12 / 27
第12話 嬉しいの?
しおりを挟む
さっきのヘイリーの話で、カレンはエリックになんと声をかけたらいいのか分からなくなっていた。
宿の食堂に付くとデヴォンと地図を広げて話をするエリックがいた。
私に気付くと「カレン、おはよう」と優しく微笑み、「こちらに朝食を用意してあるよ」とエリックの座るテーブルの横のテーブルには暖かな朝食が並んでいた。
カレンはヘイリーに促されて、その席に座ると横のテーブルに座るエリックを盗み見た。
しかし、エリックはいつものようにカレンに何か話し掛けてくる事もなく、デヴォンと話を続ける。カレンは違和感を覚えてハッとした。
そうか。昨日の事で落ち込んでるんだっけ。
カレンは大人しく朝食を食べると、皆が出発の準備を始めた。部屋で2人きりになっても、エリックはカレンに対して優しくはあるのだが、それは何処かよそよそしく、それは皆に見せる清廉な王子の時のようだった。
宿を出るとエリックが馬を引いてきた。昨日の今日で一緒に馬に乗るのはなんだか気恥ずかしくて、少し構えてしまうが、一緒に馬に乗ってしまえば、このよそよそしい感じも元通りになるだろうと思っていた。
「カレン、今日はヘイリーの馬に乗るといいよ」
「え?」
確かに昨日の今日で一緒に馬に乗るなんて、気恥ずかしくてどうしようと思っていたけど、どうして避けるような事するの?
「私……、エリックの馬がいいわ」
カレンの言葉にエリックは驚いて目を見開いた。
「……俺の事、嫌なんじゃないのか?」
そして、エリックは少し不安そうな顔をした。
「……あなたの事を嫌いなわけじゃないわ。昨日の事はちゃんと謝ってくれたし。ただ、私も泣いちゃったから、ちょっと気恥ずかしいだけよ」
カレンは恥ずかしくて、ゴニョゴニョした感じになってしまったが、どうやら、エリックにはちゃんと聞こえたようで、エリックは小さく笑みを浮かべた。
あ、前にデヴォンが魔王討伐に同行すると言った時に見た顔だ。
「ハハッ、そうか……」
そして、エリックは照れくさそうに笑った。
な、何その反応!嬉しいの!?私に嫌われてないって分かって嬉しいって事!?
エリックの思いもよらなかった反応に今度はカレンがどぎまぎしてしまう。
「ほら、行こう」
馬を支えてカレンに手を伸ばしたエリックの手を、カレンはギュッと握りしめて馬に乗ったのだった。
宿の食堂に付くとデヴォンと地図を広げて話をするエリックがいた。
私に気付くと「カレン、おはよう」と優しく微笑み、「こちらに朝食を用意してあるよ」とエリックの座るテーブルの横のテーブルには暖かな朝食が並んでいた。
カレンはヘイリーに促されて、その席に座ると横のテーブルに座るエリックを盗み見た。
しかし、エリックはいつものようにカレンに何か話し掛けてくる事もなく、デヴォンと話を続ける。カレンは違和感を覚えてハッとした。
そうか。昨日の事で落ち込んでるんだっけ。
カレンは大人しく朝食を食べると、皆が出発の準備を始めた。部屋で2人きりになっても、エリックはカレンに対して優しくはあるのだが、それは何処かよそよそしく、それは皆に見せる清廉な王子の時のようだった。
宿を出るとエリックが馬を引いてきた。昨日の今日で一緒に馬に乗るのはなんだか気恥ずかしくて、少し構えてしまうが、一緒に馬に乗ってしまえば、このよそよそしい感じも元通りになるだろうと思っていた。
「カレン、今日はヘイリーの馬に乗るといいよ」
「え?」
確かに昨日の今日で一緒に馬に乗るなんて、気恥ずかしくてどうしようと思っていたけど、どうして避けるような事するの?
「私……、エリックの馬がいいわ」
カレンの言葉にエリックは驚いて目を見開いた。
「……俺の事、嫌なんじゃないのか?」
そして、エリックは少し不安そうな顔をした。
「……あなたの事を嫌いなわけじゃないわ。昨日の事はちゃんと謝ってくれたし。ただ、私も泣いちゃったから、ちょっと気恥ずかしいだけよ」
カレンは恥ずかしくて、ゴニョゴニョした感じになってしまったが、どうやら、エリックにはちゃんと聞こえたようで、エリックは小さく笑みを浮かべた。
あ、前にデヴォンが魔王討伐に同行すると言った時に見た顔だ。
「ハハッ、そうか……」
そして、エリックは照れくさそうに笑った。
な、何その反応!嬉しいの!?私に嫌われてないって分かって嬉しいって事!?
エリックの思いもよらなかった反応に今度はカレンがどぎまぎしてしまう。
「ほら、行こう」
馬を支えてカレンに手を伸ばしたエリックの手を、カレンはギュッと握りしめて馬に乗ったのだった。
10
お気に入りに追加
490
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~
バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。
しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。
ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。
これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。
本編74話
番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる