた。
わ、私何言ってるの!?こんな私からお付き合いを申し込まれたって迷惑に決まってるじゃない!!ああ、すぐに撤回しないと!!
フェデリカが自分の言動に焦っている間に、フェデリカを囲む男達が店員と店員の青年の睨み合いがあった事はフェデリカは気づくわけがなかった。
「あああの、先程は変な事を言って」
フェデリカが店員の青年にさっきの言動を撤回しようとしたがそれを店員の青年が遮った。
「いいですよ」
「へ!?」
「だから、お付き合いしましょう」
え?え?い、いいの?お付き合いいいの!?
「あ、ああありがとうございます!」
やった!やったわ!お父様、お母様、私、婚約者ゲットしましたわー!
「やったじゃん、ルカ。玉の輿に乗れるんじゃね?」
さっきフェデリカを案内してくれた店員に肩を組まれて茶化されていた。
玉の輿……。ああ、そうよね。私、公爵令嬢ですものね。こんなですけど、地位と財産だけはありますからどうか末永くよろしくお願い致しますわ!
「うるさいな。仕事しろよ」
ルカと言われた青年は同僚の男性をあしらうと、今度は私の周りを囲っていた男達を押しのけて、手を差し出した。
「もう、ここに用はないですよね?」
その差し出された手は、まるで舞踏会でダンスに誘われる時のような仕草で、フェデリカが誘われるようにその手を掴むと、ルカはフェデリカを立ち上がらせて、そのまま店の出入り口までエスコートして言った。
「もうここには、来ない方がいいです。ここは貴方のような人が来る場所ではありませんから」
「はい……」
フェデリカは夢見心地でルカを見つめながら、返事をした。すると、外に待機していた侍女のテリルが飛んでくる。
「お、お嬢様ー!!もう!もう!心配致しましたのよ!ここは、貴族が平民の男性と一時の遊びを楽しむ為の所なんですって!こんな所、早く行きましょ!」
テリルはフェデリカの肩を押して馬車が止まっている所へ連れて行こうとする。
未だ夢見心地のフェデリカは、後ろ髪惹かれるように後ろを振り返った。
「あ、あの私、フェデリカ・クレリッチと申します。こ、これからよろしくお願い致します!」
「あ、はい。俺はルカ……です」
「ルカ様ですね!それでは御機嫌よう」
最後にフェデリカは緊張した笑みを浮かべてカーテシーをすると、テリルと共に馬車へと乗り込んだ。
笑うの苦手なのかな。引きつってるけど、何かそれはそれで可愛いな。
「フェデリカか……、フェデリカ・クレリッチ……ん?クレリッチ!?」
ルカは大きく目を見開いた。
「クレリッチって、あの名門公爵家じゃんか!!」
フェデリカは、久しぶりに首都へ出かけると、レディナが言っていたカフェにやってきていた。
「あ、あのお嬢様。本当にこんな所に入られるのですか?」
侍女のテリルは不安そうに聞いてきた。
「そ、そうよ。ここは今の新しい男女の出会いの場なんだから!テ、テリルは外で待ってて頂戴」
威勢のいい事を言っているが、フェデリカの顔は強張っていてテリルは心配そうに見つめている。
ああ、怖い。入りたくない。やっぱり、また今度にしようかしら。でもここで入らなきゃ一生入らない気がする……。そしたら結婚だって……。
フェデリカの頭には、結婚適齢期を過ぎたフェデリカを悲しそうに見つめる年老いた父と母の姿が浮かんだ。
ああ、お父様とお母様の為にも!いざ!!
フェデリカは、意を決して扉を開けた。
店内は明るく可愛らしい内装で、美味しそうなお菓子の匂いが漂っていた。
そして、テーブル席には楽しそうに話す男女がそこかしこに見受けられる。身なりの良い人もいて、貴族がここに出会いを求めてやってくるのは本当らしい。
い、意外と素敵なお店ね。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
男性店員に声をかけられ、ビクッと肩を震わせるとフェデリカは高速で数回頷いた。
「かしこまりました。では、こちらファーストドリンクのアイスティーになります。では、お好きなお席にどうぞ」
え、す、好きな席!?
フェデリカはキョロキョロと周りを見渡すと隅の空いているテーブル席を見つけてそこに座った。
貰ったドリンクを飲んでいるとフェデリカの席を数人の男達が囲った。
「何飲んでるの?」
「え、えええと、さ、さっき貰ったアイスティーを」
身なりからすると、平民の男性達だろう。しかし、こんな私に話しかけて来てくれるなんて。
フェデリカが感動していると
「ここの店、初めて?なんか緊張してる?」
「ケーキは好き?とってきてあげようか?」
「ここ座っていい?」
「あ、お前ずるいぞ」
「早いもの勝ちだろ」
「ねえ、君は誰に隣に座ってもらいたい?」
「へ!?ええ!?」
矢継ぎ早に質問されて、フェデリカは混乱していた。え?え?隣に座る?じゃあ、もうお付き合いの相手を決めなきゃいけなきの!?そんな会って間もないのに!?
フェデリカはパニックになっていた。
こんなに男性に囲まれた事はないし、話している内容に理解が追いつかない。
「むむむむ、無理だわ!」
フェデリカは真っ赤な顔を押さえた。
「えー。なに、真っ赤になっちゃってかわいい。ねえ、俺にしなよ。二人で楽しも」
最初にフェデリカに話しかけてきた黒髪の男がフェデリカに寄る。
「は!?お前ばっかずるいよ。ねえ、俺にしなよ」
「こいつら、下心しかないから。俺にしな」
言い寄って来る男達の言葉はフェデリカにさらなる混乱を招く。
「ねえ、ねえ。誰にするの?」「誰がいいの?」
ああ、早く選ばないと、せっかく声を掛けてくれたのに嫌な思いをしてしまうわ。でも、だからって誰を選べばいいの!?どうしましょう!どうしたらいいの!?
ああ、もう!!
「こ、この人!」
追い詰められたフェデリカが、震える指で適当に指し示したその先は、フェデリカの事を囲っていた男達ではなく、その先で給仕をしていた店員の青年だった。それは、茶色の髪に深緑の瞳の青年だった。
「……え?」
ゴールドブラウンの髪色に瞳が深緑の綺麗な青年だった。その青年は驚いたように私を見た。
「私、あの人とお付き合いします!」
「え?お付き合い?」
「はい。私とお付き合いしてくださいませんか!?」
「お付き合いって……」
困惑した顔の青年を前に、フェデリカは自分が何をしでかしたのかやっと気づいた。
わ、私何言ってるの!?こんな私からお付き合いを申し込まれたって迷惑に決まってるじゃない!!ああ、すぐに撤回しないと!!
フェデリカが自分の言動に焦っている間に、フェデリカを囲む男達が店員と店員の青年の睨み合いがあった事はフェデリカは気づくわけがなかった。
「あああの、先程は変な事を言って」
フェデリカが店員の青年にさっきの言動を撤回しようとしたがそれを店員の青年が遮った。
「いいですよ」
「へ!?」
「だから、お付き合いしましょう」
え?え?い、いいの?お付き合いいいの!?
「あ、ああありがとうございます!」
やった!やったわ!お父様、お母様、私、婚約者ゲットしましたわー!
「やったじゃん、ルカ。玉の輿に乗れるんじゃね?」
さっきフェデリカを案内してくれた店員に肩を組まれて茶化されていた。
玉の輿……。ああ、そうよね。私、公爵令嬢ですものね。こんなですけど、地位と財産だけはありますからどうか末永くよろしくお願い致しますわ!
「うるさいな。仕事しろよ」
ルカと言われた青年は同僚の男性をあしらうと、今度は私の周りを囲っていた男達を押しのけて、手を差し出した。
「もう、ここに用はないですよね?」
その差し出された手は、まるで舞踏会でダンスに誘われる時のような仕草で、フェデリカが誘われるようにその手を掴むと、ルカはフェデリカを立ち上がらせて、そのまま店の出入り口までエスコートして言った。
「もうここには、来ない方がいいです。ここは貴方のような人が来る場所ではありませんから」
「はい……」
フェデリカは夢見心地でルカを見つめながら、返事をした。すると、外に待機していた侍女のテリルが飛んでくる。
「お、お嬢様ー!!もう!もう!心配致しましたのよ!ここは、貴族が平民の男性と一時の遊びを楽しむ為の所なんですって!こんな所、早く行きましょ!」
テリルはフェデリカの肩を押して馬車が止まっている所へ連れて行こうとする。
未だ夢見心地のフェデリカは、後ろ髪惹かれるように後ろを振り返った。
「あ、あの私、フェデリカ・クレリッチと申します。こ、これからよろしくお願い致します!」
「あ、はい。俺はルカ……です」
「ルカ様ですね!それでは御機嫌よう」
最後にフェデリカは緊張した笑みを浮かべてカーテシーをすると、テリルと共に馬車へと乗り込んだ。
笑うの苦手なのかな。引きつってるけど、何かそれはそれで可愛いな。
「フェデリカか……、フェデリカ・クレリッチ……ん?クレリッチ!?」
ルカは大きく目を見開いた。
「クレリッチって、あの名門公爵家じゃんか!!」
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