《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合㊶

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 2つ在る穴のうち後方に位置するものが侵食される。具体的に言うならば『同付近に点在する毛が剃り落とされる』という意味になる。彼女は弓になりたいと願い脊柱を反らせようとするが無駄だった。背中は設置された高級なマットに接地しており、上方に掲げられた両手は緊縛縄の虜となっている。

 両足についても同様であり鉄パイプのやうな模様のない棒に括り付けられている。完全緊縛主義の彼等にしてはお馴染みの状況。彼女にとっては初めての調教。恥辱のアーサナが展開される。穴達が上げる悲鳴。救いの手を求めている。高層マンションの地階は窓がない特殊構造だ。大きな声を上げてもいいんだぜ。

 声を上げてもいいんだぜ。日々のストレスが溜まっているんだろう。奥さん。本当の肉に成りなよ。快楽を貪る準備をしなよ。涅槃は其処に在るかも識れない。情報の渦に飲み込まれる毎日は辛かろう。『俺たちに』『飼われている間は』『身体だけになっていればいいのだ』そんな言葉を掛けれられるとともに身体が少しずつ軽くもなっていく。不思議な感覚。

『葉/葉/葉』
 彼女は身悶える。

『葉/葉/葉』
 身体を捩(よじ)る。時刻は不明。

『葉/葉/葉』
 長針が動きを止める

『葉/葉/葉』
 剃毛時間は圧縮布団のやうで

『葉/葉/葉』
 接触回避を許さぬ獰猛な猛獣

『葉/葉/葉』
 脳内麻薬は円形に広がっており

『葉/葉/葉』
 松果体まで取り憑いてしまふ

『葉/葉/葉』
 時折,強要される松葉の口吻

『葉/葉/葉』
 もうこれ以上、飲めませぬ

『葉/葉/葉』
 彼女はそう言った。目には涙

『葉/葉/葉』
 涙粒が彼等に通じる筈もなく

『葉/葉/葉』
 一本。また一本。そしてまた。

『葉/葉/葉』
 剃刀の餌食となり常世から失せ

『葉/葉/葉』
 戻れぬ母体と母胎に手紙を書く

 放浪野郎は分不相応な鐘を手に入れる。宗徒不明瞭な金を手に入れる。銀色のものは金色ものよりも価値を持ち高値で売買されたという。奴隷身分少女の落札儀式に集客された男達はみな満足げな表情と高価な首飾りを身に着けている。俺には其れが鉄鎖(チェインチョーカー)にしか見えず首を撚(ひね)る所作。解毒が必要だ。解読が必要だ。例の本を持ってこい。零(れい)について詳細に記した本だ。空(くう)について見事な解読をしたあの本だ。みんな知っているあの本だ。

 放浪野郎は賞味期限について尋ねてみる。『此のグルテンってやつはそんなにも良いのかい』商業主義の奴隷市場では同物体が出回っている。正体を明かせよ。小帯(しょうたい)を外せよ。生鯛(しょうたい)ではあるまい。正躰を見せろよ。氣分次第で其の素っ首へし折ってやる。

 回答はこうだった。『嗚呼。此れは悪魔の手先が発明した性根の腐った栄養剤です。奴隷を飼い慣らすにはもってこいの物体なんですな。半日しか保たぬものに永遠に近い防腐処置を施すのです。』放浪者は何となく其の存在を知っており…一切の価値を認めなかった。一切口にする事をしなかった。あんなにも空腹であった幼少期にも。それは後に功を奏する出来事と幸運を引き寄せる。まあ。どうでもいい話だが。

『阿/阿/阿』
 杖を無くした魔法使いのよう

『阿/阿/阿』
 千寿閣に連れて行って欲しい

『阿/阿/阿』
 無毛地と智が等量混在する場所

『阿/阿/阿』
 其処で此の汚れを落としたい

『阿/阿/阿』
 同作業に業(カルマ)が削がれ

『阿/阿/阿』
 涅槃道に綺麗な華が咲く

『阿/阿/阿』
 緑の華を中心とした花畑

『阿/阿/阿』
 薄青と黄色の混合色の樹々

『阿/阿/阿』
 濃紺と橙は御結婚の前夜

『阿/阿/阿』
 同前夜には定例儀式がある

『阿/阿/阿』
 美姫に施される飛鷲(ひじゅ)と同等の

『阿/阿/阿』
 剃毛確認作業だ。ではまた明日。

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