2 / 16
第2話
しおりを挟む
ようやく夜が来た。仕事が終わるとすぐに帰宅し、お風呂も済ませて、ご飯も用意して、先生の帰りを待ち構えていた。が。
「遅い……遅すぎる……」
もう何時間待っただろうか。流石に待ちくたびれた。お腹もぐーぐー鳴っている。
お腹が空いては弱気になる。
(ご飯は待てない。そうだ、食べよう)
わたしは、半ばヤケクソな気分で、しっかりとご飯を食べた。
食後には歯磨きもしっかり済ませて、私はソファでぼーっとする。
お風呂もご飯も歯磨きも終われば、あとは眠気の出番なのは当然だろう。
せめて先生が帰ってくるまでは……と思うのに、私は何度も眠りに引き摺り込まれそうになる。
すぴー……はっ!……すぴー……んがっ!すぴー…………。
それを繰り返した末、わたしの意識は完全に眠りに落ちた。
***
「……はっ!!!」
わたしは急に覚醒し、ガバッと上体を起こす。と、体の上にお気に入りの肌掛けがかかっているのに気づいた。
「あれ……これ……」
自分で持ってきた記憶はない。と言う事は。わたしは、待っていたひとの姿を探すが、この部屋には見当たらない。
時間も、次の日になるにはまだまだ時間がある。
(よろしい……ならば捜索だ)
わたしは、お気に入りの肌掛けを羽織りながら、先生の部屋に向かった。
***
先生の部屋の扉をノックすると、すぐに返事が返ってきた。
わたしは扉を開いて中を覗き込むと、仕事をしている様子の先生が見えた。
「……帰りが遅かったの、忙しかったからなんですか?」
「ああ……色々とね。でも、君が起きたなら、もう今日はやめておこう」
「いいですよ……わたしにお構いなく……」
仕事の邪魔はしたくない。そう思って、そっと扉を閉めようとしたわたしに、先生は逆らえない一言を言った。
「おいで、ログ」
「…………はーい」
わたしは諦めて、部屋の中に入る。一緒の家に暮らしてはいるけれど、あまりお互いの部屋に入る事はない。慣れない場所に、少し緊張してしまい、思わず、羽織っている肌掛けをぎゅっと握りしめた。
先生は、わたしのそばまで来ると、手を引いてベッドの横まで連れてくる。わたしの肌掛けを取って、近くの椅子の背もたれにかけてしまった。
(ああ、わたしのたいせつな子が……)
体を包むぬくもりがなくなってしまい、つい寂しくなってしまう。
ベッドに深く腰掛けた先生は、わたしをその前に座らせると、後ろから腕を回して、わたしをぎゅっとする。
「待たせてすまなかった」
「いいえ……わたしだけの先生じゃないですから、仕方ないでしょ?……もう遅いし、早く休んだ方がいいですよ」
気を遣って言うと、ふふっと笑われた。
「大丈夫。明日こっそりサボるよ」
「……フラスさんに怒られても知りませんよ?」
先生の秘書のフラスさんは、いつもは優しいが、怒る時はとても怖い……らしい。わたしにはいつも優しいのに。
「そうだな、それは怖いな」
「ふふっ、先生の周りは、強い女のひとばっかりですからね」
秘書のフラスさんに、わたしの大先輩のクライアさん……ふたりの顔が頭に浮かぶ。この2人は女性陣の中でも代表的な存在である。
「そうだな……頼もしい限りだよ。だから余計に、ログが幼く見えてしまうんだろうね」
「もう、それじゃいつまで経っても子供扱いのままじゃないですか……」
自分の努力など永遠に実らない気がする。思わずがくりと項垂れてしまった。
「ふふ、そうだね。いっそこのまま、ずっと同じ時間に閉じ込めて、子供のままでいてほしい気もするな」
「やめてください。先生なら、そんな事も出来ちゃいそうに聞こえて怖いですよ」
そうだ。先生は、人間だったわたしを魔族にしてしまえるくらいの力を持っている。機嫌を損ねれば最後、とんでもない目に遭わされるのではないだろうか。
「ま、さすがにそれは無理だけどね。……しかし、ログ、何で敬語で話してるんだい?」
今更な疑問を投げかけられ、私は正直に答える。
「……何だか、気を抜いたら頭からガブっといかれそうな、嫌な予感がするので」
途端に先生は笑い出した。
「ははっ!きっと、本能で感じ取ってるのかな?」
そう言うやいなや、先生はわたしの耳を噛んできた。
「ぎゃあ!!!な、何するんですか!?」
あまりのことにわたしが絶叫すると、先生はまた楽しそうに笑った。
「もう忘れたのかい?誰も触れない場所に触れるんだ……って」
「耳!?耳は誰でも触れますけど!?いや、噛むのは違うのかなあ!?」
「あとは……こう」
そう言われた直後、次は耳の後ろを舐められてしまう。
変な感覚に、背筋がゾクゾクする。
「あっ!やだ!先生のバカバカ!なんてことを!」
先生から離れようとするが、きつく抱きしめられてしまい逃げられない。
「さて、次はどこにしようか」
「た……食べられるう……」
悪ノリが過ぎる!わたしは目をぎゅっとつぶって耐えるしか出来ない。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。姉様も言ってたんだろう?私なら、辛くならないように教えられるって」
「そ……そうですけど……」
一体、わたしはどうなってしまうのか。確実に、嵐の予感しかしない。
「遅い……遅すぎる……」
もう何時間待っただろうか。流石に待ちくたびれた。お腹もぐーぐー鳴っている。
お腹が空いては弱気になる。
(ご飯は待てない。そうだ、食べよう)
わたしは、半ばヤケクソな気分で、しっかりとご飯を食べた。
食後には歯磨きもしっかり済ませて、私はソファでぼーっとする。
お風呂もご飯も歯磨きも終われば、あとは眠気の出番なのは当然だろう。
せめて先生が帰ってくるまでは……と思うのに、私は何度も眠りに引き摺り込まれそうになる。
すぴー……はっ!……すぴー……んがっ!すぴー…………。
それを繰り返した末、わたしの意識は完全に眠りに落ちた。
***
「……はっ!!!」
わたしは急に覚醒し、ガバッと上体を起こす。と、体の上にお気に入りの肌掛けがかかっているのに気づいた。
「あれ……これ……」
自分で持ってきた記憶はない。と言う事は。わたしは、待っていたひとの姿を探すが、この部屋には見当たらない。
時間も、次の日になるにはまだまだ時間がある。
(よろしい……ならば捜索だ)
わたしは、お気に入りの肌掛けを羽織りながら、先生の部屋に向かった。
***
先生の部屋の扉をノックすると、すぐに返事が返ってきた。
わたしは扉を開いて中を覗き込むと、仕事をしている様子の先生が見えた。
「……帰りが遅かったの、忙しかったからなんですか?」
「ああ……色々とね。でも、君が起きたなら、もう今日はやめておこう」
「いいですよ……わたしにお構いなく……」
仕事の邪魔はしたくない。そう思って、そっと扉を閉めようとしたわたしに、先生は逆らえない一言を言った。
「おいで、ログ」
「…………はーい」
わたしは諦めて、部屋の中に入る。一緒の家に暮らしてはいるけれど、あまりお互いの部屋に入る事はない。慣れない場所に、少し緊張してしまい、思わず、羽織っている肌掛けをぎゅっと握りしめた。
先生は、わたしのそばまで来ると、手を引いてベッドの横まで連れてくる。わたしの肌掛けを取って、近くの椅子の背もたれにかけてしまった。
(ああ、わたしのたいせつな子が……)
体を包むぬくもりがなくなってしまい、つい寂しくなってしまう。
ベッドに深く腰掛けた先生は、わたしをその前に座らせると、後ろから腕を回して、わたしをぎゅっとする。
「待たせてすまなかった」
「いいえ……わたしだけの先生じゃないですから、仕方ないでしょ?……もう遅いし、早く休んだ方がいいですよ」
気を遣って言うと、ふふっと笑われた。
「大丈夫。明日こっそりサボるよ」
「……フラスさんに怒られても知りませんよ?」
先生の秘書のフラスさんは、いつもは優しいが、怒る時はとても怖い……らしい。わたしにはいつも優しいのに。
「そうだな、それは怖いな」
「ふふっ、先生の周りは、強い女のひとばっかりですからね」
秘書のフラスさんに、わたしの大先輩のクライアさん……ふたりの顔が頭に浮かぶ。この2人は女性陣の中でも代表的な存在である。
「そうだな……頼もしい限りだよ。だから余計に、ログが幼く見えてしまうんだろうね」
「もう、それじゃいつまで経っても子供扱いのままじゃないですか……」
自分の努力など永遠に実らない気がする。思わずがくりと項垂れてしまった。
「ふふ、そうだね。いっそこのまま、ずっと同じ時間に閉じ込めて、子供のままでいてほしい気もするな」
「やめてください。先生なら、そんな事も出来ちゃいそうに聞こえて怖いですよ」
そうだ。先生は、人間だったわたしを魔族にしてしまえるくらいの力を持っている。機嫌を損ねれば最後、とんでもない目に遭わされるのではないだろうか。
「ま、さすがにそれは無理だけどね。……しかし、ログ、何で敬語で話してるんだい?」
今更な疑問を投げかけられ、私は正直に答える。
「……何だか、気を抜いたら頭からガブっといかれそうな、嫌な予感がするので」
途端に先生は笑い出した。
「ははっ!きっと、本能で感じ取ってるのかな?」
そう言うやいなや、先生はわたしの耳を噛んできた。
「ぎゃあ!!!な、何するんですか!?」
あまりのことにわたしが絶叫すると、先生はまた楽しそうに笑った。
「もう忘れたのかい?誰も触れない場所に触れるんだ……って」
「耳!?耳は誰でも触れますけど!?いや、噛むのは違うのかなあ!?」
「あとは……こう」
そう言われた直後、次は耳の後ろを舐められてしまう。
変な感覚に、背筋がゾクゾクする。
「あっ!やだ!先生のバカバカ!なんてことを!」
先生から離れようとするが、きつく抱きしめられてしまい逃げられない。
「さて、次はどこにしようか」
「た……食べられるう……」
悪ノリが過ぎる!わたしは目をぎゅっとつぶって耐えるしか出来ない。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。姉様も言ってたんだろう?私なら、辛くならないように教えられるって」
「そ……そうですけど……」
一体、わたしはどうなってしまうのか。確実に、嵐の予感しかしない。
10
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
腹黒王子は、食べ頃を待っている
月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。
〈短編版〉騎士団長との淫らな秘め事~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~
二階堂まや
恋愛
王国の第三王女ルイーセは、女きょうだいばかりの環境で育ったせいで男が苦手であった。そんな彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、逞しく威風堂々とした風貌の彼ともどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。
そんなある日、ルイーセは森に散歩に行き、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。そしてそれは、彼女にとって性の目覚めのきっかけとなってしまったのだった。
+性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が全面協力して最終的にらぶえっちするというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる