《瞑想小説 狩人》

瞑想

文字の大きさ
上 下
512 / 512
美姫の場合

美姫の場合68⃝

しおりを挟む

:::::::::::

 ぼんやり。ぼんやり。ぼんやりとした意識の中で淑女は頷いた。美姫は首を縦振り三度。在狩の反作用たる酸度。老婆はといえば。『甘い。甘い。甘いねえ。』決め台詞(ぜりふ)をシェルフに置くと盲目滝の中に彼女の洪水を仕舞い込む。

 ぼんやり。ぼんやり。ぼんやりとする。脳内に煙が漂っている。赫色のもの。橙のもの。黄色から緑。緑から薄ひ青。薄ひ青は「薄ら笑い」を経由して濃紺へ。濃紺は知恵の称号として紫と手を結び契る。薄ら笑いは老婆のもので/源池由来(げんちゆらい)の蜂房列車(ほうぼうれっしゃ)に出車を許す車掌の合図。

 「出発進行。同列車の行先は老婆よ。貴女の手に委ねられた。ところで切符を拝見。美姫さん。美姫さん。ショッキング・ピンクの切符を拝見。あれ。あれ。あれ。お持ちでないのならば戸籍上の夫殿に購入していただかないと・・。困りましたな。」

 「まあ代替案はありますよ。ミッシング・リンク内のファッキング・ホールに苗を植えれば良いのです。楓色(かえでいろ)の栞(しおり)を愛しい人に送れば良いのです。無駄だと知りながら。穴という穴がバッシング・ゾーンとして満たされる迄。」

 先行して射精された白濁液。老婆の差し出すグラス成分表示。何合目まで登っただろうか。鬼道に乗った師走よ。師馳よ。極月の明星よ。暴走列車の止まぬ汽笛を聞け。

 マイナス6号室。北壁にエアー・コンディショナーが在り24℃の「冷房」に設定されている。南壁にも同様の機械が在る。対角線で存在を誇示する其れは24℃の「暖房」として稼働しており/周波数を混濁させ/コンダクターの存在を否定し/場の存在を不確かなものとして確定する。

 機器は嬉々として稼働する。霧生産の桐生さんといふ架空の人物。彼は希硫酸と同音異義語であることを誇らしく思い胸を張る。思い切り。思い切り。小胸筋と大胸筋の境目が不明瞭になる程。美姫を御覧。ベッド上の緊縛ゑ図を御覧。キャミソール越しに角度をつけた腰骨を御覧。

 『ああ…あ…』美姫の唇が少し開く。好機と見る老婆。皺の奥で爛々と光る虹彩。鼻の端(はな)にて荒い呼吸一息。傍受できぬ音源の左右差異。

 マイナス6号室。当方の東方ではエアー・コンディショナーが夕餉を貪っている。原罪及び現罪を好み喰らう獣とともに。同機械は温度を無視して「送風」の設定とされている。生傷の内部に至り飽和酸素を舐め尽くす為。肺循環の末端に於いてPMの宴を邪魔する為。同瞬間に再春館の来訪者は居るのだろうか。春売娘(はるうりむすめ)に会いにおいで。な。春売(しゅんばい)/旬梅(しゅんばい)/駿馬位(しゅんばい)で交わろうぜ。ねえ旦那。御召し物からして高貴な身分と御見受け致しますが如何に。

 『ああ…ああ…』良い声で鳴くでしょう。『ああ…だめ…』良い請(こ)え具合でしょう。『い…や…』良い越具合(こえぐあい)でも御座いますぞ。そのやうに調教済で御座ひます。貴方の自尊心を満たす為に「せっせ」「せっせ」「せっせ」と御奉仕も致します。令和五年の荷物は此処で降ろしては如何。祭りが必要なのですな。特に性の盛んな男性にとっては。

 『あ…あ…』供物となる緊縛姫に水を。『あ…あ…』愛撫ならぬ哀撫に咽ぶ例祭に水を与えましょう。マイナス6号室。西方のエアー・コンディショナーは張型に過ぎず。根本(こんぽん)の氣を持たぬ。製本(せいほん)の機を持たぬ。切れぬ啖呵と切れぬ短歌を混ぜて「見(けん)」の位置をとる。『甘い。甘い。甘いねえ。美姫。降下障害をもたらす逆付けのロード・ストランドのように甘いねえ。』老婆は笑いながらグラスの内容物を口に運ぶ。

::::::::::
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話

mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。 クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。 友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

自衛官、異世界に墜落する

フレカレディカ
ファンタジー
ある日、航空自衛隊特殊任務部隊所属の元陸上自衛隊特殊作戦部隊所属の『暁神楽(あかつきかぐら)』が、乗っていた輸送機にどこからか飛んできたミサイルが当たり墜落してしまった。だが、墜落した先は異世界だった!暁はそこから新しくできた仲間と共に生活していくこととなった・・・ 現代軍隊×異世界ファンタジー!!! ※この作品は、長年デスクワークの私が現役の頃の記憶をひねり、思い出して趣味で制作しております。至らない点などがございましたら、教えて頂ければ嬉しいです。

お尻を叩かれたあと、○○もお仕置きされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*) 鏡の前でお尻を叩かれながらイかされたあと、ベッドに運ばれた女の子が、イかせて欲しいと泣いちゃうぐらい優しく触られて。それならと、自分でローターに○○を押し付けさせられるお話しです。

転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮
ファンタジー
★この作品は書籍化及びコミカライズしています。 神様のせいでこの世界に落ちてきてしまった私は、いろいろと話し合ったりしてこの世界に馴染むような格好と知識を授かり、危ないからと神様が目的地の手前まで送ってくれた。 職業は【薬師】。私がハーブなどの知識が多少あったことと、その世界と地球の名前が一緒だったこと、もともと数が少ないことから、職業は【薬師】にしてくれたらしい。 神様にもらったものを握り締め、ドキドキしながらも国境を無事に越え、街でひと悶着あったから買い物だけしてその街を出た。 街道を歩いている途中で、魔神族が治める国の王都に帰るという魔神族の騎士と出会い、それが縁で、王都に住むようになる。 薬を作ったり、ダンジョンに潜ったり、トラブルに巻き込まれたり、冒険者と仲良くなったりしながら、秘密があってそれを話せないヒロインと、ヒロインに一目惚れした騎士の恋愛話がたまーに入る、転移(転生)したヒロインのお話。

料理人がいく!

八神
ファンタジー
ある世界に天才料理人がいた。 ↓ 神にその腕を認められる。 ↓ なんやかんや異世界に飛ばされた。 ↓ ソコはレベルやステータスがあり、HPやMPが見える世界。 ↓ ソコの食材を使った料理を極めんとする事10年。 ↓ 主人公の住んでる山が戦場になる。 ↓ 物語が始まった。

処理中です...