25 / 27
第25話 騎士隊と国王
しおりを挟むエリックが目覚めた事で元気を取り戻したカレンは、朝食をモリモリ食べるとヘイリーに元気よく言った。
「エリックに聖女の加護を授けて来るわよ!」
「フフッ。ええ、食事もたくさん食べられて、昨日とは比べ物にならないくらい顔色も良いですからね。エリック王子が目覚めた事が良薬になりましたね」
とヘイリーは優しく言う。
カレンは照れ臭く笑うと、エリックの部屋をノックして開けた。
「エリック王子、おはようございます!」
ちょうど、エリックも朝食が終わった所だったようだ。
「ああ、カレン、おはよう。朝から元気だな。どうした?」
「加護を授けに来たんです。まだ、全然、本調子じゃないでしょう?」
と言って、エリックの腕に触れる。
ジョアンナ王妃には、まだエリックが目覚めた事は黙っていた。元気なエリックの姿を見せて驚かせる作戦だ。
カレンが聖女の加護を授けていると、デヴォンがカレンを呼びに来た。
「カレン様、ジョアンナ王妃がお呼びです。見せたいものがあるとかで……、どうしますか?」
「良いわよ。行くわ」
カレンは立ち上がると、エリックを強い瞳で見た。
エリックもカレンを見ると力強く頷いてくれたので、カレンは一瞬微笑むとジョアンナ王妃の元へ向かった。
ジョアンナ王妃はカレンを外へと呼び出していた。そこには整列する大勢の騎士がいた。
「見てください聖女様。この騎士隊を。ヴァーンと結婚すれば、この王国騎士隊も一緒に魔王討伐に同行するのです。これなら次は必ずや魔王を倒せますわ!さあ、エリックと離縁すると言いなさい!」
カレンは騎士隊を一瞥した後、ジョアンナ王妃をしっかりと見据えた。
「私はエリックとは離縁しません。魔王討伐は彼と最後までやり遂げます」
「まだ、そんな事を言っているの!?エリックはまだ目覚めてもいないのに、そんな事が出来るわけないでしょう!!」
すると、カレンの後ろからエリックが現れた。
「なんて事!?目を覚ましたの!?」
「ええ。昨日俺の枕元で騒いでくれたお陰で、起こされてしまいました」
とエリックは得意気な顔で笑った。
ジョアンナは悔しそうに唇を歪ませると言った。
「しかし聖女様!エリックと行くというのなら騎士隊は一緒には参りませんよ?それでもいいんですか?」
「ええ。構わないわ」
カレンもエリックの真似をして得意気な顔で笑ってみる。
するとジョアンナは歯をギリギリとさせて、今度はエリックに言った。
「エリック!あなたはそれで、いいの!?また、聖女を危険に晒す事になるし、今度こそ、死ぬかもしれないのよ!?それでも離縁しないというの!?」
「ジョアンナ王妃、俺はカレンと約束したんだ。必ず魔王を倒すと。だから、彼女と離縁するつもりはない」
ジョアンナはその答えにフンッと鼻を鳴らす。
「あなた達だけで倒せるわけないでしょう。元に昨日まで瀕死の状態だったじゃない。まあ、いいわ。せっかく連れてきたけれど……。さあ、帰るわよ」
とジョアンナは騎士隊に向けて言った。
しかし、騎士隊は誰一人動かず、その場に佇んでいる。
「ちょっと、何してるのよ!?帰るって言ってるでしょ!?」
すると、騎士隊の一人がハッキリとした声で言った。
「俺は、帰りません!このままエリック王子に同行します!」
「な、なんですって!?」
すると、もう一人の騎士も
「俺も帰りません!」
と言い出した。
「お前達!そんな事言っていいと思ってるの!?家族がどうなってもいいの!?家は爵位を剥奪されてもいいの!?」
ジョアンナが詰め寄ると騎士は毅然とした態度で言った。
「魔獣や魔王が暴れまわっていて、もういつ家族が襲われるかも分かりませんから!」
するともう一人の騎士も
「このままじゃ、先に魔王に国が滅ぼされます!国がなくなれば爵位も何もありませんから!」
と言った。
そして、そのまま騎士隊全員が一斉に声を上げる。
『我らは皆!エリック王子と聖女カレン様と共に!魔王討伐に同行します!!』
それに怒りを顕にしたのは、ジョアンナは怒鳴った。
「エリックに同行するですって!?そんな事を言う者は全員クビよ!!王国騎士隊でもなんでも無いわ!!」
すると、今まで静観していた国王が重い口を開いた。
「ジョアンナ、魔王討伐は希望制。これはお前とシーリー公爵の提案で、王国会議で決まった事だろう!!彼らが自分の意志でエリックに同行すると決めたのだ。それを覆す事は王妃であろうと断じて許さん!!」
国王の迫力にジョアンナは口をワナワナさせて何も言う事が出来なくなった。
「エリック……」「ああ……」
エリックとカレンは騎士隊や国王の言葉に感動していた。
「共に魔王を倒そう!!」
エリックの声に『はい!!』という騎士隊の大きな声が響いたのだった。
10
お気に入りに追加
490
あなたにおすすめの小説
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
お飾りの私と怖そうな隣国の王子様
mahiro
恋愛
お飾りの婚約者だった。
だって、私とあの人が出会う前からあの人には好きな人がいた。
その人は隣国の王女様で、昔から二人はお互いを思い合っているように見えた。
「エディス、今すぐ婚約を破棄してくれ」
そう言ってきた王子様は真剣そのもので、拒否は許さないと目がそう訴えていた。
いつかこの日が来るとは思っていた。
思い合っている二人が両思いになる日が来ればいつの日か、と。
思いが叶った彼に祝いの言葉と、破棄を受け入れるような発言をしたけれど、もう私には用はないと彼は一切私を見ることなどなく、部屋を出て行ってしまった。
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~
バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。
しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。
ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。
これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。
本編74話
番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる