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しおりを挟むマデリーナはすっかり討伐隊の騎士等とも打ち解けて毎夜皆でワイワイと魔術の鍛錬を積んだり、魔術について話し合ったり、時には友人同士がするような雑談をしたりと充実した時間を過ごす事が出来ていた。
「マデリーナ様は時間停止の術を使っても息一つ乱れませんね。さすが聖女様!持って生まれた魔力が全然違いますね」
実はマデリーナは魔獣を数秒停止するくらい全く苦ではなかった。この魔獣討伐で感じたのは他の術者に比べて自身の魔力は圧倒的に高いという事だ。
聖女じゃないにしてもこの強大な魔力を与えてくれた神様には感謝するわ。
とマデリーナは内心苦笑いしていた。
すると若い騎士が意気揚々と質問してきた。
「マデリーナ様は時間停止の術でどれくらい魔獣を停止できるんですか?」
どのくらい……
「試した事がないから分からないわ。でも今までの討伐中に魔術に関しては疲れを感じた事はないわね」
これは本当だ。討伐中に感じた疲れは魔術に関する疲労ではなく歩き疲れなどの肉体的な疲労が大部分であったからだ。それから前世の戦場よりは良いとはいえ、やはりこちらの世界に来てから豪華な食事と清潔な寝具で生活していたマデリーナにとって野営での生活も体力を削いでいた。
それでも、無事、討伐隊は魔獣討伐を終えて明日は王宮へ帰る事になっていた。そして今夜は最後の野営という事ですっかり仲良くなったスジャーナと遅くまで話しこんでいた。
「マデリーナ様は魔界の封印をした後は何かしたい事はありますか?」
「したい事?そうねぇ……。今はまだ考えられないわ」
だってその封印が出来ないんだもの……。
「そうですよね。大変なお役目ですものね。終わってからゆっくり考えるんですね」
「ええ、まあそんな所かしら。スジャーナは?何か考えているの?」
「ええ。実はまだ、皆には内緒ですけど私は幼馴染みと結婚する予定なんです」
スジャーナはフフッと嬉しそうに言った。
「まあ!そうなの?おめでとう!!」
「マデリーナ様は?結婚とか考えてないんですか?」
「ええ?そもそも私には相手がいないもの」
「そんな事言ってますけど、きっと魔界を封印した後に申し込みが山ほどきますよ。あ!でもやっぱり気持ちが1番大事ですよね。好みのタイプとか、今まで好きになった人はいないんですか?」
好きな人……
そう問われて、何故かルーベルトの方を見てしまっていた。
ルーベルトはすっかり団長に気に入られて向こうで話をしている。
「ああ、やっぱりルーベルトですか?実はもう付き合ってるとか?」
スジャーナはニヤリと笑う。
「ええ!?違うわよ!私達の間には何もないわ」
「そうですか?でもルーベルトはマデリーナ様の事すごく大切にしてますよ」
「それは私が聖女だからよ」
マデリーナは困ったように笑った。
「それだけじゃないと思うんだけどなぁ……」
とスジャーナは小さく呟いた。
夜も更けて各々休み始めたので、マデリーナも一人テントで身体を休めていた。
連日の魔獣討伐で身体は疲れているはずなのに目を閉じてもあまり上手くは眠れない。この数日間が今までとは違う充実した日々だった事や、これからまた聖女として鍛錬を積む事になる事を考えるとそろそろ聖女でない事をハッキリと皆に伝えなければと考えていた。
こうやって日々魔獣と戦ってくれている討伐隊の人達もいつか私が魔界を封印する事を願っている。
それなのに私にはそれが出来ない……。そもそも聖女ではないのにどうしてこの証はあるのだろあ?それに魔力だって他の人より桁違いに高いし。
もしかして、断ったと思ってたけど、やっぱり聖女として転生してたのかな。もしそうなら、皆の期待に応えられるのに……。
マデリーナの心はモヤモヤとした思いに包まれていた――
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