星の降る丘へ

瀬戸森羅

文字の大きさ
上 下
3 / 15
ものがたりのはじまり

第3話 星をみた夜

しおりを挟む
第3話 星をみた夜

 「もう冷えてきた
 帰ろうか、ルナ」

 「そうね
それじゃあまた会いましょうね、サン」

 去っていくサンの身体はやがて闇と溶け合い見えなくなった


 「サン
 あの子はなんだか
 あの空みたいだわ」


 私はまた空を仰いだ
 数えきれないくらいの星が私を見下ろしている
 
 「私が星で、あの子が空
 なんて
 あの子のロマンチックがうつったかしら」

 なんだかあの星が
 今の独り言を聞いて笑っているのではないか
 と思ってしまい
 少し、恥ずかしくなった


 私も住処に帰ることにした
 夜風が身体を冷やす
 身を震わせながらとたとたと足を早めた

 「あ、お母さん」

 住処につく少し前のところで
 お母さんに出会った

 「あら、ルナ
 あなたも星を見ていたのかしら…?」

「 てことは、お母さんも?」

 「そうよ…
 …あの日を思い出すわ
 ねぇルナ、あなた、覚えてるかしら
 あの星の降る丘のことを…」

 「…え!
 ききたい!
 私、ずっと知りたかったの!
 広い広い星空のこと!
 毎晩夢に見るの!
 ねぇ、教えて!」

 「あら…そう…
 じゃあ…教えてあげない」

 「えー?!
 ど、どういうこと…?」

 「いえね…
 あなたがそんなに楽しそうに話すものだから…
 思い出は…
 幸せな形で残っているのが1番だわ…」

 「それって…」

 「なんでもないわ…
 今の話は忘れて
 あなたは綺麗な星空を見たことがある…
 それだけのことよ…」

 「…お母さん…そんなこと言われたら…」

 「ごめんなさいね…
 でも私には…
 ……もう寝なさい…
 きっと教えてあげるわ
 ただ、今はまだ、やめておきましょう
 あなたの目はまるで
 あの星のように輝いているから…」

 「……わかった…
 おやすみなさい、お母さん…」

 私たちは無言で寝床に向かった


 朝がやってきた
 鳥のさえずる声が聞こえてきて目を覚ました
 寝ぼけ眼を擦る私は
 ゆるやかに過ぎていた時間が
 この日から急速に動くことになることを
 まだ知らなかった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】宮廷占い師は常に狙われています! ~魔の手から逃げきってみせますよ~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
宮廷占い師――他国にはない特殊な役職を代々引き継ぐ子爵令嬢リンネア。その的中率はほぼ100%を誇る。そのため国王陛下や宰相閣下の信頼も厚かった。同じ占い師であった母の跡を継いだリンネアは、常に狙われている。捕まえて利用しようとする者、邪魔だから排除しようと考える者……そして、彼女を穢そうとする者。乙女でなくては占えない。彼女は愛する人と結ばれるまで、お役目を果たすことが出来るのか!? ハッピーエンド確定 ※タロットカードはトートを参考にしていますが、100%一致しません。解釈違いのご指摘は無視させていただきます。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/29……完結 2023/12/23……エブリスタ、恋愛ファンタジー#トレンド 3位 2023/12/23……アルファポリス、女性向けHOT 71位 2023/12/22……連載開始

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

クラス転生あるあるで1人追放になって他の勇者は旅立ったけど私達はのんびりしますがのんびり出来なそうです

みさにゃんにゃん
ファンタジー
よくラノベの定番異世界転移のクラス転移で王様がある男子…黒川君を国外追放した。 理由はあるある展開で「雑魚スキルだから出てけ」ということで黒川君はドナドナされて残ったメンバーは勇者として直ぐに魔物討伐の旅に出されたが私達はのんびりしようと思います。 他のキャラのサイド話が間に入りますので悪しからず

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

傭兵部隊の任務報告1~物語の始まり

谷島修一
ファンタジー
 ≪帝国軍傘下の“傭兵部隊”~すべてはここから始まった≫  ブラミア帝国軍の突然の侵攻により、ブラウグルン共和国軍は敗退を続けていた。  最終決戦“グロースアーテッヒ川の戦い”で、軍の主力部隊は壊滅状態となり共和国は無条件降伏を決めた。  しかし、共和国の首都ズーデハーフェンシュタットでは首都防衛隊が無傷で残存しており、中には徹底抗戦を唱えるものも少なくなかった。しかし、主人公【ユルゲン・クリーガー】は、これ以上の抵抗は無意味と考えていた。  いよいよ帝国軍が首都に入ってくるというところで、徹底抗戦を訴える兵士達が命令に反して武装蜂起。それに反対するクリーガーを始めとする勢力との間で戦闘が始まる。  港の桟橋での戦いで、クリーガーは兄弟子クラウス・ルーデルと対決することになる。  “色彩の大陸”の歴史を変えた、“傭兵部隊”の物語がここから始まる。 ================================ ここでは、時系列的につながっている短編3つ、 ・“グロースアーテッヒ川の戦い” 11話 ・“徹底抗戦派の反乱” 8話 ・“傭兵部隊設立” 7話 をまとめております。

無表情ドールマスター

けんはる
ファンタジー
無表情少女香月 ゆずが姉に誘われて始めたVRMMO〈Only Fantasy〉で十天聖の一人に選ばれてしまうが そんなことは関係なく自由に行動していく物語 良ければ 誤字・脱字があれば指摘してください 感想もあれば嬉しいです 小説を書こうでも書いてます

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。 姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。 対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。 能力も乏しく、学問の才能もない無能。 侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。 人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。 姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。 そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...