37 / 51
第37話 クズだしヒモだし、ゴミだから社会に要らないだろ?②
しおりを挟む
「…………えっと、ダレカタスケテ」
「ちょ、ダイスケーーーっ!?」
暴走魔法少女・下野の触手によって頭を掴まれ宙づりになっているダイスケ。
俺と中村が話している内に、ダイスケの命は面白い感じに風前の灯火と化していたのだった。
「待て、ちょっと待て。想定と違うぞ。土下座させて指の一~二本落とす方が、まだ全然マシな展開になってきてるんだけど!? 今まさに、首が一本落とされそうになってんだけど!?」
「これはこれで良いんじゃないか? ダイスケが死ねば、暴走魔法少女の溜飲も下がって、力も下がるだろッ!」
「韻踏んで上手いこと言ってんじゃねえ! ってか中村、実はお前もテンパってんだろ!」
「テンパってなどいない。このアパートに着いてから起こり得る展開、十五通りにおいてシミュレーションは済んでいる。対処方法も完璧だ。ただ……想定していた十五通り以外の展開が発生しているだけの話だ」
「だから、それをテンパってるって言うんじゃねぇの!?」
言い争いを始める俺たちをしり目に、焦点の定まらない目をした下野が機嫌よく笑い始める。
「うへ、うへへへ。ありがとうな、見ず知らずの魔法少女ぉぉぉぉ。お前達の協力のお陰で、コイツをぶっ殺せる。そしたらシャロちゃんも、きっと真実の愛に気付いてくれるよなぁぁ」
ダイスケの頭を掴んでいる触手に力を籠める下野。
その表情は、ほとんど理性の残っていない気味の悪い笑顔で一杯だった。
「つーか、勝手に共犯にするんじゃねえ。お前に協力とかしてねえからな!」
と叫んでは見たものの下野を止める手立てが見つからない。
このままじゃ、本当にダイスケは殺されてしまう。
でも、今の俺たちにはそれを止める力は……無い。
「大丈夫だ。もう計算は済んだ……」
拳を握り締めるしかない俺の肩に、中村が手を置く。
「計算? 何の話だよ中村」
だが中村は俺の問いには答えず、ただ真っすぐに下野の元へと歩みを進める。
ってかまさかコイツ、この状況から、このクズ……じゃなくてダイスケを救う手を考えたとでもいうのか?
俺の考えを証明するかのように、落ち着いた足取りで下野の隣に立つ中村。
そして相変わらず媚びを売るような声で、下野さんに話しかけるのだった。
「落ち着いて下さい、下野さん。このままダイスケを殺しても、きっとシャロさんは真実の愛に気付けませんよ。なぜなら、彼女はまだダイスケを信じ切っているのですから。このままでは下野さんが悪者になってしまいますよ。なので、まずはシャロさんの前でダイスケの悪辣さを証明しないといけません」
「………………うおあああ。そうだぁ……でも、どうしたら……。僕は昔からぁぁ、考えるのは苦手でぇぇぇぇ。みんなに馬鹿にされて……でもシャロちゃんだけが僕に優しくしてくれて……。だから、だから僕は……彼女に全てを捧げたのに…………」
なんか、かわいそ過ぎるぞ、下野……いや、下野さん。
俺もこの凶悪顔のせいで色々あったから、他人事だと思えない。出来ることなら下野さんは、何の罪も犯させずに解放してあげたい。
「そこは任せてください、下野さん。俺が……いや、この魔法少女中村が上手くやってみせますから」
おお、さっきのテンパってた時とはえらい違うな、中村。かなり自信があるらしい。
何をやるつもりなのかはさっぱり分からないが、ここは任せてみてもいいかもしれない。
「下野さん、ダイスケに話があるんで、少しコイツの位置下げてもらってもいいですか?」
その声に下野さんが素直に従う。
触手に頭を掴まれたまま床に降ろされるダイスケ。その頬を、絶対零度の眼をした中村が思い切り掴み上げる。
「おい、ダイスケとやら。今までの話は聞いていたか?」
「ふひぃ、ふぁに? ふぁにが起こっふぇのォォォ!?」
「落ち着け、殺すぞ」
「ふぐぅ」
イケボの魔法少女に凄まれて、歪なひょっとこ顔にされたダイスケがえぐえぐ喘ぐ。
「いいかダイスケ、お前は今から俺の言う通りにしろ。さもなくばお前は死ぬ。今死ぬ。今日死ぬ。直ぐに死ぬ。分かったな?」
大の大人の顔面をアイアンクローしつつ、その耳元でドスを効かせる魔法少女姿の中村。
一部の特殊性癖を持つ紳士諸君には、どストライクしそうな絵面である。
「ふぁい、ふぁかりましたぁぁぁ!」
中村の脅しに、声にならない声を上げながら必死に頭を縦に振るダイスケ。
さしものダイスケも、中村の脅しが冗談ではないと理解できたのだろう。
その様子に満足したように笑みを浮かべた中村は、シャロに聞こえないくらいの声の大きさでダイスケに命を下す。
「よしいい子だ。じゃあダイスケ――――お前今すぐここで糞を漏らせ」
「ふぇ?」
「…………は?」
驚くダイスケと同時に俺も間抜けな声を漏らしてしまう。
って、え? 中村は何言ってんだ? うんこ漏らせ? は? へ? え?
「分からないのか? 要は、お前がそこのメイドに嫌われれば全てが丸く収まるんだよ。メイドがお前みたいなクズにベタ惚れのせいで、こんな事態になってるんだからな。それは分かるな?」
「ふぁ、ふぁい、しょれはわかりまふ」
「だから、今ここでお前は恐怖に慄きながら糞を漏らせ。そうすればメイドはお前に幻滅する。その後は、下野さんの金をギャンブルにつぎ込んだことをきっちり謝罪する。それですべてが丸く収まるんだ、それくらいは出来るだろ?」
「しょ、しょれくらいって、ウンコもらしぇなんて……しょんな……」
「それ以外に、お前の命が助かる術はない」
「で、でも、しょれは……」
「それが嫌なら、今すぐ、俺が殺してやろうか?」
「…………………ひぐ、がんばりまふ……」
ダイスケには泣きながら頷く以外の選択肢は残されていなかった。
――そして十分後、ダイスケの尊厳の喪失とともに、事件は全て丸く収まったのだった。
「ちょ、ダイスケーーーっ!?」
暴走魔法少女・下野の触手によって頭を掴まれ宙づりになっているダイスケ。
俺と中村が話している内に、ダイスケの命は面白い感じに風前の灯火と化していたのだった。
「待て、ちょっと待て。想定と違うぞ。土下座させて指の一~二本落とす方が、まだ全然マシな展開になってきてるんだけど!? 今まさに、首が一本落とされそうになってんだけど!?」
「これはこれで良いんじゃないか? ダイスケが死ねば、暴走魔法少女の溜飲も下がって、力も下がるだろッ!」
「韻踏んで上手いこと言ってんじゃねえ! ってか中村、実はお前もテンパってんだろ!」
「テンパってなどいない。このアパートに着いてから起こり得る展開、十五通りにおいてシミュレーションは済んでいる。対処方法も完璧だ。ただ……想定していた十五通り以外の展開が発生しているだけの話だ」
「だから、それをテンパってるって言うんじゃねぇの!?」
言い争いを始める俺たちをしり目に、焦点の定まらない目をした下野が機嫌よく笑い始める。
「うへ、うへへへ。ありがとうな、見ず知らずの魔法少女ぉぉぉぉ。お前達の協力のお陰で、コイツをぶっ殺せる。そしたらシャロちゃんも、きっと真実の愛に気付いてくれるよなぁぁ」
ダイスケの頭を掴んでいる触手に力を籠める下野。
その表情は、ほとんど理性の残っていない気味の悪い笑顔で一杯だった。
「つーか、勝手に共犯にするんじゃねえ。お前に協力とかしてねえからな!」
と叫んでは見たものの下野を止める手立てが見つからない。
このままじゃ、本当にダイスケは殺されてしまう。
でも、今の俺たちにはそれを止める力は……無い。
「大丈夫だ。もう計算は済んだ……」
拳を握り締めるしかない俺の肩に、中村が手を置く。
「計算? 何の話だよ中村」
だが中村は俺の問いには答えず、ただ真っすぐに下野の元へと歩みを進める。
ってかまさかコイツ、この状況から、このクズ……じゃなくてダイスケを救う手を考えたとでもいうのか?
俺の考えを証明するかのように、落ち着いた足取りで下野の隣に立つ中村。
そして相変わらず媚びを売るような声で、下野さんに話しかけるのだった。
「落ち着いて下さい、下野さん。このままダイスケを殺しても、きっとシャロさんは真実の愛に気付けませんよ。なぜなら、彼女はまだダイスケを信じ切っているのですから。このままでは下野さんが悪者になってしまいますよ。なので、まずはシャロさんの前でダイスケの悪辣さを証明しないといけません」
「………………うおあああ。そうだぁ……でも、どうしたら……。僕は昔からぁぁ、考えるのは苦手でぇぇぇぇ。みんなに馬鹿にされて……でもシャロちゃんだけが僕に優しくしてくれて……。だから、だから僕は……彼女に全てを捧げたのに…………」
なんか、かわいそ過ぎるぞ、下野……いや、下野さん。
俺もこの凶悪顔のせいで色々あったから、他人事だと思えない。出来ることなら下野さんは、何の罪も犯させずに解放してあげたい。
「そこは任せてください、下野さん。俺が……いや、この魔法少女中村が上手くやってみせますから」
おお、さっきのテンパってた時とはえらい違うな、中村。かなり自信があるらしい。
何をやるつもりなのかはさっぱり分からないが、ここは任せてみてもいいかもしれない。
「下野さん、ダイスケに話があるんで、少しコイツの位置下げてもらってもいいですか?」
その声に下野さんが素直に従う。
触手に頭を掴まれたまま床に降ろされるダイスケ。その頬を、絶対零度の眼をした中村が思い切り掴み上げる。
「おい、ダイスケとやら。今までの話は聞いていたか?」
「ふひぃ、ふぁに? ふぁにが起こっふぇのォォォ!?」
「落ち着け、殺すぞ」
「ふぐぅ」
イケボの魔法少女に凄まれて、歪なひょっとこ顔にされたダイスケがえぐえぐ喘ぐ。
「いいかダイスケ、お前は今から俺の言う通りにしろ。さもなくばお前は死ぬ。今死ぬ。今日死ぬ。直ぐに死ぬ。分かったな?」
大の大人の顔面をアイアンクローしつつ、その耳元でドスを効かせる魔法少女姿の中村。
一部の特殊性癖を持つ紳士諸君には、どストライクしそうな絵面である。
「ふぁい、ふぁかりましたぁぁぁ!」
中村の脅しに、声にならない声を上げながら必死に頭を縦に振るダイスケ。
さしものダイスケも、中村の脅しが冗談ではないと理解できたのだろう。
その様子に満足したように笑みを浮かべた中村は、シャロに聞こえないくらいの声の大きさでダイスケに命を下す。
「よしいい子だ。じゃあダイスケ――――お前今すぐここで糞を漏らせ」
「ふぇ?」
「…………は?」
驚くダイスケと同時に俺も間抜けな声を漏らしてしまう。
って、え? 中村は何言ってんだ? うんこ漏らせ? は? へ? え?
「分からないのか? 要は、お前がそこのメイドに嫌われれば全てが丸く収まるんだよ。メイドがお前みたいなクズにベタ惚れのせいで、こんな事態になってるんだからな。それは分かるな?」
「ふぁ、ふぁい、しょれはわかりまふ」
「だから、今ここでお前は恐怖に慄きながら糞を漏らせ。そうすればメイドはお前に幻滅する。その後は、下野さんの金をギャンブルにつぎ込んだことをきっちり謝罪する。それですべてが丸く収まるんだ、それくらいは出来るだろ?」
「しょ、しょれくらいって、ウンコもらしぇなんて……しょんな……」
「それ以外に、お前の命が助かる術はない」
「で、でも、しょれは……」
「それが嫌なら、今すぐ、俺が殺してやろうか?」
「…………………ひぐ、がんばりまふ……」
ダイスケには泣きながら頷く以外の選択肢は残されていなかった。
――そして十分後、ダイスケの尊厳の喪失とともに、事件は全て丸く収まったのだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
触らせないの
猫枕
恋愛
そりゃあ親が勝手に決めた婚約だもの。
受け入れられない気持ちがあるのは分かるけど、それってお互い様じゃない?
シーリアには生まれた時からの婚約者サイモンがいる。
幼少期はそれなりに良好な関係を築いていた二人だったが、成長するにつれサイモンはシーリアに冷たい態度を取るようになった。
学園に入学するとサイモンは人目を憚ることなく恋人リンダを連れ歩き、ベタベタするように。
そんなサイモンの様子を冷めた目で見ていたシーリアだったが、ある日偶然サイモンと彼の友人が立ち話ししているのを聞いてしまう。
「結婚してもリンダとの関係は続ける。
シーリアはダダでヤれる女」
心底気持ち悪いと思ったシーリアはサイモンとの婚約を解消して欲しいと父に願い出るが、毒親は相手にしない。
婚約解消が無理だと悟ったシーリアは
「指一本触らせずに離婚する」
ことを心に決める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる