ほしくずのつもるばしょ

瀬戸森羅

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おはなし

空のはしご

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 あのはしごに登ればお月様に手が届くかな?
 ボクは幼かった。
 小さいから届かないものが多すぎて、高い場所に行けば上にあるものはなんでも取る事ができると思っていた。
 お父さんはボクより大きいから、多くのものをとってくれた。
 そんなお父さんに肩車してもらった時は、ボクは誰よりも大きくなったように思えた。
 そのお父さんより遥かに高いあのはしごに登れば、あのお月様にさえ手が届くのだと思っていた。

 今のボクはもう幼くないから、お月様はあのはしごよりずっと遠くにあるんだってことも知ってるし、手を伸ばしたところで触れることのできないものがあるってこともわかっていた。
 でも今は、どうしても高いところに行きたかった。
 家の屋根に登った。
 まだ届かない。
 今のボクはもう幼くないから、本当はわかっていたんだ。
 お空に昇った魂には、どれだけ高い場所からでもその手は届かないってことが。

 あの月にキミはいるのだろうか。
 涙の数だけお月様は滲んで、見えなくなってしまった。
 星の煌めきが混ざり合い、夜空はきらきらと輝いて見えた。
 展望台は高いから、ヒュウヒュウと音を立てて、夜風が鳴いている。
 夜風は身体を冷やすから、風邪をひかないでねって、キミが隣で囁いたような気がした。
 お月様にいるはずのキミは、ボクのすぐ傍にいたんだ。

 ボクはきっと知っていた。
 でもまだ認めることが出来なかっただけだ。
 遠くへ行ってしまっただけのはずのキミが、ボクの思い出の中に生きてしまうことを。
 地球の裏側でもいいから、生きていて欲しかった。
 一晩中その場で泣いていたら、お日様が顔を出した。
 白みがかり、やがて夜空全てが明るく照らされていく。
 いつかキミがボクに言った。
「キミはお日様みたいだね」
 その言葉を思い出した時、ボクはキミのために生きると決めた。
 そして、ボクにも夜明けが訪れた。
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