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第一章 灰姫と魔王
episode.13 動乱の幕開け
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王城に着くや門番とお父様が何かを話している隣で、私は再びフードを被り息を殺す。しばらくして馬車が動き出し城門を通過した事を確認し、私はアリサに尋ねる。
「アリサ、これ大丈夫」
「えぇお任せください、まだまだ大丈夫です。私はこう見えて強いですからね~」
「さすがね、お継母様の魔法が効いていないのも関係あるのかしら」
「あ、それはですね…「着いたぞ」
お父様がそう告げると馬車の揺れは収まった、ここからは歩いて向かうらしい。それよりも初めて来たとはいえ、窓から見える王城はどこか恐ろしく感じた。夜の雰囲気のせいなのか、私の気持ちのせいなのかは分からないが、これからここに足を踏み入れるのだと思うと躊躇したくなる。
それでも踏み込まねばならない、リュシアン様にもう一度会いたい一心を強く胸に抱き、馬車から降りる。
そこからはお父様の後ろを、隣でアリサが隠すようにして王城の中を進んでいくが、しばらくして王城の中に違和感を感じ始める、私が日中屋敷で会う人の数と比べてかなり少ない気がする。
この国の要である王城とはいえここまで少なくては守りも手薄になってしまうのではと感じた。すると、一人の兵士がお父様のそばに近づいてき、用件を聞いていた。
「はっ、オーエンス伯爵でございましたか。王太子殿下より話は賜っております、こちらについて来て下さいますでしょうか」
「分かった」
そうして言われるがままに兵士の後をついて行く、こちらには見向きもしないのでアリサのコートが効果を発揮している証拠だろう、ここまでの効果があるのならどこへでも忍び込めてしまうと悪い考えも浮かんでしまいそうなほどだった。
そうして案内された扉の前で立ち止まる、兵士がノックをし何かを確認した後に扉を開ける。私は辺りを見渡す余裕もなくお父様の背中を眺めながらついて行き、数歩進んだ所で後ろで扉の閉まる音がした。
「オーエンス伯爵」
聞き覚えのある声で考えるよりも先に体が動く。フードを被りながらも顔を上げて背中越しに奥を見渡す、そこにはリュシアン様の姿があった、隣には豪華な椅子に座った見知らぬ男性の姿もあったが、広間の中心に座るその人物を見た瞬間、全身に重圧がのしかかった。
豪華な椅子にふさわしい堂々とした佇まい――王だと直感せざるを得なかった。
「王よ、そしてリュシアン王太子殿下に置かれましてもご無事なようで何よりでございます」
そう言いながらお父様は片膝をつき頭を下げた、私も自然と同じ格好をとっていた。アリサの魔極など関係のない事のように。
「面をあげよ、火急の用件とは聞いておる」
「はっ、それでは失礼します」
そう言いお父様は立ち上がる。やはりこの人はこの国の王で間違いないらしい、話には聞いていたが厳格で歴代の王の中でも一番優秀で、王の功績は数え切れないほどだと先生はよく語っていた。
その話を思い出しながら、彼の存在感に圧倒される自分を感じる。
「話の前にまず、ご無礼を承知で失礼します。この罰は後ほど如何様にも」
力強く告げられた言葉と同時に私の着ていたマントが溶け消えていた、私は立ち上がらずにいたので先程のお父様の姿勢を保ち続けていた。
「急に現れた手段については後で詳しく聞こうか」
「恐れ入ります」
「娘よ、面をあげよ」
私はその言葉を聞きゆっくりと頭を上げる、今の私に身を隠すものはなく捉え方によってはこの王城で誰にも気づかれる事無く王に近づいた事になる。
「そうか、お主が」
「はい。お初にお目にかかりますオーエンス家が長女、エレナ・オーエンスと申します」
「話はリュシアンから聞いておる、息災であったな」
「リュシアン様におかれましても此度、私どもの身内が多大なるご迷惑をおかけしたこと、お詫びのしようがありません」
「構わん、俺はリュシアンの意思を尊重したまで。なぁ?」
「はい、情けなくも逃げ帰るような結果となってはしまいましたが」
リュシアン様がどこかよそよそしく感じるのはここが王の間であるからでしょうか、いつも屋敷にいらしていた時とは雰囲気が違って見える。
「それでオーエンス、リュシアンに渡した手紙は呼んだ。内容は理解したが、どうするつもりだ」
「はい、かねてより王の勅命で動いておりましたがこれ以上事が大きくなる前にこちらから打って出るべきかと愚考します」
「それは前にも話したが確実な証拠がなければ、俺についてくれている貴族や王族からの反感が膨れ上がるぞ、次は自分ではないかとな」
「そうならない為に此度の騒動を利用します」
私はお父様の計画を簡単にではあるが聞いていた、お継母様のお望み通りソフィアを婚約者として仕立て上げる、そうすればリュシアン様に精神操作の魔法をかけようと屋敷に招くはず。そこを狙い魔法の発動とその方法を暴くと。
「それはお前が何度も試して失敗しているだろう」
「はい、今回はエレナがおります」
「どういうことだ?」
私が以前に空気の揺れを感じたと話した、その時は魔法がかけられていると知らなかったので違和感程度にしか感じなかったが今回は違う。私が側で魔法の痕跡を辿り、その証拠を掴む。
「なるほど、それで先の誰にも見つからない手段か」
「その通りでございます」
「だが、失敗すればこの国の王太子を囮にした挙句、みすみすと敵の手に渡す事になるのだぞ。分かっているのか?」
威圧感のある鋭い眼光が私たちに向けられる、その気持ちは理解できなくもない。国の為とはいえ自身の息子が危険に晒されようとしているのだから、それも不安材料が残り信頼の置けない一貴族の娘に全てを委ねようとしているのただから怒るもの無理はない。
「王よ、私からも一つよろしいでしょうか」
「なんだ申してみよ」
「私はつい先程、今回の経緯全てを知りました。恥ずかしながらもリュシアン様の想いについても。だからこそこれ以上は蚊帳の外にいるつもりはありません、今度こそリュシアン様と一緒に隣で戦いたく存じ上げます」
仮に私たちの提案が通らなかった場合、話を聞く限りではリュシアン様単独で動かれる可能性がある。そうならないように、もう後悔などしないように私も戦える最善の策がこれだ。
眼の前の王は一人の親のようにも見え頭を抱えながら黙り込んでいた、お父様もリュシアン様もこれ以上は何かを言うでもなくこの場にいる全員が固唾をのんで待っている。
「はぁーっ、リュシアンお前はど思う」
「私……ですか?」
「お前の意見と気持ちを聞いておきたい」
「私は……」
リュシアンが口を開くと同時に私たちが入ってきた後ろの扉が音を立てながら開かれた、騒然とした中勢いよく入ってきたのは王妃教育をしてくれていた先生だった。
「バレッド、騒々しいぞ何用だ」
そういえばいつも先生と呼んでいたので、名前は知らなかった。それにしても、ここに入ってくるという事はそれなりの人物だったのだと知った、それと同時に涼しげな顔をしているにも関わらず慌ただしく入ってき私達の後ろに立ち止まった。
その様子は、いつもの先生らしくないような気が。
「王よ突然失礼します、ここにオーエンス伯爵が来ていると聞ききまして参じました」
「それで、もう一度問う。何用だ?」
やはり断りのない意図しない訪問だったらしく、王が先程とは違い苛ついたような口調で話していた。私もこの場に先生が来られた理由を気にはなった、それもお父様に会いに来たかのような口ぶりで。
「この場を借りて失礼します、何故このような重大な場所かつこのような夜更けに〝国家反逆を企てているオーエンス家〟を招いているのかと」
「国家反逆?お前は何を言っている」
先生はいきなり入ってきては荒唐無稽な内容を口にし、全員の視線が一点に集まる。
少しの沈黙が流れた後、唸るような声が王の方から聞こえた。振り向き、私が目にしたその光景に言葉を失う。
「お前……何を…」
「父上……いや、王よ。その席を空けてもらおう」
「王よ!!!」
その瞬間、時間が止まったかのように感じた。胸を締め付けるような冷たい痛みが広がり、何か叫びたいのに声が出ない。目の前の光景が信じられず、ただ震える手を握りしめるしかできなかった。
「リュシアン殿下ぁっ!気でも狂ったか!!」
お父様が音を鳴らしながら剣を抜き構える。
《ロックプリズン》
飛び出すお父様を抑えるようにして魔法が唱えられ、岩でできた格子の牢獄によって捕らえられてしまい、それを見たアリサは私を守るようにして背を向けながら両の手にナイフを構えている。
信じたくもないが、お父様を捕らえたその牢獄は先生によって作られたものだった。
「バレッド、リュシアン!!貴様らどういうつもりだ!」
荒ぶるお父様の声に身がすくむような感覚に襲われる、依然として二人は恐ろしいほ冷静に佇んでいる。
ただ、以前のように何もできないままではいられない。
「アリサ、これ大丈夫」
「えぇお任せください、まだまだ大丈夫です。私はこう見えて強いですからね~」
「さすがね、お継母様の魔法が効いていないのも関係あるのかしら」
「あ、それはですね…「着いたぞ」
お父様がそう告げると馬車の揺れは収まった、ここからは歩いて向かうらしい。それよりも初めて来たとはいえ、窓から見える王城はどこか恐ろしく感じた。夜の雰囲気のせいなのか、私の気持ちのせいなのかは分からないが、これからここに足を踏み入れるのだと思うと躊躇したくなる。
それでも踏み込まねばならない、リュシアン様にもう一度会いたい一心を強く胸に抱き、馬車から降りる。
そこからはお父様の後ろを、隣でアリサが隠すようにして王城の中を進んでいくが、しばらくして王城の中に違和感を感じ始める、私が日中屋敷で会う人の数と比べてかなり少ない気がする。
この国の要である王城とはいえここまで少なくては守りも手薄になってしまうのではと感じた。すると、一人の兵士がお父様のそばに近づいてき、用件を聞いていた。
「はっ、オーエンス伯爵でございましたか。王太子殿下より話は賜っております、こちらについて来て下さいますでしょうか」
「分かった」
そうして言われるがままに兵士の後をついて行く、こちらには見向きもしないのでアリサのコートが効果を発揮している証拠だろう、ここまでの効果があるのならどこへでも忍び込めてしまうと悪い考えも浮かんでしまいそうなほどだった。
そうして案内された扉の前で立ち止まる、兵士がノックをし何かを確認した後に扉を開ける。私は辺りを見渡す余裕もなくお父様の背中を眺めながらついて行き、数歩進んだ所で後ろで扉の閉まる音がした。
「オーエンス伯爵」
聞き覚えのある声で考えるよりも先に体が動く。フードを被りながらも顔を上げて背中越しに奥を見渡す、そこにはリュシアン様の姿があった、隣には豪華な椅子に座った見知らぬ男性の姿もあったが、広間の中心に座るその人物を見た瞬間、全身に重圧がのしかかった。
豪華な椅子にふさわしい堂々とした佇まい――王だと直感せざるを得なかった。
「王よ、そしてリュシアン王太子殿下に置かれましてもご無事なようで何よりでございます」
そう言いながらお父様は片膝をつき頭を下げた、私も自然と同じ格好をとっていた。アリサの魔極など関係のない事のように。
「面をあげよ、火急の用件とは聞いておる」
「はっ、それでは失礼します」
そう言いお父様は立ち上がる。やはりこの人はこの国の王で間違いないらしい、話には聞いていたが厳格で歴代の王の中でも一番優秀で、王の功績は数え切れないほどだと先生はよく語っていた。
その話を思い出しながら、彼の存在感に圧倒される自分を感じる。
「話の前にまず、ご無礼を承知で失礼します。この罰は後ほど如何様にも」
力強く告げられた言葉と同時に私の着ていたマントが溶け消えていた、私は立ち上がらずにいたので先程のお父様の姿勢を保ち続けていた。
「急に現れた手段については後で詳しく聞こうか」
「恐れ入ります」
「娘よ、面をあげよ」
私はその言葉を聞きゆっくりと頭を上げる、今の私に身を隠すものはなく捉え方によってはこの王城で誰にも気づかれる事無く王に近づいた事になる。
「そうか、お主が」
「はい。お初にお目にかかりますオーエンス家が長女、エレナ・オーエンスと申します」
「話はリュシアンから聞いておる、息災であったな」
「リュシアン様におかれましても此度、私どもの身内が多大なるご迷惑をおかけしたこと、お詫びのしようがありません」
「構わん、俺はリュシアンの意思を尊重したまで。なぁ?」
「はい、情けなくも逃げ帰るような結果となってはしまいましたが」
リュシアン様がどこかよそよそしく感じるのはここが王の間であるからでしょうか、いつも屋敷にいらしていた時とは雰囲気が違って見える。
「それでオーエンス、リュシアンに渡した手紙は呼んだ。内容は理解したが、どうするつもりだ」
「はい、かねてより王の勅命で動いておりましたがこれ以上事が大きくなる前にこちらから打って出るべきかと愚考します」
「それは前にも話したが確実な証拠がなければ、俺についてくれている貴族や王族からの反感が膨れ上がるぞ、次は自分ではないかとな」
「そうならない為に此度の騒動を利用します」
私はお父様の計画を簡単にではあるが聞いていた、お継母様のお望み通りソフィアを婚約者として仕立て上げる、そうすればリュシアン様に精神操作の魔法をかけようと屋敷に招くはず。そこを狙い魔法の発動とその方法を暴くと。
「それはお前が何度も試して失敗しているだろう」
「はい、今回はエレナがおります」
「どういうことだ?」
私が以前に空気の揺れを感じたと話した、その時は魔法がかけられていると知らなかったので違和感程度にしか感じなかったが今回は違う。私が側で魔法の痕跡を辿り、その証拠を掴む。
「なるほど、それで先の誰にも見つからない手段か」
「その通りでございます」
「だが、失敗すればこの国の王太子を囮にした挙句、みすみすと敵の手に渡す事になるのだぞ。分かっているのか?」
威圧感のある鋭い眼光が私たちに向けられる、その気持ちは理解できなくもない。国の為とはいえ自身の息子が危険に晒されようとしているのだから、それも不安材料が残り信頼の置けない一貴族の娘に全てを委ねようとしているのただから怒るもの無理はない。
「王よ、私からも一つよろしいでしょうか」
「なんだ申してみよ」
「私はつい先程、今回の経緯全てを知りました。恥ずかしながらもリュシアン様の想いについても。だからこそこれ以上は蚊帳の外にいるつもりはありません、今度こそリュシアン様と一緒に隣で戦いたく存じ上げます」
仮に私たちの提案が通らなかった場合、話を聞く限りではリュシアン様単独で動かれる可能性がある。そうならないように、もう後悔などしないように私も戦える最善の策がこれだ。
眼の前の王は一人の親のようにも見え頭を抱えながら黙り込んでいた、お父様もリュシアン様もこれ以上は何かを言うでもなくこの場にいる全員が固唾をのんで待っている。
「はぁーっ、リュシアンお前はど思う」
「私……ですか?」
「お前の意見と気持ちを聞いておきたい」
「私は……」
リュシアンが口を開くと同時に私たちが入ってきた後ろの扉が音を立てながら開かれた、騒然とした中勢いよく入ってきたのは王妃教育をしてくれていた先生だった。
「バレッド、騒々しいぞ何用だ」
そういえばいつも先生と呼んでいたので、名前は知らなかった。それにしても、ここに入ってくるという事はそれなりの人物だったのだと知った、それと同時に涼しげな顔をしているにも関わらず慌ただしく入ってき私達の後ろに立ち止まった。
その様子は、いつもの先生らしくないような気が。
「王よ突然失礼します、ここにオーエンス伯爵が来ていると聞ききまして参じました」
「それで、もう一度問う。何用だ?」
やはり断りのない意図しない訪問だったらしく、王が先程とは違い苛ついたような口調で話していた。私もこの場に先生が来られた理由を気にはなった、それもお父様に会いに来たかのような口ぶりで。
「この場を借りて失礼します、何故このような重大な場所かつこのような夜更けに〝国家反逆を企てているオーエンス家〟を招いているのかと」
「国家反逆?お前は何を言っている」
先生はいきなり入ってきては荒唐無稽な内容を口にし、全員の視線が一点に集まる。
少しの沈黙が流れた後、唸るような声が王の方から聞こえた。振り向き、私が目にしたその光景に言葉を失う。
「お前……何を…」
「父上……いや、王よ。その席を空けてもらおう」
「王よ!!!」
その瞬間、時間が止まったかのように感じた。胸を締め付けるような冷たい痛みが広がり、何か叫びたいのに声が出ない。目の前の光景が信じられず、ただ震える手を握りしめるしかできなかった。
「リュシアン殿下ぁっ!気でも狂ったか!!」
お父様が音を鳴らしながら剣を抜き構える。
《ロックプリズン》
飛び出すお父様を抑えるようにして魔法が唱えられ、岩でできた格子の牢獄によって捕らえられてしまい、それを見たアリサは私を守るようにして背を向けながら両の手にナイフを構えている。
信じたくもないが、お父様を捕らえたその牢獄は先生によって作られたものだった。
「バレッド、リュシアン!!貴様らどういうつもりだ!」
荒ぶるお父様の声に身がすくむような感覚に襲われる、依然として二人は恐ろしいほ冷静に佇んでいる。
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