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星の降る丘へ
第15話 星の破滅を願う者
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第15話 星の破滅を願う者
☆あらすじ
昼間なのに夜のように暗い道で、魔法使いを名乗るシャラ、マハルに出会った一行。しかしその魔法使いは突然別の魔法使いと連携して奇襲をしかけてきたのだった。
「ちょっと!どういうことなの?僕たちの敵?」
「あんたはとりあえず襲われたって自覚を持ちなさい!マハルはどこ!?」
「見失っちゃった…。」
「この暗さなんとかならないかな…。」
「とりあえずムーンライトを高い位置に置いて!」
広い範囲がぼんやりと照らされる。
「あとは警戒ね…。」
あたりは物音もしない。
「さっさと来なさいよ!」
返事は聞こえない。
「まずいね…相手はこちらが気を張り続けて疲れたところを叩くつもりだよ…。持久戦じゃムーンライトを使い続けるルナは不利だ…。」
「くやしい…なんとかならないかな…。」
「あたり一体を燃やせばいいんだよ!」
「物騒だけど…確かに有効そうな感じはする…。」
「だめだよ!そんなことしたら黒渦の薔薇が燃えてしまう!」
「燃えたらだめなの?」
「この薔薇は魔素が強く宿っているんだ。燃やしたら周囲に高濃度の魔素が放出されてしまう…!魔力の高い魔法使いでも正気を保っていられないレベルかもしれない…!」
「危険なものなの…?」
「高濃度なものはなんだって危険さ。例えばボクたちが吸っている空気だってそうだ。魔素も急激に吸収すれば中毒を起こしかねない!」
「じゃあ燃やす作戦はだめね…。」
「うぅ…僕にも何か…何か…!」
「サン!落ち着いて!ムーンライトはまだまだもつわ!それより隙を見せちゃだめ!」
「わ…わかった!」
「アミィも流石に暗闇は見通せないの?」
「流石ルナ!わかってるね!うん。ボクには見えてるよ。でもあいつらの姿は見えない。隠れてるみたいだ。」
「アミィは便利ね…。でも一体どこに…。」
そう言った瞬間、風を切る音が聞こえた。
「きゃっ!」
私の肩に鋭い痛みが走り、矢が突き刺さっていた。
「う…っ…あぁぁああ!痛い!」
「ルナ!」
「ついに攻撃をしかけてきた…!」
「痛い!痛いよぉ!」
「落ち着いてルナ!集中して!ムーンライトが消える!」
「あ!まずい!光が!」
ムーンライトは消えてしまった。
「離れないで!みんな手を繋いで!」
「痛い!痛いっ!」
「どこ!?どこにいるの!?」
「まずい…敵のペースだ…!」
「やっと…俺の出番…!」
「はっ!みんな!敵が来てる!すぐ近くだよ!」
「いやっ!どこ!」
「何も見えないよぉ!」
「くっ…ルナもサンもパニックになっちゃってる…!」
「よぉ…お前は俺が見えるんだな。」
「お生憎様、ボクは魔力の干渉を受けないんだ。」
「へっ。何も気づかずに終われないのは、不幸だったな。」
「いいや!ボクしか戦えない状況に出会ったキミの方が不幸だったよ!」
アミィの声のする方から凄まじい魔力を感じる。
「な…!お前!何者だ!」
「ボクはアミィ…アミィ・ユノン…。この星を護る者だよ。」
「おいマハル!こいつは只者じゃないぞ!」
「ゲンドー…。隠れてる私に話しかけたらバレるでしょうが!」
「うっ…すまねぇ。だがよ!」
「えぇ…そうね。確かにこいつは強い…。他のやつとは比べ物にならないくらい…。」
「ムーンライト!」
あたりが照らされた。
「はぁっ…!はぁっ…!ちょっと!痛いじゃないのよ!」
「やっと落ち着いたんだね!」
「肩に矢が刺さったら驚くに決まってるでしょ!」
「サンライト!」
「え?」
肩の痛みが引いて矢がぽんっと抜けた。傷口は塞がっている。
「ふうっ。やっとかけられた。」
「サン!あなた!」
「うん!回復魔法だよ!」
「驚いた…弱いと思っていたけれど…太陽光吸収の結界の影響を受けながらにして完全回復…!?」
「油断できないな…こいつら…。」
「え?なになに?褒めてる?」
「黙りなさいっ!」
「ひえっ!」
「さ、ご対面ね。もう隠れさせないわよ。」
「ふんっ。奇襲だけが能じゃないのよ。」
「と…とりあえず自己紹介でもする?」
「ばかっ!」
「私はマハル。崩星信者よ。」
「俺はゲンドー。同じくだ。」
「なんで自己紹介の流れを飲み込めるのよ…。」
「ボクが最初に名乗ったしね!」
「あれはちょっと違うでしょ…。」
「僕はサン!ルナの付き添い!」
「………。」
「…あれ?もしかして、私が名乗るの待ってる?」
「当たり前でしょはやくしなさいよ!」
「なんで怒られてんの私…。」
「そりゃそうだよ!セオリーってやつでしょ!」
「そうだよルナ!変身中に攻撃しないでしょ!?」
「なんであんたらまで…。」
「ほら、はやく名乗れよ。みんな待ってんだよ。」
「あーもう!私はルナ!星の巫女!これでいい?」
「ほっ…星の…巫女…!?」
「あ…。」
「はっ…はははっはは……やけに強い護衛がいると思った。」
「妙な魔法使いだと思ってしかけてみたが…当たりだったみたいだなぁ…!」
「えっ!何急に!?」
「こいつはまだ成長していない…!やるなら今しかない!」
「絶対にやる!我々の悲願のために!」
「うわぁっ!なに急にやる気出してんの!?」
「そりゃそうだよ…。ルナ。キミは彼らの狙いそのものなんだから。」
「私しか星を救えないから…そういうこと?」
「そう。だから…今はボクが護るよ!」
アミィが手をかざすして目を閉じた。そして再び開眼した時、緑色の火柱がマハルとゲンドーの足許から飛び出した。
「うあちっ!」
「くっ!なんて火力だ!」
「この火柱はすぐに消えるから薔薇に引火することもない。さ、ダンスを踊るといいよ。」
アミィはマハルとゲンドーの逃げる先に次々と火柱を上げていく。
「ぐっ!うっ!あぁぁっ!」
「どうだい?そろそろ降参するかい?」
「くそっ!くそっ!」
「そろそろ歩けなくなるよ?」
「……わかった。降参だ。」
「私はまだ…!」
「降参だ!…もうやめろ。」
「うぅ…。」
マハルとゲンドーはおとなしくなった。
「さて、話をしようか?」
「殺さないのか?」
「当たり前さ。じゃなかったら降参を促したりしないよ。」
「…なぜ拘束しない?」
「もう負けを認めてるでしょ?」
「私の肉球が…ぼろぼろよ。逃げたくても逃げられないわ。」
「うわぁ…痛そう…はい、サンライト。」
マハルとゲンドーの傷が回復した。
「ちょっと!あんたなにしてるの?私たちは敵なのよ!?元気になったらまた襲ってくるかもしれないのよ!?」
「だって負けを認めてるんでしょ?おかしなこと言うなぁ。」
「……ばか?」
「…うん。」
「で?逃げるの?」
「…逃げません…。」
「それで、崩星信者のことを教えて欲しいんだけど。」
「…お前がこの星を護る存在ならば、俺たちはこの星を壊す存在。その時点で相反しているんだ。分かり合えるはずはない。」
「うん、そうだね。きっとわかり合うことはできない。」
「だが今の俺たちはお前には適わない。しかしここで俺たちを見逃せば、いつかきっとお前たちを倒すぞ。」
「大丈夫。キミには負けないよ。」
「くそっ…。」
「でもね、ボクがききたいのはそんなお話じゃないんだよね。」
「なんだ?」
「キミたちの拠点について教えてよ。」
「…それは…言えない。」
「え~なんで~?教えてよ~。」
「当たり前だ!そんな事を易々と吐くと思うか!?」
「いいや、吐くね。そうでなければ…。そうだねぇ、ここにはどれだけ傷ついても回復してくれる子がいるんだ。…ね?」
「まさか…そんなこと……できるっていうの…?」
「ボクはやるよ。だって星を護らなきゃならないんだもの。命を奪うことはしない。でもボクたちはわかりあえない。志を折り合わなきゃならないんだ。」
「それって…。」
「ルナ。ボクも覚悟はしたつもりだよ。命を奪う以外は、なんだってする。」
「……そうね。そうするしかないわね。」
「ちょっ…ちょっと待て!待ってくれ!」
「話す気になった?」
「ぐ…くくっ…。」
「もうやめて!」
「マハル!」
「それは命を奪うことでもあるのよ!」
「……もしかして。」
「デイズさんみたいなこと…?」
「お前ら、デイズを知っているのか?」
「知ってるの!?」
「ここら辺の支部じゃ負け無しの崩星信者だった男だ。ある時からぱったり連絡が取れなくなった。星に殉じたんだろうが…。」
「仲間に粛清されて…それで…。」
「禁忌…か…。あんなに強かったのに、誇り高い最期は得られなかったか…。」
「あんたに何がわかるのっ!」
「いいや、わからないさ。俺たちの誇るものとお前たちの誇るものは違う。それはさっきの話でもわかったはずだ。」
「そうだよルナ…ボクたちは全く価値観が違うんだ。怒るだけ無駄だよ。」
「………。」
「それで、やはり情報を喋ると、キミたちは呪いを受けるんだね?」
「あぁそうだ。喋りたくても喋る前にな。だから喋って死ねと言われてもできない。」
「流石にそこまで言わないけど…そしたらじゃあ…もう用済みかなぁ、キミたち。」
「帰っていいのか?」
「ううん、だめ。」
「は?」
「だってこのまま放置したら、キミたちまた同じように誰かを襲うでしょ?」
「それはまぁ…。」
「リベンジもあることだし…。」
「そしたらここで見逃すのはだめだよね。」
「お…おいおい、話が違うだろ?命は奪わないって言ったじゃねぇか!」
「うん。そうだよ。」
「さっぱりわかんねぇぜ!つまり何が言いたいんだよ!」
「崩星信者をやめてもらいます。」
「んなっ…!できるわけないだろ!」
「そうよ!それにそんなの押し付けよ!私たちは私たちの意思で崩星信者になったのよ!」
「もうそれは打ち砕かれたってことで。この星はボクたちが救うからもう星は壊れないんだよ。」
「ちくしょう…こいつには何を言っても通じそうにない…。」
「でも誓約があるから私たちは崩星信者の呪縛から抜けられないのよ?」
「それは大丈夫!」
「何がだよ!」
「ボクが解消してあげる。」
「そんなことが…できるのか?」
「うん。」
「アミィ!なんでデイズさんに使わなかったの!?」
「デイズさんの場合は…既に呪いが完遂されていたからだめだったんだ…あの時既にもう命は尽きていたようなものだったんだよ。」
「そう…なの…。」
「それで?どうなの?星に縛られるのと、自由になって星の平和を願うのと、どっちがいい?」
「こいつ…えげつないぜ…。」
「私たちはそんな生易しい世界なんかより死を選ぶわ!ねぇゲンドー?」
「え?えぇと…。」
「は?ちょっとなんなの?あんたの覚悟はそんなもんだったの!?」
「いや…でもよ…俺が星の破滅を願ったのは…家族もみんな死んじまって…独りになったからでよ…。お前と2人でいるようになってからは…その…なんだ……未練が…できちまったみてぇだ…。」
「あっ!禁忌だ!」
「し…しまった!」
「アミィ・リフレッシュ!」
ゲンドーの身体から緑色の光が立ち昇った。
「うわっ!もう火柱はやめたげてよぉ!」
「いや、これは火柱じゃないよ。」
「う…うぅ…俺は……あれ?縛られて…ない?」
「キミはもう崩星信者じゃなくなったんだよ。」
「はっ?えっ?なんで!?」
「ボクが呪いを解いたんだ。誓約もなかったことになったよ。」
「…どこまですげぇんだよお前は…。」
「そ…それより…あんた…さっき…。」
「う…。」
「あ…アミィ!私にもかけて!」
「ふぇ?」
「ゲンドー…。あんたがそんなこと言うから…私も思っちゃったじゃないの…。何もいらないと思ったのに…。」
「マハル…。」
「アミィ・リフレッシュ!」
「あぁっ…!これで私も…崩星信者じゃなくなったのね…。」
「そうさ。もう自由なんだ。」
「マハル…一緒に、暮らさないか?」
「ゲンドー。」
「アミィ。俺はマハルと幸せに暮らしたい。だから、この星を護るっていう、お前の願い、俺にも願わせてくれ。」
「もっちろん!キミたちの願いのチカラが、ボクたちのチカラになるんだ!」
「ありがとう!」
こうして崩星信者のマハルとゲンドーと和解することが出来た。
「崩星信者がみんなこうなってくれたらいいんだけどね。」
「未練を見つけてあげればもしかするといいのかもしれないね。」
「アミィ・リフレッシュを直かけしたらだめなの?」
「それはセオリーじゃないよ!」
「いやそんなこと言ってる場合じゃないでしょ…。」
「まぁ、解呪に協力的な意思がないと解呪できないんだけどね。」
「まあそうよね…。」
「でもマハルもゲンドーも幸せそうだったね!」
「本当の意味で全ての破滅を願う者なんていないのよ…ただやけになってるだけ。生きていれば何度だってやり直せるんだから。」
「そう!その通り!全てが壊れてしまったら何一つ生まれないんだから!」
「やっぱり命を奪うことよりも、こういうことの方が、私たちらしいわね。」
「ね~っ!」
闇の中で出会った絶望が輝かしい希望に変わった。
それは私の抱いていた責任に対する不安や葛藤への答えのような気がした。
☆あらすじ
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「見失っちゃった…。」
「この暗さなんとかならないかな…。」
「とりあえずムーンライトを高い位置に置いて!」
広い範囲がぼんやりと照らされる。
「あとは警戒ね…。」
あたりは物音もしない。
「さっさと来なさいよ!」
返事は聞こえない。
「まずいね…相手はこちらが気を張り続けて疲れたところを叩くつもりだよ…。持久戦じゃムーンライトを使い続けるルナは不利だ…。」
「くやしい…なんとかならないかな…。」
「あたり一体を燃やせばいいんだよ!」
「物騒だけど…確かに有効そうな感じはする…。」
「だめだよ!そんなことしたら黒渦の薔薇が燃えてしまう!」
「燃えたらだめなの?」
「この薔薇は魔素が強く宿っているんだ。燃やしたら周囲に高濃度の魔素が放出されてしまう…!魔力の高い魔法使いでも正気を保っていられないレベルかもしれない…!」
「危険なものなの…?」
「高濃度なものはなんだって危険さ。例えばボクたちが吸っている空気だってそうだ。魔素も急激に吸収すれば中毒を起こしかねない!」
「じゃあ燃やす作戦はだめね…。」
「うぅ…僕にも何か…何か…!」
「サン!落ち着いて!ムーンライトはまだまだもつわ!それより隙を見せちゃだめ!」
「わ…わかった!」
「アミィも流石に暗闇は見通せないの?」
「流石ルナ!わかってるね!うん。ボクには見えてるよ。でもあいつらの姿は見えない。隠れてるみたいだ。」
「アミィは便利ね…。でも一体どこに…。」
そう言った瞬間、風を切る音が聞こえた。
「きゃっ!」
私の肩に鋭い痛みが走り、矢が突き刺さっていた。
「う…っ…あぁぁああ!痛い!」
「ルナ!」
「ついに攻撃をしかけてきた…!」
「痛い!痛いよぉ!」
「落ち着いてルナ!集中して!ムーンライトが消える!」
「あ!まずい!光が!」
ムーンライトは消えてしまった。
「離れないで!みんな手を繋いで!」
「痛い!痛いっ!」
「どこ!?どこにいるの!?」
「まずい…敵のペースだ…!」
「やっと…俺の出番…!」
「はっ!みんな!敵が来てる!すぐ近くだよ!」
「いやっ!どこ!」
「何も見えないよぉ!」
「くっ…ルナもサンもパニックになっちゃってる…!」
「よぉ…お前は俺が見えるんだな。」
「お生憎様、ボクは魔力の干渉を受けないんだ。」
「へっ。何も気づかずに終われないのは、不幸だったな。」
「いいや!ボクしか戦えない状況に出会ったキミの方が不幸だったよ!」
アミィの声のする方から凄まじい魔力を感じる。
「な…!お前!何者だ!」
「ボクはアミィ…アミィ・ユノン…。この星を護る者だよ。」
「おいマハル!こいつは只者じゃないぞ!」
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「うっ…すまねぇ。だがよ!」
「えぇ…そうね。確かにこいつは強い…。他のやつとは比べ物にならないくらい…。」
「ムーンライト!」
あたりが照らされた。
「はぁっ…!はぁっ…!ちょっと!痛いじゃないのよ!」
「やっと落ち着いたんだね!」
「肩に矢が刺さったら驚くに決まってるでしょ!」
「サンライト!」
「え?」
肩の痛みが引いて矢がぽんっと抜けた。傷口は塞がっている。
「ふうっ。やっとかけられた。」
「サン!あなた!」
「うん!回復魔法だよ!」
「驚いた…弱いと思っていたけれど…太陽光吸収の結界の影響を受けながらにして完全回復…!?」
「油断できないな…こいつら…。」
「え?なになに?褒めてる?」
「黙りなさいっ!」
「ひえっ!」
「さ、ご対面ね。もう隠れさせないわよ。」
「ふんっ。奇襲だけが能じゃないのよ。」
「と…とりあえず自己紹介でもする?」
「ばかっ!」
「私はマハル。崩星信者よ。」
「俺はゲンドー。同じくだ。」
「なんで自己紹介の流れを飲み込めるのよ…。」
「ボクが最初に名乗ったしね!」
「あれはちょっと違うでしょ…。」
「僕はサン!ルナの付き添い!」
「………。」
「…あれ?もしかして、私が名乗るの待ってる?」
「当たり前でしょはやくしなさいよ!」
「なんで怒られてんの私…。」
「そりゃそうだよ!セオリーってやつでしょ!」
「そうだよルナ!変身中に攻撃しないでしょ!?」
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「あーもう!私はルナ!星の巫女!これでいい?」
「ほっ…星の…巫女…!?」
「あ…。」
「はっ…はははっはは……やけに強い護衛がいると思った。」
「妙な魔法使いだと思ってしかけてみたが…当たりだったみたいだなぁ…!」
「えっ!何急に!?」
「こいつはまだ成長していない…!やるなら今しかない!」
「絶対にやる!我々の悲願のために!」
「うわぁっ!なに急にやる気出してんの!?」
「そりゃそうだよ…。ルナ。キミは彼らの狙いそのものなんだから。」
「私しか星を救えないから…そういうこと?」
「そう。だから…今はボクが護るよ!」
アミィが手をかざすして目を閉じた。そして再び開眼した時、緑色の火柱がマハルとゲンドーの足許から飛び出した。
「うあちっ!」
「くっ!なんて火力だ!」
「この火柱はすぐに消えるから薔薇に引火することもない。さ、ダンスを踊るといいよ。」
アミィはマハルとゲンドーの逃げる先に次々と火柱を上げていく。
「ぐっ!うっ!あぁぁっ!」
「どうだい?そろそろ降参するかい?」
「くそっ!くそっ!」
「そろそろ歩けなくなるよ?」
「……わかった。降参だ。」
「私はまだ…!」
「降参だ!…もうやめろ。」
「うぅ…。」
マハルとゲンドーはおとなしくなった。
「さて、話をしようか?」
「殺さないのか?」
「当たり前さ。じゃなかったら降参を促したりしないよ。」
「…なぜ拘束しない?」
「もう負けを認めてるでしょ?」
「私の肉球が…ぼろぼろよ。逃げたくても逃げられないわ。」
「うわぁ…痛そう…はい、サンライト。」
マハルとゲンドーの傷が回復した。
「ちょっと!あんたなにしてるの?私たちは敵なのよ!?元気になったらまた襲ってくるかもしれないのよ!?」
「だって負けを認めてるんでしょ?おかしなこと言うなぁ。」
「……ばか?」
「…うん。」
「で?逃げるの?」
「…逃げません…。」
「それで、崩星信者のことを教えて欲しいんだけど。」
「…お前がこの星を護る存在ならば、俺たちはこの星を壊す存在。その時点で相反しているんだ。分かり合えるはずはない。」
「うん、そうだね。きっとわかり合うことはできない。」
「だが今の俺たちはお前には適わない。しかしここで俺たちを見逃せば、いつかきっとお前たちを倒すぞ。」
「大丈夫。キミには負けないよ。」
「くそっ…。」
「でもね、ボクがききたいのはそんなお話じゃないんだよね。」
「なんだ?」
「キミたちの拠点について教えてよ。」
「…それは…言えない。」
「え~なんで~?教えてよ~。」
「当たり前だ!そんな事を易々と吐くと思うか!?」
「いいや、吐くね。そうでなければ…。そうだねぇ、ここにはどれだけ傷ついても回復してくれる子がいるんだ。…ね?」
「まさか…そんなこと……できるっていうの…?」
「ボクはやるよ。だって星を護らなきゃならないんだもの。命を奪うことはしない。でもボクたちはわかりあえない。志を折り合わなきゃならないんだ。」
「それって…。」
「ルナ。ボクも覚悟はしたつもりだよ。命を奪う以外は、なんだってする。」
「……そうね。そうするしかないわね。」
「ちょっ…ちょっと待て!待ってくれ!」
「話す気になった?」
「ぐ…くくっ…。」
「もうやめて!」
「マハル!」
「それは命を奪うことでもあるのよ!」
「……もしかして。」
「デイズさんみたいなこと…?」
「お前ら、デイズを知っているのか?」
「知ってるの!?」
「ここら辺の支部じゃ負け無しの崩星信者だった男だ。ある時からぱったり連絡が取れなくなった。星に殉じたんだろうが…。」
「仲間に粛清されて…それで…。」
「禁忌…か…。あんなに強かったのに、誇り高い最期は得られなかったか…。」
「あんたに何がわかるのっ!」
「いいや、わからないさ。俺たちの誇るものとお前たちの誇るものは違う。それはさっきの話でもわかったはずだ。」
「そうだよルナ…ボクたちは全く価値観が違うんだ。怒るだけ無駄だよ。」
「………。」
「それで、やはり情報を喋ると、キミたちは呪いを受けるんだね?」
「あぁそうだ。喋りたくても喋る前にな。だから喋って死ねと言われてもできない。」
「流石にそこまで言わないけど…そしたらじゃあ…もう用済みかなぁ、キミたち。」
「帰っていいのか?」
「ううん、だめ。」
「は?」
「だってこのまま放置したら、キミたちまた同じように誰かを襲うでしょ?」
「それはまぁ…。」
「リベンジもあることだし…。」
「そしたらここで見逃すのはだめだよね。」
「お…おいおい、話が違うだろ?命は奪わないって言ったじゃねぇか!」
「うん。そうだよ。」
「さっぱりわかんねぇぜ!つまり何が言いたいんだよ!」
「崩星信者をやめてもらいます。」
「んなっ…!できるわけないだろ!」
「そうよ!それにそんなの押し付けよ!私たちは私たちの意思で崩星信者になったのよ!」
「もうそれは打ち砕かれたってことで。この星はボクたちが救うからもう星は壊れないんだよ。」
「ちくしょう…こいつには何を言っても通じそうにない…。」
「でも誓約があるから私たちは崩星信者の呪縛から抜けられないのよ?」
「それは大丈夫!」
「何がだよ!」
「ボクが解消してあげる。」
「そんなことが…できるのか?」
「うん。」
「アミィ!なんでデイズさんに使わなかったの!?」
「デイズさんの場合は…既に呪いが完遂されていたからだめだったんだ…あの時既にもう命は尽きていたようなものだったんだよ。」
「そう…なの…。」
「それで?どうなの?星に縛られるのと、自由になって星の平和を願うのと、どっちがいい?」
「こいつ…えげつないぜ…。」
「私たちはそんな生易しい世界なんかより死を選ぶわ!ねぇゲンドー?」
「え?えぇと…。」
「は?ちょっとなんなの?あんたの覚悟はそんなもんだったの!?」
「いや…でもよ…俺が星の破滅を願ったのは…家族もみんな死んじまって…独りになったからでよ…。お前と2人でいるようになってからは…その…なんだ……未練が…できちまったみてぇだ…。」
「あっ!禁忌だ!」
「し…しまった!」
「アミィ・リフレッシュ!」
ゲンドーの身体から緑色の光が立ち昇った。
「うわっ!もう火柱はやめたげてよぉ!」
「いや、これは火柱じゃないよ。」
「う…うぅ…俺は……あれ?縛られて…ない?」
「キミはもう崩星信者じゃなくなったんだよ。」
「はっ?えっ?なんで!?」
「ボクが呪いを解いたんだ。誓約もなかったことになったよ。」
「…どこまですげぇんだよお前は…。」
「そ…それより…あんた…さっき…。」
「う…。」
「あ…アミィ!私にもかけて!」
「ふぇ?」
「ゲンドー…。あんたがそんなこと言うから…私も思っちゃったじゃないの…。何もいらないと思ったのに…。」
「マハル…。」
「アミィ・リフレッシュ!」
「あぁっ…!これで私も…崩星信者じゃなくなったのね…。」
「そうさ。もう自由なんだ。」
「マハル…一緒に、暮らさないか?」
「ゲンドー。」
「アミィ。俺はマハルと幸せに暮らしたい。だから、この星を護るっていう、お前の願い、俺にも願わせてくれ。」
「もっちろん!キミたちの願いのチカラが、ボクたちのチカラになるんだ!」
「ありがとう!」
こうして崩星信者のマハルとゲンドーと和解することが出来た。
「崩星信者がみんなこうなってくれたらいいんだけどね。」
「未練を見つけてあげればもしかするといいのかもしれないね。」
「アミィ・リフレッシュを直かけしたらだめなの?」
「それはセオリーじゃないよ!」
「いやそんなこと言ってる場合じゃないでしょ…。」
「まぁ、解呪に協力的な意思がないと解呪できないんだけどね。」
「まあそうよね…。」
「でもマハルもゲンドーも幸せそうだったね!」
「本当の意味で全ての破滅を願う者なんていないのよ…ただやけになってるだけ。生きていれば何度だってやり直せるんだから。」
「そう!その通り!全てが壊れてしまったら何一つ生まれないんだから!」
「やっぱり命を奪うことよりも、こういうことの方が、私たちらしいわね。」
「ね~っ!」
闇の中で出会った絶望が輝かしい希望に変わった。
それは私の抱いていた責任に対する不安や葛藤への答えのような気がした。
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マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
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