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24. 白い血
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どうしよう……
私は迷ったが、エドワードを助けようとしたところで足手まといにしかならないし、王女なら助けられるかもしれないと思い至ってピーターたちが歩いて行った方へ駆け出した。
ピーターと民兵は焦る様子もなくゆったりと進んでいたため、運動神経のない私でも追いついた。
「ダイアナ王女をどうするの?」しかし息は絶え絶えだ。
私の方へ振り向いたピーターは、目を見開き、驚いた顔をして見せた。
「リサは森で待っててくれよ。竜の褒美なんだから動いちゃだめだろ?」
大きくため息を付き、「木に縛り付けなきゃいけないのか?」やれやれといった感じで肩をすくませる。
「仕方がない。誰か、もう一度リサを──」
ピーターが言いかけたとき、異様な風が私たちの方に吹き込んだ。
その場にいた全員が、何事かと怯えたように身をすくませる。
あっ!
身体が浮き上がる。何かに押さえつけられたかのように身体が締め付けられ、いきなり何メートルも浮かび上がった。
なになになに? 怖い!
「梨沙!」
ポムの声だ。もしかしてポムが私を持ち上げたの?
何かに掴まれているような感覚だけど透明で見えないから、姿を消すことのできる竜──つまりポムが掴んでいるのだろうかと考えた。
「ポムなの?」
「梨沙、逃げろ!」
えっ?
右へ左へと身体が振られ、ジェットコースターかフリーフォールかと思うかのように上下にも揺さぶられる。
……目が回る……気持ち悪い……
痛い!
見えない何かが顔をかすめる。頬が熱くなり、鋭い痛みが後からやってきた。
今度は足だ。次は腕も。
何かがかすめて熱くなった後、じわじわと痛みが迫りくる。
「梨沙に当たってしまう!」
ポムの悲痛とも言える声が頭の中に轟いた。
ポムが私を掴み持っているわけではない? ということは、ウェーデンの竜?
想像するだけでめちゃくちゃ怖いんだけど!
どれくらい失神していたのか、気づくと空が赤く染まっていた。
ジェットコースターは終わったようで、身体は微震しているが平行状態で浮いている。相変わらず私が浮いているだけで、私の身体を掴んでいるであろう竜の姿は見えない。
「ポム?」
返事がない。
「ポム? いるの?」
「怪我はありませんか?」
ポムではなくエドワードの声が聞こえた。
見下ろすと、7メートルほど下の地面にエドワードの姿があった。
身体から血を流し、左腕も力なく下げて息を切らせている。
「すぐに助けます」
エドワードは休む間もなく、私の足元に向かって剣を振りかざし、斬りかかる。
しかし、何かに当たったような反動を受けたあと、何メートルも後方に弾き飛ばされた。
えーっと、もしかしてエドワードがウェーデンの竜と戦っているの?
「ちょっと! 竜!」
私を掴んでいる竜の手であろう宙に向かって拳で叩いてみた。ぶよぶよとした感触はあるから当たっているはずだ。
「あんたのことだよ! ねえ! なんでエドワードと戦っているの? ポムは?」
蚊みたいなものだろうけど、気がつくようにと何度も叩く。
「ねえ! 竜!」
「なんだ?」
頭の中に声が轟いた。ポムよりも少し高いが、似たような轟音だ。
「あなた、ウェーデンに住んでいる竜でしょ?」
「……そうだ」
「私を捕まえてどうするの? ポムは? なぜエドワードと戦っているの?」
竜は答えない。
えーっと、一度に質問をしすぎたのかな?
「仲間を叱りつけているだけだ」
おっと、答えてくれた。
「ポムのことね?」
「ポム?」
「私が名付けたの! 私をどうする気なの?」
竜はまた沈黙した。
「なぜエドワードと戦ってるの?」
殴りつけてやる! またポコポコと竜の手を叩く。
「……そのポムと名付けた竜が、二度と私に逆らわないようにお前を排除する」
えっ? 排除?
「ポムはどうなったの?」
「倒れた」
「怪我をしたの?」
「……竜を傷つけることは容易いことではない。互いの魔力が反発して傷を付けられないからだ。しかし圧倒するほどの力があれば意識を失わせることはできる」
ふむ。つまり切り傷みたいにはならないけど、鈍器みたいにぶん殴ることはできるみたいな?
身体がまたジェットコースターのようになった。もしかしてエドワード? 足元を見ると、その通りエドワードが再び斬り掛かっていた。
「エドワードと戦う必要はないんじゃないの?」
竜は答えない。身体が動き続けていて、エドワードがどうなっているのか目で追えない。
「ポムを制圧するために、なぜ私を排除するの?」
そのとき、大きく身体が旋回し、大きな音がしたあとにまた平行に戻った。
「……お前に惑わされ、ポムは私に逆らった」
え?
「惑わしてなんかない! それにポムが逆らったなんて、そんなことあり得ない!」
「勝手にお前をこの世界に呼んだばかりか、私の貢物を勝手に渡していた」
貢物って……もしかしてお金のこと? げ! やっぱバレてんじゃん!
「それは……逆らうためにやったんじゃなくて……私のために……」
「断りもなく勝手なことをしていた。それだけで反逆の理由としては十分だ」
それだけで? こわ! こりゃポムも恐れるわけだ。
「エドワードとはなんで……」
言い終わらないうちにまた身体が揺さぶられた。気分が悪すぎる……吐いてしまいそう
そんな場合じゃない! エドワードが死んじゃうかもしれないのに!
「エドワードと戦う必要はないでしょう? もうやめてよ!」
また大きな音がして振動がとまった。エドワードが弾き飛ばされたのだろう。
「お前を排除する邪魔をしている。それに、あいつは脅威だ。あいつも排除しなければならない」
え? 脅威?
そうは言いながらも、本気で殺すつもりはないんじゃないかな。だって、私のことを殺したいなら握り潰せば済むし、エドワードも踏みつけちゃえば終わるじゃん?
それともこの竜……しないのではなく、できないの?
「ねえ、ケロ」
何も答えない。
「あなたの名前だよ。ケロ。今私が名付けた」
「……ケロ?」
昔飼っていたハムスターのポムの仲間だ。三匹飼っていた。ポムとケロとマル。もう一匹の竜の名前も決まりだね。
「私のことも、エドワードのことも殺すつもりはないんでしょう? もうやめようよ。私、吐きそうなんだけど、この手の中で吐いちゃってもいいの? 気持ち悪いよきっと」
ケロは答えない。名前が気に入らないのかな?
「あのさ、排除ってどうするつもりなの?」
私の問いに、ケロはしばし間を空けてから答えた。
「──命をいただく」
えっ?
いきなり締め付けが強くなった。これ以上されたら圧死する! そう思うくらいに身体中が締め付けられ、痛みで涙が出てきた。
迷っていただけで、やっぱり殺すつもりだったのね……
痛い! 痛い! あぁ……死ぬ……潰される……病死も嫌だったけど、こんな死に方も嫌だ……
目の中がチカチカしてきた。なんだか覚えがある感覚……ああ……
あっ! 再びジェットコースターだ。それと同時に締め付ける力が弱くなった。エドワードの攻撃を受けてそちらに意識が向いたようだ。
ふう。息ができる。死ぬかと思った……
おっと? なんだかガクンと身体が下がった。ジェットコースターではなくフリーフォールの方だ。
私は足元を見た。
すると、さっきよりも地面に近づいているようだった。あれ? 今まで透明だった竜の身体が薄っすらと見えてくる。それにざらざらとした感触だったのに、いきなりベタベタとしたものが手に触れた。
見てみると、手に白い液体が付いている。なにこれ?
振り返ってみたら、私を掴んでいるケロの腕から白い液体が出ていて、それがつたって私のいる手元にまできている。これは──もしかしてケロの血?
今度はジェットコースターだ。エドワードの無事を確認したいところなんだけど、ケロの身体が見え始めているから、地面の様子がわかりづらくなっている。
あっ! ケロの手が開いた。
──落ちる! 地面までは5メートルはある。落ちたら死ぬか大怪我だ!
痛い! 落ちた!
死ぬほど痛い! いや、死んだんだ!
……と思ったら違った。背中が酷く痛いが、生きてはいるようだ。またケロに掴まれたようで身体が揺れている。それにしても背中が痛い。じんじんとして焼け付くようだ。
気になって後ろを振り返ったら、エドワードの姿がはっきりと見えたばかりか目があった。
フードはマントごと断ち切れ、エドワードの白い顔に赤い血が滴っている。
「エドワード! 逃げて!」私は叫んだ。
「しばしお待ち下さい」エドワードが返す。
直後にまた締め付けの力が強くなった。いいいいたいいいい……
背中も痛いけどそれどころじゃないほど全身が痛くなってきた……もう無理だって。私は死ぬ……
エドワード……あなただけでも助かって……さようなら……
私は最後に勇姿を見ようとエドワードに目を向けた。
そのとき、エドワードは飛び上がり、私の目の前で剣を振りかざした。
ケロの腕に向かって剣を振り下ろそうとしている。
剣を振り下ろす?
もしかしてさっきの血は、エドワードによってつけられた傷?
まさか! だって、ケロは言っていたよ?
『竜を傷つけることは容易いことではない。互いの魔力が反発して傷を付けられないからだ』って。
魔力が反発?
そういえばエドワードは魔法が──
わっ!
またフリーフォールだ。いきなり大きく振動したあと、私の身体は落ちていく。
探すと、エドワードも落ちている。剣は白い液体でべっとりだ。
あっ……
エドワードが私に手を伸ばしたので、その手を掴んだ。
私を引き寄せて、抱きかかえてくれる。
ギリギリセーフだった。
地面すれすれで私はエドワードに抱きかかえられ、エドワードは無事に着地してくれた。
大きな音と共に砂埃のようなものが舞う。
横目で見ると、ケロの手が地面に落ちたところだった。
私はエドワードを見上げた。
「エドワード……」
エドワードは私に微笑を返した。
「お待たせいたしました」
私は迷ったが、エドワードを助けようとしたところで足手まといにしかならないし、王女なら助けられるかもしれないと思い至ってピーターたちが歩いて行った方へ駆け出した。
ピーターと民兵は焦る様子もなくゆったりと進んでいたため、運動神経のない私でも追いついた。
「ダイアナ王女をどうするの?」しかし息は絶え絶えだ。
私の方へ振り向いたピーターは、目を見開き、驚いた顔をして見せた。
「リサは森で待っててくれよ。竜の褒美なんだから動いちゃだめだろ?」
大きくため息を付き、「木に縛り付けなきゃいけないのか?」やれやれといった感じで肩をすくませる。
「仕方がない。誰か、もう一度リサを──」
ピーターが言いかけたとき、異様な風が私たちの方に吹き込んだ。
その場にいた全員が、何事かと怯えたように身をすくませる。
あっ!
身体が浮き上がる。何かに押さえつけられたかのように身体が締め付けられ、いきなり何メートルも浮かび上がった。
なになになに? 怖い!
「梨沙!」
ポムの声だ。もしかしてポムが私を持ち上げたの?
何かに掴まれているような感覚だけど透明で見えないから、姿を消すことのできる竜──つまりポムが掴んでいるのだろうかと考えた。
「ポムなの?」
「梨沙、逃げろ!」
えっ?
右へ左へと身体が振られ、ジェットコースターかフリーフォールかと思うかのように上下にも揺さぶられる。
……目が回る……気持ち悪い……
痛い!
見えない何かが顔をかすめる。頬が熱くなり、鋭い痛みが後からやってきた。
今度は足だ。次は腕も。
何かがかすめて熱くなった後、じわじわと痛みが迫りくる。
「梨沙に当たってしまう!」
ポムの悲痛とも言える声が頭の中に轟いた。
ポムが私を掴み持っているわけではない? ということは、ウェーデンの竜?
想像するだけでめちゃくちゃ怖いんだけど!
どれくらい失神していたのか、気づくと空が赤く染まっていた。
ジェットコースターは終わったようで、身体は微震しているが平行状態で浮いている。相変わらず私が浮いているだけで、私の身体を掴んでいるであろう竜の姿は見えない。
「ポム?」
返事がない。
「ポム? いるの?」
「怪我はありませんか?」
ポムではなくエドワードの声が聞こえた。
見下ろすと、7メートルほど下の地面にエドワードの姿があった。
身体から血を流し、左腕も力なく下げて息を切らせている。
「すぐに助けます」
エドワードは休む間もなく、私の足元に向かって剣を振りかざし、斬りかかる。
しかし、何かに当たったような反動を受けたあと、何メートルも後方に弾き飛ばされた。
えーっと、もしかしてエドワードがウェーデンの竜と戦っているの?
「ちょっと! 竜!」
私を掴んでいる竜の手であろう宙に向かって拳で叩いてみた。ぶよぶよとした感触はあるから当たっているはずだ。
「あんたのことだよ! ねえ! なんでエドワードと戦っているの? ポムは?」
蚊みたいなものだろうけど、気がつくようにと何度も叩く。
「ねえ! 竜!」
「なんだ?」
頭の中に声が轟いた。ポムよりも少し高いが、似たような轟音だ。
「あなた、ウェーデンに住んでいる竜でしょ?」
「……そうだ」
「私を捕まえてどうするの? ポムは? なぜエドワードと戦っているの?」
竜は答えない。
えーっと、一度に質問をしすぎたのかな?
「仲間を叱りつけているだけだ」
おっと、答えてくれた。
「ポムのことね?」
「ポム?」
「私が名付けたの! 私をどうする気なの?」
竜はまた沈黙した。
「なぜエドワードと戦ってるの?」
殴りつけてやる! またポコポコと竜の手を叩く。
「……そのポムと名付けた竜が、二度と私に逆らわないようにお前を排除する」
えっ? 排除?
「ポムはどうなったの?」
「倒れた」
「怪我をしたの?」
「……竜を傷つけることは容易いことではない。互いの魔力が反発して傷を付けられないからだ。しかし圧倒するほどの力があれば意識を失わせることはできる」
ふむ。つまり切り傷みたいにはならないけど、鈍器みたいにぶん殴ることはできるみたいな?
身体がまたジェットコースターのようになった。もしかしてエドワード? 足元を見ると、その通りエドワードが再び斬り掛かっていた。
「エドワードと戦う必要はないんじゃないの?」
竜は答えない。身体が動き続けていて、エドワードがどうなっているのか目で追えない。
「ポムを制圧するために、なぜ私を排除するの?」
そのとき、大きく身体が旋回し、大きな音がしたあとにまた平行に戻った。
「……お前に惑わされ、ポムは私に逆らった」
え?
「惑わしてなんかない! それにポムが逆らったなんて、そんなことあり得ない!」
「勝手にお前をこの世界に呼んだばかりか、私の貢物を勝手に渡していた」
貢物って……もしかしてお金のこと? げ! やっぱバレてんじゃん!
「それは……逆らうためにやったんじゃなくて……私のために……」
「断りもなく勝手なことをしていた。それだけで反逆の理由としては十分だ」
それだけで? こわ! こりゃポムも恐れるわけだ。
「エドワードとはなんで……」
言い終わらないうちにまた身体が揺さぶられた。気分が悪すぎる……吐いてしまいそう
そんな場合じゃない! エドワードが死んじゃうかもしれないのに!
「エドワードと戦う必要はないでしょう? もうやめてよ!」
また大きな音がして振動がとまった。エドワードが弾き飛ばされたのだろう。
「お前を排除する邪魔をしている。それに、あいつは脅威だ。あいつも排除しなければならない」
え? 脅威?
そうは言いながらも、本気で殺すつもりはないんじゃないかな。だって、私のことを殺したいなら握り潰せば済むし、エドワードも踏みつけちゃえば終わるじゃん?
それともこの竜……しないのではなく、できないの?
「ねえ、ケロ」
何も答えない。
「あなたの名前だよ。ケロ。今私が名付けた」
「……ケロ?」
昔飼っていたハムスターのポムの仲間だ。三匹飼っていた。ポムとケロとマル。もう一匹の竜の名前も決まりだね。
「私のことも、エドワードのことも殺すつもりはないんでしょう? もうやめようよ。私、吐きそうなんだけど、この手の中で吐いちゃってもいいの? 気持ち悪いよきっと」
ケロは答えない。名前が気に入らないのかな?
「あのさ、排除ってどうするつもりなの?」
私の問いに、ケロはしばし間を空けてから答えた。
「──命をいただく」
えっ?
いきなり締め付けが強くなった。これ以上されたら圧死する! そう思うくらいに身体中が締め付けられ、痛みで涙が出てきた。
迷っていただけで、やっぱり殺すつもりだったのね……
痛い! 痛い! あぁ……死ぬ……潰される……病死も嫌だったけど、こんな死に方も嫌だ……
目の中がチカチカしてきた。なんだか覚えがある感覚……ああ……
あっ! 再びジェットコースターだ。それと同時に締め付ける力が弱くなった。エドワードの攻撃を受けてそちらに意識が向いたようだ。
ふう。息ができる。死ぬかと思った……
おっと? なんだかガクンと身体が下がった。ジェットコースターではなくフリーフォールの方だ。
私は足元を見た。
すると、さっきよりも地面に近づいているようだった。あれ? 今まで透明だった竜の身体が薄っすらと見えてくる。それにざらざらとした感触だったのに、いきなりベタベタとしたものが手に触れた。
見てみると、手に白い液体が付いている。なにこれ?
振り返ってみたら、私を掴んでいるケロの腕から白い液体が出ていて、それがつたって私のいる手元にまできている。これは──もしかしてケロの血?
今度はジェットコースターだ。エドワードの無事を確認したいところなんだけど、ケロの身体が見え始めているから、地面の様子がわかりづらくなっている。
あっ! ケロの手が開いた。
──落ちる! 地面までは5メートルはある。落ちたら死ぬか大怪我だ!
痛い! 落ちた!
死ぬほど痛い! いや、死んだんだ!
……と思ったら違った。背中が酷く痛いが、生きてはいるようだ。またケロに掴まれたようで身体が揺れている。それにしても背中が痛い。じんじんとして焼け付くようだ。
気になって後ろを振り返ったら、エドワードの姿がはっきりと見えたばかりか目があった。
フードはマントごと断ち切れ、エドワードの白い顔に赤い血が滴っている。
「エドワード! 逃げて!」私は叫んだ。
「しばしお待ち下さい」エドワードが返す。
直後にまた締め付けの力が強くなった。いいいいたいいいい……
背中も痛いけどそれどころじゃないほど全身が痛くなってきた……もう無理だって。私は死ぬ……
エドワード……あなただけでも助かって……さようなら……
私は最後に勇姿を見ようとエドワードに目を向けた。
そのとき、エドワードは飛び上がり、私の目の前で剣を振りかざした。
ケロの腕に向かって剣を振り下ろそうとしている。
剣を振り下ろす?
もしかしてさっきの血は、エドワードによってつけられた傷?
まさか! だって、ケロは言っていたよ?
『竜を傷つけることは容易いことではない。互いの魔力が反発して傷を付けられないからだ』って。
魔力が反発?
そういえばエドワードは魔法が──
わっ!
またフリーフォールだ。いきなり大きく振動したあと、私の身体は落ちていく。
探すと、エドワードも落ちている。剣は白い液体でべっとりだ。
あっ……
エドワードが私に手を伸ばしたので、その手を掴んだ。
私を引き寄せて、抱きかかえてくれる。
ギリギリセーフだった。
地面すれすれで私はエドワードに抱きかかえられ、エドワードは無事に着地してくれた。
大きな音と共に砂埃のようなものが舞う。
横目で見ると、ケロの手が地面に落ちたところだった。
私はエドワードを見上げた。
「エドワード……」
エドワードは私に微笑を返した。
「お待たせいたしました」
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翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
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連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
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