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第8話 謝罪
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「……で?何で俺が同席させられてるんだ?」
庭の片隅にある東屋に、私とフォールス、そしてスクルさんが向かい合って座っている。
無理矢理連れてこられたスクルさんは、訳がわからないと言った様子。
そんなスクルさんに、フォールスは意外な頼み事をした。
「僕がもし彼女を傷つけるような事を言ったら、殴ってくれ」
「殴る?……まあ、お前がいいって言うなら」
スクルさんはそう言うと、立ち上がって、私たちから少し離れたところに椅子を置き、座る。
「アステさん、俺はいないものと思ってくれたらいいから。何かあった時だけ、俺に遠慮なく言ってください」
「はい……お気遣い、ありがとうございます」
ふたりきりではなく、味方してくれる方がいる事にほっとしつつ、私はフォールスに向き直った。
彼は私をしっかり見ると、口を開いた。
「あれからずっと、君に会う機会を作りたいと思っていたんだけど、きっかけがなくて。ミスオーガンザから招待が来てよかったよ」
「そう……」
私も、結果的にではあるけれど、ここで会えたのはよかったと思う。彼に対する誤解……ではないけれど、今の彼が昔のままではないと知れてよかった。
「この前会った時に言おうと思っていたんだ……昔のこと、本当に申し訳ないと思ってる。君に対して、今後一切あんな失礼な発言はしないと誓う」
(……本当だ。本当に、彼が謝っている)
スクルさんの言う通りだった。ただただ驚く。
彼の口から謝罪の言葉が出るなんて、小さい頃の私に言ったら絶対信じてもらえないだろう。
「でも、許して欲しいなんて決して言わない。君が僕を許せると思ってくれるまで、いつまでも待つつもりだ。……いつか君が、僕を見ても眉間に皺がよらないようになるまで、僕にできる事があったらなんでもする」
慌てて手で額を触る。やっぱり、彼を見ると無意識にそうなってしまうのね。
「あと、もうひとつ。ミスオーガンザから、君を妻にしてくれと言われた。その件は知ってる?」
「……ええ」
そうか、あの時母は、彼にその話をしていたのか……脅すようなことまで言って。
「それで、君の気持ちは、どうなの?」
「私の、気持ち?」
結婚はできない、そう断りの言葉を言われるのだと思っていた。それなのになぜ、私の気持ちを聞くのだろう。
「もし、結婚しろと無理強いされているなら、僕がきちんとミスオーガンザに断りを入れる」
「……そんなこと、できるの?」
「できる。君が嫌がることはしたくない」
「いえ、そうじゃなくて……あなた、母に脅されているんじゃないの?」
それだけは、はっきりさせないといけない。母が私のためを思ってした事だとしても、脅すのだけは駄目だ。
「…………それは」
「あの時、あなたと母の会話を少し聞いていたわ。あれは、あなたを脅しているようしか聞こえなかったわ。あなた、母の頼みを断ったら、大変な目にあってしまうのではないの?」
私の問いに、フォールスはしばらく考え込んでしまう。長い沈黙が続き、私は両手を強く握りしめて不安を紛らわす。
そして、ようやく彼は口を開いた。
「それに関しては……どうにかする。だから気にしないでほしい。僕は、君の気持ちを最優先する」
「本当に?どうにかできるの?……そうだわ、私から母に言ってもいい。母のやり方は卑怯よ」
「大丈夫、君の手は煩わせない。僕に考えがある。……スクル」
フォールスは、スクルさんの方に体を向け呼びかける。
「はいよ。何だ?」
「この件、あの方に報告しておいてほしい」
「分かったよ。言われなくてもそのつもりだったし」
「ありがとう。いつもすまない」
「いいって。これも仕事だから」
あの方……一体誰だろう。でも、深入りしない方がよさそう。
フォールスは再び、私の方に向き直る。
「ごめんアステ、話の腰を折ってしまった。話を元に戻そう……君は、どうしたい?」
庭の片隅にある東屋に、私とフォールス、そしてスクルさんが向かい合って座っている。
無理矢理連れてこられたスクルさんは、訳がわからないと言った様子。
そんなスクルさんに、フォールスは意外な頼み事をした。
「僕がもし彼女を傷つけるような事を言ったら、殴ってくれ」
「殴る?……まあ、お前がいいって言うなら」
スクルさんはそう言うと、立ち上がって、私たちから少し離れたところに椅子を置き、座る。
「アステさん、俺はいないものと思ってくれたらいいから。何かあった時だけ、俺に遠慮なく言ってください」
「はい……お気遣い、ありがとうございます」
ふたりきりではなく、味方してくれる方がいる事にほっとしつつ、私はフォールスに向き直った。
彼は私をしっかり見ると、口を開いた。
「あれからずっと、君に会う機会を作りたいと思っていたんだけど、きっかけがなくて。ミスオーガンザから招待が来てよかったよ」
「そう……」
私も、結果的にではあるけれど、ここで会えたのはよかったと思う。彼に対する誤解……ではないけれど、今の彼が昔のままではないと知れてよかった。
「この前会った時に言おうと思っていたんだ……昔のこと、本当に申し訳ないと思ってる。君に対して、今後一切あんな失礼な発言はしないと誓う」
(……本当だ。本当に、彼が謝っている)
スクルさんの言う通りだった。ただただ驚く。
彼の口から謝罪の言葉が出るなんて、小さい頃の私に言ったら絶対信じてもらえないだろう。
「でも、許して欲しいなんて決して言わない。君が僕を許せると思ってくれるまで、いつまでも待つつもりだ。……いつか君が、僕を見ても眉間に皺がよらないようになるまで、僕にできる事があったらなんでもする」
慌てて手で額を触る。やっぱり、彼を見ると無意識にそうなってしまうのね。
「あと、もうひとつ。ミスオーガンザから、君を妻にしてくれと言われた。その件は知ってる?」
「……ええ」
そうか、あの時母は、彼にその話をしていたのか……脅すようなことまで言って。
「それで、君の気持ちは、どうなの?」
「私の、気持ち?」
結婚はできない、そう断りの言葉を言われるのだと思っていた。それなのになぜ、私の気持ちを聞くのだろう。
「もし、結婚しろと無理強いされているなら、僕がきちんとミスオーガンザに断りを入れる」
「……そんなこと、できるの?」
「できる。君が嫌がることはしたくない」
「いえ、そうじゃなくて……あなた、母に脅されているんじゃないの?」
それだけは、はっきりさせないといけない。母が私のためを思ってした事だとしても、脅すのだけは駄目だ。
「…………それは」
「あの時、あなたと母の会話を少し聞いていたわ。あれは、あなたを脅しているようしか聞こえなかったわ。あなた、母の頼みを断ったら、大変な目にあってしまうのではないの?」
私の問いに、フォールスはしばらく考え込んでしまう。長い沈黙が続き、私は両手を強く握りしめて不安を紛らわす。
そして、ようやく彼は口を開いた。
「それに関しては……どうにかする。だから気にしないでほしい。僕は、君の気持ちを最優先する」
「本当に?どうにかできるの?……そうだわ、私から母に言ってもいい。母のやり方は卑怯よ」
「大丈夫、君の手は煩わせない。僕に考えがある。……スクル」
フォールスは、スクルさんの方に体を向け呼びかける。
「はいよ。何だ?」
「この件、あの方に報告しておいてほしい」
「分かったよ。言われなくてもそのつもりだったし」
「ありがとう。いつもすまない」
「いいって。これも仕事だから」
あの方……一体誰だろう。でも、深入りしない方がよさそう。
フォールスは再び、私の方に向き直る。
「ごめんアステ、話の腰を折ってしまった。話を元に戻そう……君は、どうしたい?」
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