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第45話『邪推』
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井戸水を汲み直し、二度目の薬草洗いが終わりかかると、ロッドが家から出てきた。ちらとレヴィンを見たが、すぐに目をそらした。
クオンが見送りに出てきたのを見て、二人に背を向けた。
恋慕う黒い瞳など見たくなかった。
洗い桶の水を薬草畑に撒いてやり過ごす。手ですくって、水滴を散らす。薬草を洗い終わったらいつもしていることだ。終わる頃にはロッドの姿もないだろう。
桶の水がなくなり、振り返ったら、クオンが腕組みをして扉にもたれかかっていた。
ずっとこちらを見ていたようだ。目が合うと、大きなため息を吐かれた。
「おまえなあ。変な気を遣うのやめろ」
「つかってない」
「うそつけ」
黒い瞳が射貫いてくる。レヴィンが黙りこくったので、クオンは組んでいた腕を解いて、腰に手を当てた。
「俺が気まずいんだよ。次からやるなよ」
「………………」
「出入り禁止にするぞ」
「……わかった」
不承不承、返事をするとクオンは気分を変えるように明るく言った。
「お茶煎れるから入れ」
クオンは玄関扉を開け放した。レヴィンは洗った薬草を二階に持って上がった。
昨日干した薬草の横に並べて置く。三日前に干した薬草はまだ水気が抜けきっていなかったので、そのままにして一階に下りた。
見計らったかのように、クオンがカップに香草茶を入れてくれた。礼を言って口をつける。とたん、顔をしかめた。
「いつもと違う。酸っぱい」
文句を垂れるような口調になった。クオンは澄ました顔で、
「なんの手も入れてないやつだ。本来の味。たまにはいいだろ」
と言った。
クオンは気にせず飲んでいたが、レヴィンはやはりクオンが配合したお茶の方が飲みやすくて好きだと思った。
入れてもらった分は飲まなければ、と無理やり喉に通していると、クオンが「あのさ」と言った。
「明後日から二、三日、家を空けるから、来週まで来なくていいよ」
酸味の強い香草茶を飲み干して、カップを置く。
「どこに行くんだ?」
「この時期に咲く珍しい薬草があるんだ。それを採りに行ってくる」
「俺も行きたい」
間髪入れずに言うと、クオンはちょっと困った顔をした。レヴィンはあごを引いた。
「……ロッドと行くのか?」
レヴィンが邪推すると、クオンは「そうじゃない」と首を振った。
「野宿するし、夜は寒いんだ。山道できついから、おすすめしない」
そういうことか、とホッとする。
「だったらなおさらだ。二人で行ったら、きっと楽しい」
遠足気分で言い放つとクオンは目を見張った。そして、くすりと笑った。
「そうだな。なら、お供をお願いしようか」
黒い瞳の柔らかい笑顔に、レヴィンはまた見惚れてしまうのだった。
クオンが見送りに出てきたのを見て、二人に背を向けた。
恋慕う黒い瞳など見たくなかった。
洗い桶の水を薬草畑に撒いてやり過ごす。手ですくって、水滴を散らす。薬草を洗い終わったらいつもしていることだ。終わる頃にはロッドの姿もないだろう。
桶の水がなくなり、振り返ったら、クオンが腕組みをして扉にもたれかかっていた。
ずっとこちらを見ていたようだ。目が合うと、大きなため息を吐かれた。
「おまえなあ。変な気を遣うのやめろ」
「つかってない」
「うそつけ」
黒い瞳が射貫いてくる。レヴィンが黙りこくったので、クオンは組んでいた腕を解いて、腰に手を当てた。
「俺が気まずいんだよ。次からやるなよ」
「………………」
「出入り禁止にするぞ」
「……わかった」
不承不承、返事をするとクオンは気分を変えるように明るく言った。
「お茶煎れるから入れ」
クオンは玄関扉を開け放した。レヴィンは洗った薬草を二階に持って上がった。
昨日干した薬草の横に並べて置く。三日前に干した薬草はまだ水気が抜けきっていなかったので、そのままにして一階に下りた。
見計らったかのように、クオンがカップに香草茶を入れてくれた。礼を言って口をつける。とたん、顔をしかめた。
「いつもと違う。酸っぱい」
文句を垂れるような口調になった。クオンは澄ました顔で、
「なんの手も入れてないやつだ。本来の味。たまにはいいだろ」
と言った。
クオンは気にせず飲んでいたが、レヴィンはやはりクオンが配合したお茶の方が飲みやすくて好きだと思った。
入れてもらった分は飲まなければ、と無理やり喉に通していると、クオンが「あのさ」と言った。
「明後日から二、三日、家を空けるから、来週まで来なくていいよ」
酸味の強い香草茶を飲み干して、カップを置く。
「どこに行くんだ?」
「この時期に咲く珍しい薬草があるんだ。それを採りに行ってくる」
「俺も行きたい」
間髪入れずに言うと、クオンはちょっと困った顔をした。レヴィンはあごを引いた。
「……ロッドと行くのか?」
レヴィンが邪推すると、クオンは「そうじゃない」と首を振った。
「野宿するし、夜は寒いんだ。山道できついから、おすすめしない」
そういうことか、とホッとする。
「だったらなおさらだ。二人で行ったら、きっと楽しい」
遠足気分で言い放つとクオンは目を見張った。そして、くすりと笑った。
「そうだな。なら、お供をお願いしようか」
黒い瞳の柔らかい笑顔に、レヴィンはまた見惚れてしまうのだった。
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