星の降る丘へ

瀬戸森羅

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星の降る丘へ

第8話 調べの峠

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第8話 調べの峠

☆前回のあらすじ
 アミィに導かれて訪れた森は、魔力でかつての姿を映された枯れ木の森だった
その魔力を使っていた少女ユリィズは、そのチカラの源である琥珀のネックレスと彼女の魂をルナに託した


 「さぁみんな
 そろそろ目的地だよ」

 あれから私たちはアミィの案内で再び旅を続けていた
 アミィセンサーによると目的地は近いらしい

 「あれ?なんか聞こえない?」

 サンの言う通り、どこからか音が聞こえる

 「この音は…あっちの峠から聞こえてくるね」

「ふんふん…目的地のあたりだね」

「じゃあ行ってみましょうか」

 山道を登っていくことになるようで、私は少しだけ気後れした
 が、もう少しで休めそうなので頑張ることにした


 「はぁ…はぁ…なかなかきつかったね…」

 私たちが山道を登りきる頃には、先程の音はかなり近くから聞こえてきていた

 「ん?あの岩の裏から音が聞こえないかな?」

 「確かに…誰かいるのかも…」

 「お~い、誰かいるの~?」

 アミィが呼びかけてみたがその音は途切れず返事もなかった

 「……聞こえてないのかな?」

 「よし、行ってみよう」

 私たちは岩の後ろを覗き込んでみた
 その瞬間音は途切れた
 岩の後ろには誰もいなかった

 「…あれ?」

 「…誰も…いないね」

 「まさか……幽霊…?」

 「アミィの言ってることはほっとくとしてもこれは不思議ね」

 「覗いた瞬間だったもんね」

 「何でほっとくんですか」

 「とりあえず周りも見てみましょう」

 「何で」


 やっぱり私たちは誰もみつけられなかった

 「うーん、おかしいなぁ」

 「どこにもいないねぇ~」

 「しょうがないから行こっか」

 私たちがその場を後にしようとして峠を出かけた時

 「…あれ?」

 また音が聞こえた

 「いやいや…だって…散々探したし…誰も出入りしてないよ…?」

 「ほら!やっぱり幽霊だよ!」

 「確かに誰も出入りしてないわ…」

 「なんでかたくなに幽霊を無視するの!」

 「また見てみる?」

 「そうしましょう」

 やっぱり私たちが覗いた岩の後ろから音がする
 あの岩の後ろは崖になっていて、逃げ場はない
 さらに言えばその崖は私たちが登ってきた山道を一望できるほど見晴らしが良く、隠れられるようなところもない

 「じゃあ、今度は岩の端っこと端っこで一気に見ましょう」

 「これなら逃げ場はないはずだよ」

 そして私たちは岩場を同時に覗き込んだ

 音が止んだ

 「…どういうこと?」

 「……これも魔法かもしれない…」

 「また?!」

 「どうもアミィセンサーが魔法を追いかけてる気がするなぁ…ルナを成長させようとしてるのかもしれない」

 「それはありがたいかもしれないけど…
 この前みたいのが毎回続くのは嫌だよ…」

 私はネックレスを握りしめた

 「それでね、わかったんだよ」

 「わかったの?」

 「これは多分、残留思念だよ」

 「ザンリューシネン?」

 「きっともうこの音を出してた者は生きていないんだ」

 「えっと…じゃあそれって…」

 「うん幽霊」

 「またそんな事ばっかり言って!」

 「真面目にきいてよ!
 ほんとにあるんだって
 これはね、魔力の置き土産だよ
 きっとこの魔力の持ち主は、ボクと同じように終わりを知ったんだろうね
 それで何かしようとしたんだろうけど…やっぱりダメだったんだよ」

 「つまり…」

「命が間に合わなかったんだね
 志半ばで倒れちゃったから、今も諦めきれない想いだけがここにあるってわけ」

 「じゃあ私はこの魔力を受け取ることができるってこと?」

 「うん、いいと思うよ」

 「…呪われたり…しない…?」

 「……さぁ?」

 「ちょっとそれ本気なのかふざけてるのか分かんないんだけど!」

 「うそうそ!魔力の残滓ってのは意思が宿っているものじゃないからキミに対して恨んだりしないよ」

 「それならよかった」

 「ただ、残留思念の方はわかんないけどね」

 「え?」

 「そこにいるんだよ彼は」

 「………」

 私は固まってしまった

 「どしたの?」

 ……


 「お~い
 あ、もしかして!やっぱり幽霊が怖かったんだ!」

 「そんなことない!」

 「あ、帰ってきた」

 「じゃ、じゃあどうする?!話せるの?」

 「ボクが魔力に干渉しようか」

 「あの…私あっち行ってちゃだめ?」

 「もうっ!ルナが魔力もらうんだから!」

 「うぅ~…」

 「じゃあ呼びかけるよ?いい?!」

 「う…うぅ~…いいよ…」

 「頑張ってルナ!」

 「頑張るよ!」

 「う、うん、じゃあいくよ!」

 アミィが何か呟き始めた

 「むにゃむにゃ…アミィコール!」

 岩の前に光が集まるとうっすらと身体の透けた男の子が現れた

 「あ!え?!あれ?!話せる!」

 「どうも~初めまして!アミィちゃんだよ~!」

 「え、誰?」

 「あ、ごめんなさい、とりあえずこの子の言ってることは気にしないで」

 「ちょっと!自己紹介大事!」

 「キミの名前は?」

 「僕は…ミドーっていうんだ」

 「ミドーくんはどうしてここに?」

 「僕はね、魔法が使えるんだ
 それでね、見ちゃったんだよ
 この惑星が終わりかけてるってことを」

 「やっぱりそうなんだね」

 「それで僕は一生懸命祈ったんだ
 魔力をこめたこのオカリナを吹いて」

 ミドーの手にはいつの間にか半透明の物体が握られていた

 「ねぇアミィ…あれ何…?」

 「あれは音を出す道具、楽器のひとつだよ
 オカリナっていう、吹いて音を出す笛の一種さ」

 「まさかあれも…」

 「うん、大洋の時代のものだね」

 「そこの君は魔法使いみたいだからこの楽器のことは知ってるんだね」

 「あ、わかる?」

 「じゃなきゃ僕の思念に意志を持たせることなんて出来ないよ…」

 「ごめんね」

「なんで謝ったの…?」

 「あのね、さっきも言ったけど彼は残留思念なんだ
 本当の彼、というか思念を残した彼ではないんだよね
 つまりボクは魔力の残り香に一時の思考を与えてるんだよ
 それはある種もう1人の彼を生み出すことでもあって、また次の瞬間にはその生み出した彼を消すことでもあるんだ
 現にボクはこの話が終わったら彼を消さなくてはいけない
 本来ならこの場所には意志を持った彼は存在し得ないから」

 「よくわかんないけど…アミィは悪いことをしているの…?」

 「…言うならば、自分以外の日記帳をその書いた本人の知らない場所でその本人の声で読み上げさせているようなものさ」

 「…ごめんねミドー…失礼なことだよね…」

 「ううん、いいんだよ
君たちはきっとこの惑星を救ってくれるんでしょ?」

 ミドーは儚げに微笑んだ


「ま、任せて!私が星の巫女としての役目をきっちり果たすから!」

 「星の巫女!!」

 ミドーが突然飛び上がった

 「実在したんだ…じゃあ…じゃあ…」

 「うん、そうだよ
ボクたちもやっと果たせるんだ」

 「あぁ…よかった……」

 ミドーは涙をポロポロ流し始めた

 「僕はもう、この命が尽きるまで祈り続けた
 それでもダメだった
 でもせめて、僕のこの想いだけは
  一緒に連れてってよ」

 「チカラを貸してくれるの…?」

 「もちろん!星の巫女サマ!
 このサファイアのオカリナは失われちゃったけど…」

 「それならボクに任せて!
 う~ん、あ!あった!」

 アミィが近くの土を掘り起こすと、青く輝く宝石が出てきた

 「これはサファイアのオカリナの残骸だね!ずっとこの場所に残ってたんだ」

 「てことは僕も…」

 「いやいい!やめて!」

 「…でもこんな残骸どうするの?」

 「これをこうして…こう!」

 アミィはその宝石でブローチを作り上げた

 「これでどうかな?」

 「ねぇアミィ…もしかしてこれまた私がつける流れ?」

 「そうだよ?」

 「なんかこの調子でいくとルナはお姫様ってくらいキラキラに飾り付けられちゃいそうだね…。」

 「まあでもチカラを貸してもらうわけだし…仕方ないよね」

 「そうそう!偉いね!」

 「ありがとねミドー
 あなたのチカラも絶対無駄にしたりしない
 だから…安心してね」

 「うん…ありがとう…
 僕はもう…眠るよ…
 アミィ…お願い」

 「まかせて!
 ……じゃあ…ありがとう」

 アミィが手を合わせるとミドーの半透明の身体はさらに透明になっていった
 ミドーが見えなくなった頃声がきこえた

 「僕からも…ありがとう…」


 「じゃあそろそろ行こっか」

 「そうだね
 私はまたひとつ託された
 こうなったらもう私だけの問題じゃないものね
 行かなきゃ
 星の降る丘へ 」

 私たちは峠を下った
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