姉弟が夫婦になるまで

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第15話 姉弟の卒業式

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 もうすぐ卒業式を控えている。
 大学受験ももうすぐだ。
 勉強は一応やっている。
 おそらく合格できると踏んでいるけど。

 ……私はひとつ、計画していることがあった。
 卒業式に向けて。

 分かる範囲で、調べた。
 所謂、危険日ってものを。

 危険日。
 排卵日ともいう。

 女が妊娠しやすい日。

 その日に避妊無しでセックスすれば、子供が出来やすい。
 当たり前のことだけど。

 私は……卒業式直前で、妊娠しようと考えていた。
 明の子供を。

 どうしても産みたかった。
 だって、結婚できないんだもの。
 だったら、愛の結晶を作りたい。
 姉弟の結晶を。

 卒業式直前に妊娠すれば、そのまま卒業できるから、妊娠という不純異性交遊による退学処分は免れる。
 大学なら、子供を産んだせいで除籍処分になったりはしないはずだ。

 それなら、ギリギリだけど、子供を育てられるはず。

 欲しい。
 明の赤ちゃん。
 産みたい。

 そして。
 それは、父親である明の望みでもあって欲しい。
 私に子供を産んでくれと言ってもらいたい。

 そのために……

 今日、聞くつもりだった。

 深夜に、私は明の部屋を訪れた……



 部屋にそっと侵入すると、明は寝息を立てていた。
 眠りに落ちてからどのくらいだろうか?

 ちょっと申し訳ないけど、起きて欲しい。

 電気を点けずに夜目だけで、明を揺する。

「明……明……ちょっと起きて」

「……ん? どうしたの? 姉ちゃん……?」

 明がベットの中で目を擦り、目覚めてくれた。

 眠そう……
 でも、今日でないと駄目だから……

 私は、意を決した。
 そして、言う。

「明」

「?」

 何を言われるのか。
 予想していない顔。

 ……どんな顔するかな。
 こんなことを言ったら……

 私は、口を開いた。意を決して。

「姉ちゃんね、今日あたりから、危険日なの」

「……危険日。妊娠しやすい日ってこと?」

 明はポカンとした顔で聞いている。

「そう……だから……」

 私は、そっと明に顔を近づける。
 そして、言った。

「妊娠させて欲しいの」

 その瞬間。
 明が完全に覚醒したのが分かった。
 それぐらいの衝撃だったんだろう。

「……妊娠……俺の子供を、姉ちゃんが妊娠してくれるの?」

「そう……姉ちゃんね、明の子供を産みたいから……」

 私の想いを彼に伝える。
 彼はどう答えるだろうか?

 子供は欲しくない、父親にはなりたくない。
 そんなことを言うのだろうか?

 ……言わないで欲しかった。
 愛してるから。そんなこと、言われたくない。

 でも……

「……俺、姉ちゃんを妊娠させたい。ずっとそう思ってた」

 ……その言葉。
 待ってたの。

 嬉しい。

 私、明の子供を産んでいいんだ!

 喜び過ぎて、泣きそうになった。

「……嬉しい。明……いいえ、明さん……」

 私は言い直す。
 これからは、明のことは明とは呼べない。

 明さんだ。

 だって、夫同然の人なんだから。

「……姉ちゃん?」

 明さんは混乱しているようだ。
 私の雰囲気が変わったから。

 指摘してあげないと。

「もう姉ちゃん呼びはやめて……子供を作るんだから。私たちは夫婦なのよ」

 だから……

「夏子。名前で呼びなさい。夫は妻を名前で呼ぶものよ」

 もう、私たちは姉弟じゃない。
 子供を作るんだから。
 夫婦なの。

 民法も、文化も、神話も私たちの関係を認めなくても。
 私たちは夫婦。誰にも祝福されないけど、真剣に愛し合う夫婦なんだ。

「夏子……」

 明さんが私の名前を呼び捨てたとき。
 明さんの中でも、何かが変わってしまったらしい。
 目の色で、分かった。

 私のことが、存在や設定まで全て彼の中で書き換わってしまったんだ、ということが。

 ……少し、寂しかった。
 涙が出そうな気持になった。

 だけど……

 今日は、感傷に浸るために来たんじゃない。
 私は、明さんの妻として、彼の子供を身籠るためにやってきたんだ。

 私は、着ているパジャマを脱ぎ捨てていった。
 彼の見ている前で、裸になっていく。

 そして一糸纏わぬ姿になる。
 彼に抱かれるために。

「明さん……私を妊娠させて下さい」

 私の言葉。
 それに応えて、彼が動いてくれた。
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