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楽園入獄
集合
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さて、いよいよやることもない。ただ閉じ込められるだけってわけがないだろう。待っていれば必ず何かしらの変化があるはずだが……。
「腹減ったべ……」
「ねぇ、どうする?このまま餓死しちゃったら」
「そんなん嫌だべ!」
兎兵衛が騒ぎ出したところで急にアナウンス音が響いた。
「なっなに!?」
「全員目が覚めたようですので、廊下を出ると見える両扉の部屋までお越しください」
そしてぶつりとその声は切れた。
「誰だべ!」
「とうとう出たわね……」
廊下の方からは複数の足音が聞こえる。
「どうする?行く?」
「うん……進まなければ始まらない」
そう言いつつも僕の足は震えている。
「怖いの?」
ポーラがにやつきながら僕の顔を覗き込んできた。
「こ、怖くなんか……」
……ないわけがないじゃないか。
「大丈夫、キミはアタシが殺してあげるから」
そう言ってポーラは僕の頭をポンポンと撫でた。
「……嬉しくないよ」
「ふふっ、そうならないといいね」
悪戯っぽく笑うとポーラは扉の方へ向かった。
あんな言葉嬉しくないはずなのに、なんだかとても心強かった。
廊下の外に出るも足音の主達は既に扉の向こうに行ったようで薄暗い廊下は静まり返っていた。
「……行こう」
そして僕たちは大きな扉を開けた。
扉の向こうには僕たちのように集められたであろう人達がいた。
「おぉ、また新しい人たちだねぇ」
その中の1人のハートのバレッタをつけた女の子が声を上げる。
「……ふん。一体何人いるというのだ」
「えへへェ今6人入ってきた?あれ?5、4、いややっぱり6ぅ?重なっちゃってよくわかんないよォ」
着物を着た厳格そうな男と目の焦点の合ってないアブなそうな女の子がこちらを見た。
どうやらここは大広間のようになっているようだ。部屋の反対側にはもうひとつ大きな扉があった。そして一際目を引くのは壁にある大きなモニターだった。
「でっか……何インチこれ?映画館みたい」
ポーラがそれを見て目を丸くした。
「なんだこご……なんだあの黒い板……」
テレビを知らない……!?
「これで9人ですね」
お硬そうな男が眼鏡を光らせて言った。
「扉は12個あったからまだ3人来るってことかな?」
「……単純に考えればね」
僕が言った言葉を肯定するかのようにロリポップを咥えた少女がぼそりと呟いた。
「お、お前らも来たんだな」
昇ももちろんこの中にいた。
「おー、ぼるくーん!」
「ぼ、ぼるくん……?」
案の定ぼるくん困惑。
「こんなとこに集めて何させようってんだろうな」
「ねぇ~」
「フットサルだったらいいな」
そんな訳ないだろ。
「ひとまずは全員揃うまで待つしかないのな」
「まぁそうだろうな。アナウンスが鳴ってから数分でこれだけ集まったんだ。もうすぐに集まるだろう」
そしてその言葉通り、それはすぐに訪れた。
「キ~ルキルキルキルキル……!」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、特に……」
その直後、大きな音を立てて廊下側の扉が開け放たれた。
「キルキルキルキル……キールキルキルキルキル!!」
その不吉な笑い声のようなものを発していたのは仮面を付けた男だった。
「な、なんだお前は!」
「ボクはァ……キルキルキルキル!」
甲高い声でそう言い放つ。
「なんなのこの人……!」
キチンとした紺色のスーツに裏地の紅い蒼黒の外套。ここまでならまだギリギリおかしくもないが顔全体を覆う仮面はこの場においては不気味そのものだった。
「まさかこいつが俺たちを……」
「おい貴様。私たちをここから出せ」
「キルぅ~?」
キルキルはわざとらしく首を傾げた。
「とぼけんじゃないわよ!」
「そうだそうだ!」
キルキルに浴びせられる罵声で途端に部屋が騒がしくなった。
「賑やかだねぇ~」
そんな中でいきなり横から大きな声が聞こえた。
「みんな仲良くなった感じ?ふっふふ、それなら良かった」
「誰っ!?」
部屋に声は響いていたがそれを発していた者が見つからない。
「あ、まだ声だけだった。はーい、モニターにちゅうも~く!」
その声に従うようにモニターを見るとそこには奇妙なマスコットが映し出された。
「え~と、はじめまして。ワガハイはプルート。よろしく」
それは簡素な顔の書かれた青リンゴを被ったペンギンだった。しかしその青リンゴは半分爛れておりその爛れの下にのぞいているのはペンギンの顔ではなく人間の頭蓋骨だった。
「なんだこいつ……きもちわりぃ……」
「き、気持ち悪いとは失礼だなぁ。ワガハイ傷心」
そう言ってわざとらしく落ち込んでみせた。
「なんだよお前は!あの不気味な仮面の仲間か!?」
「だからプルート。あ、名前のことが訊きたいわけじゃないのかな。簡単に言えばぁ~ん~なんて言ったらいいかなぁ」
プルートは頭を抱えながら考え込んでいる。この張り詰めた空間での焦れったい長考には耐えきれそうにない。
「うん、そうだね。主人!そう!主人です!」
ようやくプルートは顔を上げてそのヒレを打ち合わせた。
「主人?」
「そう!ご主人様だよ!」
「ふざけんなよ!誰がお前なんかに」
「待って待って!別に悪いことはしないからさ!」
「そんなの信じられないよ!」
プルートはこちらを宥めようとしているがこんな異常な空間においてそれは何の意味もなさなかった。
「仕方ないなぁ」
誰も話を聞いてくれない状況で、プルートがぼそりとそう言った。僕は知っている。これがデスゲームだとしたら間違いなく見せしめに誰かが殺される……!
「み、みんな!待って!」
僕がそう言っても止まるはずもない。
皆口々に文句や不安の言葉を口にして広間は喧騒で溢れかえっていた。
止まらない。このままじゃまずい。
「ポーラ! 兎兵衛! 協力してよ!」
しかし2人とも気が動転しているのかこちらの声に耳を傾けてはくれない。
「くそっ! なんだよもう……っ!」
この状況で選択肢も現れはしない。僕は半ば諦めてその場に跪いた。
そうして暫くそのままでいた。
それなのにプルートは何もしてこないようだ。
文句を言っても何も返ってこないので、皆も徐々にその勢いを弱めていった。
「……はい、みなさんが静かになるまで5分かかりました」
ようやく広間が静かになった時、プルートが喋り出した。
既に皆文句を言い疲れて再び声を発する気力もないようだった。
「やっぱりね、アンガーマネジメントっていうの?こういうやり方が1番良いよね。ほら、モンスターだって3分間もしないうちに解けるでしょ?」
「何言ってんだこいつは」
……僕は、わかるぞ……。
「さて、じゃあね、ちゃんと説明するから安心してね」
プルートはカタカタと歯を鳴らして笑った。
「まずここはどこか?うん、簡単に言えば『楽園』みたいなところですね」
「楽園……? おらたち死んじまったべか!?」
「天国じゃないですよ。楽園です。ワガハイはね、とある理由でキミたちをここに集めました」
「理由って?」
「キミたちが好きだからさ」
プルートは照れくさそうにそう言った。
「何それ……そんなの知らないよっ! そもそもアンタ誰なの? そのキャラクターもぜんっぜんカワイくないし! そんなこと言うくらいなら顔くらい見せなさいよ卑怯者!」
ポーラが耐えきれずに不満を爆発させた。
「ワガハイはプルート……顔だって見せてるでしょ?」
「バカにしないでっ!」
プルートは意に介さないように話を続けだした。
「さて、まぁ言いたいことはわかりますけどね。別に悪いようにはしませんよ。キミたちの好きな物はしっかり調べてありますから。ここには何だってある。何だってできる。だから楽園で暮らすことを受け入れてはくれないかな?」
「何でも……ある?」
「そ、そんなの信じられるか! こんな閉鎖空間に運動場があるっていうのか? 遊園地があるっていうのか? ハッタリかますのもいい加減にしろ!」
「ん?あるよ」
昇が怒りに任せて放った言葉をプルートはあっさりと肯定した。
「は……?」
「運動場?野球場だってサッカースタジアムだってあるよ。遊園地だってジェットコースターから観覧車までしっかり揃えてありますとも!」
そう言って得意そうに腰に手を当てる。
「そんなわけないだろ!出任せに決まってる!」
「やだなぁ。『楽園』なんだから。何でもあるさ」
「……それじゃあ、アタシの満足するようなカワイイものもあるの?」
「ポーラ!?」
まるで絆されてしまったかのようにポーラは彼に問いかける。
「もちろんあるよ。キミたちの部屋。今頃はきっと……」
そう言ってプルートはクスクスと笑った。
「部屋が……なんだよ?」
「ワガハイからのプレゼントさ。見に行ってごらん?」
その言葉を残して彼は画面から消えた。
「あいつ……説明の途中だってのに」
「でももしかすると部屋の中に僕たちを納得させるものがあるのかも?」
しかし皆警戒してか最初の1歩を踏み出せないでいた。
「キルキルキルキルキル!!」
そんな中でキルキルが奇声をあげながら部屋から飛び出していった。
「あーもう!なんなんだよ!」
結局なし崩し的にそれぞれ廊下へと向かっていった。
「僕たちも……行ってみようよ」
まだ残っていたポーラと兎兵衛にも声をかけて廊下へ向かう。
するともう既に廊下は静まり返っていた。
「……やけに静かだね」
「部屋で何かあったのかも」
「なんだか……気味悪いべ」
しかしここで足踏みしていても意味がない。
「……行こう」
僕たちは別れてそれぞれの部屋へと向かった。
「腹減ったべ……」
「ねぇ、どうする?このまま餓死しちゃったら」
「そんなん嫌だべ!」
兎兵衛が騒ぎ出したところで急にアナウンス音が響いた。
「なっなに!?」
「全員目が覚めたようですので、廊下を出ると見える両扉の部屋までお越しください」
そしてぶつりとその声は切れた。
「誰だべ!」
「とうとう出たわね……」
廊下の方からは複数の足音が聞こえる。
「どうする?行く?」
「うん……進まなければ始まらない」
そう言いつつも僕の足は震えている。
「怖いの?」
ポーラがにやつきながら僕の顔を覗き込んできた。
「こ、怖くなんか……」
……ないわけがないじゃないか。
「大丈夫、キミはアタシが殺してあげるから」
そう言ってポーラは僕の頭をポンポンと撫でた。
「……嬉しくないよ」
「ふふっ、そうならないといいね」
悪戯っぽく笑うとポーラは扉の方へ向かった。
あんな言葉嬉しくないはずなのに、なんだかとても心強かった。
廊下の外に出るも足音の主達は既に扉の向こうに行ったようで薄暗い廊下は静まり返っていた。
「……行こう」
そして僕たちは大きな扉を開けた。
扉の向こうには僕たちのように集められたであろう人達がいた。
「おぉ、また新しい人たちだねぇ」
その中の1人のハートのバレッタをつけた女の子が声を上げる。
「……ふん。一体何人いるというのだ」
「えへへェ今6人入ってきた?あれ?5、4、いややっぱり6ぅ?重なっちゃってよくわかんないよォ」
着物を着た厳格そうな男と目の焦点の合ってないアブなそうな女の子がこちらを見た。
どうやらここは大広間のようになっているようだ。部屋の反対側にはもうひとつ大きな扉があった。そして一際目を引くのは壁にある大きなモニターだった。
「でっか……何インチこれ?映画館みたい」
ポーラがそれを見て目を丸くした。
「なんだこご……なんだあの黒い板……」
テレビを知らない……!?
「これで9人ですね」
お硬そうな男が眼鏡を光らせて言った。
「扉は12個あったからまだ3人来るってことかな?」
「……単純に考えればね」
僕が言った言葉を肯定するかのようにロリポップを咥えた少女がぼそりと呟いた。
「お、お前らも来たんだな」
昇ももちろんこの中にいた。
「おー、ぼるくーん!」
「ぼ、ぼるくん……?」
案の定ぼるくん困惑。
「こんなとこに集めて何させようってんだろうな」
「ねぇ~」
「フットサルだったらいいな」
そんな訳ないだろ。
「ひとまずは全員揃うまで待つしかないのな」
「まぁそうだろうな。アナウンスが鳴ってから数分でこれだけ集まったんだ。もうすぐに集まるだろう」
そしてその言葉通り、それはすぐに訪れた。
「キ~ルキルキルキルキル……!」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、特に……」
その直後、大きな音を立てて廊下側の扉が開け放たれた。
「キルキルキルキル……キールキルキルキルキル!!」
その不吉な笑い声のようなものを発していたのは仮面を付けた男だった。
「な、なんだお前は!」
「ボクはァ……キルキルキルキル!」
甲高い声でそう言い放つ。
「なんなのこの人……!」
キチンとした紺色のスーツに裏地の紅い蒼黒の外套。ここまでならまだギリギリおかしくもないが顔全体を覆う仮面はこの場においては不気味そのものだった。
「まさかこいつが俺たちを……」
「おい貴様。私たちをここから出せ」
「キルぅ~?」
キルキルはわざとらしく首を傾げた。
「とぼけんじゃないわよ!」
「そうだそうだ!」
キルキルに浴びせられる罵声で途端に部屋が騒がしくなった。
「賑やかだねぇ~」
そんな中でいきなり横から大きな声が聞こえた。
「みんな仲良くなった感じ?ふっふふ、それなら良かった」
「誰っ!?」
部屋に声は響いていたがそれを発していた者が見つからない。
「あ、まだ声だけだった。はーい、モニターにちゅうも~く!」
その声に従うようにモニターを見るとそこには奇妙なマスコットが映し出された。
「え~と、はじめまして。ワガハイはプルート。よろしく」
それは簡素な顔の書かれた青リンゴを被ったペンギンだった。しかしその青リンゴは半分爛れておりその爛れの下にのぞいているのはペンギンの顔ではなく人間の頭蓋骨だった。
「なんだこいつ……きもちわりぃ……」
「き、気持ち悪いとは失礼だなぁ。ワガハイ傷心」
そう言ってわざとらしく落ち込んでみせた。
「なんだよお前は!あの不気味な仮面の仲間か!?」
「だからプルート。あ、名前のことが訊きたいわけじゃないのかな。簡単に言えばぁ~ん~なんて言ったらいいかなぁ」
プルートは頭を抱えながら考え込んでいる。この張り詰めた空間での焦れったい長考には耐えきれそうにない。
「うん、そうだね。主人!そう!主人です!」
ようやくプルートは顔を上げてそのヒレを打ち合わせた。
「主人?」
「そう!ご主人様だよ!」
「ふざけんなよ!誰がお前なんかに」
「待って待って!別に悪いことはしないからさ!」
「そんなの信じられないよ!」
プルートはこちらを宥めようとしているがこんな異常な空間においてそれは何の意味もなさなかった。
「仕方ないなぁ」
誰も話を聞いてくれない状況で、プルートがぼそりとそう言った。僕は知っている。これがデスゲームだとしたら間違いなく見せしめに誰かが殺される……!
「み、みんな!待って!」
僕がそう言っても止まるはずもない。
皆口々に文句や不安の言葉を口にして広間は喧騒で溢れかえっていた。
止まらない。このままじゃまずい。
「ポーラ! 兎兵衛! 協力してよ!」
しかし2人とも気が動転しているのかこちらの声に耳を傾けてはくれない。
「くそっ! なんだよもう……っ!」
この状況で選択肢も現れはしない。僕は半ば諦めてその場に跪いた。
そうして暫くそのままでいた。
それなのにプルートは何もしてこないようだ。
文句を言っても何も返ってこないので、皆も徐々にその勢いを弱めていった。
「……はい、みなさんが静かになるまで5分かかりました」
ようやく広間が静かになった時、プルートが喋り出した。
既に皆文句を言い疲れて再び声を発する気力もないようだった。
「やっぱりね、アンガーマネジメントっていうの?こういうやり方が1番良いよね。ほら、モンスターだって3分間もしないうちに解けるでしょ?」
「何言ってんだこいつは」
……僕は、わかるぞ……。
「さて、じゃあね、ちゃんと説明するから安心してね」
プルートはカタカタと歯を鳴らして笑った。
「まずここはどこか?うん、簡単に言えば『楽園』みたいなところですね」
「楽園……? おらたち死んじまったべか!?」
「天国じゃないですよ。楽園です。ワガハイはね、とある理由でキミたちをここに集めました」
「理由って?」
「キミたちが好きだからさ」
プルートは照れくさそうにそう言った。
「何それ……そんなの知らないよっ! そもそもアンタ誰なの? そのキャラクターもぜんっぜんカワイくないし! そんなこと言うくらいなら顔くらい見せなさいよ卑怯者!」
ポーラが耐えきれずに不満を爆発させた。
「ワガハイはプルート……顔だって見せてるでしょ?」
「バカにしないでっ!」
プルートは意に介さないように話を続けだした。
「さて、まぁ言いたいことはわかりますけどね。別に悪いようにはしませんよ。キミたちの好きな物はしっかり調べてありますから。ここには何だってある。何だってできる。だから楽園で暮らすことを受け入れてはくれないかな?」
「何でも……ある?」
「そ、そんなの信じられるか! こんな閉鎖空間に運動場があるっていうのか? 遊園地があるっていうのか? ハッタリかますのもいい加減にしろ!」
「ん?あるよ」
昇が怒りに任せて放った言葉をプルートはあっさりと肯定した。
「は……?」
「運動場?野球場だってサッカースタジアムだってあるよ。遊園地だってジェットコースターから観覧車までしっかり揃えてありますとも!」
そう言って得意そうに腰に手を当てる。
「そんなわけないだろ!出任せに決まってる!」
「やだなぁ。『楽園』なんだから。何でもあるさ」
「……それじゃあ、アタシの満足するようなカワイイものもあるの?」
「ポーラ!?」
まるで絆されてしまったかのようにポーラは彼に問いかける。
「もちろんあるよ。キミたちの部屋。今頃はきっと……」
そう言ってプルートはクスクスと笑った。
「部屋が……なんだよ?」
「ワガハイからのプレゼントさ。見に行ってごらん?」
その言葉を残して彼は画面から消えた。
「あいつ……説明の途中だってのに」
「でももしかすると部屋の中に僕たちを納得させるものがあるのかも?」
しかし皆警戒してか最初の1歩を踏み出せないでいた。
「キルキルキルキルキル!!」
そんな中でキルキルが奇声をあげながら部屋から飛び出していった。
「あーもう!なんなんだよ!」
結局なし崩し的にそれぞれ廊下へと向かっていった。
「僕たちも……行ってみようよ」
まだ残っていたポーラと兎兵衛にも声をかけて廊下へ向かう。
するともう既に廊下は静まり返っていた。
「……やけに静かだね」
「部屋で何かあったのかも」
「なんだか……気味悪いべ」
しかしここで足踏みしていても意味がない。
「……行こう」
僕たちは別れてそれぞれの部屋へと向かった。
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