悪を狩る獣たち(1次小説版)

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1章:仕置人たち

第2話 とある不良少年(1)

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 あれ……俺……?
 何してたんだ?

 確か、転校して、初日に話した連中と早速気が合って、放課後ノリでそのまま一緒にカラオケに行って……
 盛り上がってきたところで、便所行きたくなって、部屋を出て……

 そこから、どうしたんだ?

 というか、何で俺は外で寝てるんだ?

 そこは、コンクリの床の、明らかに外だった。
 風が吹いていたから。

 カラオケは?
 あいつらは?

「……目が覚めたらしいな」

 声がした。
 男の声だ。

 年は多分、高校1年の俺とあまり変わらない。

 俺はそっちを見た。

 そして、ここがどこかを理解した。

 ここは、どっかのビルの屋上だった。
 飛び降り防止か、外周がフェンスで仕切られており、あるのは昇降口のみ。
 そんな、飾り気の無いつまらない屋上。

 その昇降口のドアの前に、そいつは居た。

 背丈は多分180センチあるか無いか。
 体格は悪くない。
 目立ってガタイがいいわけでもないけれど、痩せているわけでもない。

 ちょっと、勝てる確信が持てず、喧嘩を売るべきか迷うタイプ。
 服装は学ランだった。どこの高校かはちょっと分からない。

 顔は見えなかった。

 黒いヘルメットめいた、目がゴーグルみたいなもんで完全に隠れる被り物をかぶっていたから。
 漫画に出てきそうな感じのやつだ。目が隠れて、口元だけ見えるやつ。

 ……思い出した!

 こいつ、俺が小便して手を洗ってる時に、いきなり背後に現れたんだ!
 そして、そこからここまでの記憶……

 ……無い。

 こいつに攫さらわれた?

「何だよお前! お前が俺を攫ったのか!?」

 そこに思い当たったとき、俺は反射的にそう言っていた。
 正直、ビビってた。

 だって、異常だし。
 いきなり便所に現れて、そのまま攫ってどっかのビルに俺を連れてくるなんて。

「……ああ」

 ……認めやがった!

 こいつ、絶対まともな奴じゃねぇ!

 俺をどうするつもりだ……!!?

「な、何の用だよ……!?」

 言いながら、俺は尻のポケットを探っていた。
 俺のスマホ……

 警察に電話して、回線繋ぎっぱなしにして、助けてもらう……

 それしか、ここを切り抜ける方法を思いつかなかったから。

 でも……

「探しているのは、これか?」

 目の前のヘルメット男はそう言って、見覚えのあるスマホケースのスマホを見せてきた。
 あのシリコンケース……俺のだ!!

「返せっ!」

 絶対に今必要なものだったから、俺は反射的に飛び出して、そいつに掴みかかっていた。
 でも、ヘルメット男は全く焦った様子もなく、軽く体を動かして、いなすように俺を躱かわした。

 躱された瞬間、俺はぶっ倒れた。
 どうも、躱しざまに俺の足をヘルメット男が払ったらしい。

 コンクリに肩から落ちて、痛みに呻く。

「何の用か? と言ったな。教えてやるよ」

 そんな俺の耳元に、ヘルメット男はしゃがみ込んで、こう言ってきた。
 聞いた瞬間、俺には理解できなかった。

「……ちょっと、このビルから飛び降りてもらおうと思って。それさえ済めば後は自由にしていい」

 ……は?

 何で?

 俺はヘルメットの言ってる内容が理解できなかった。

「……お客さんからの指示なんだ。ウチの子と私が味わった苦痛と絶望を、是非あの親子にも味わってもらいたい、ってな」

 すごく淡々とヘルメットは続けた。
 そこで、俺は思い当たってしまった。

 ……あれか?
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