《瞑想小説 狩人》

瞑想

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美姫の場合

美姫の場合㉞

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 私…彼女。つまり部屋の南西端で痰にまみれた収支作業に終始する女。胸は少女そのもの。膨らみ加減は下限に近く包囲網の縄目が滑る。統べる。更には辷(すべ)る。御主人様は歪な笑み。四名の配下たる御仁は私の消氣(しょうき)の妾妃(しょうき)に次の企てを加える準備着々。

 私…彼女。全裸に等しい半裸は胸元までを男性陣に晒した憐れな踊子(ダンサー)。巨大癌(ヒュージキャンサー)の存在に陥落した城門を見分する為に指先が踊る。私の胸から腰を。腰から更に下方を。用済みの衣類は着物たる名前を亡くしてしまふ。其れは絹。絹よりも鬼怒。絹というよりも氣無なる詩旡にして盤上の本歩。嚥下出来ませぬ。嚥下出来ませぬ。此のたうな鵺の絵図を飲み込めませぬ。私は片足全部を涅槃に浸けた状態の悪足掻き。


恥の音階はアルデンテ

恥辱と汚辱の聡明淑女

日程の合わぬ約束の束

文面開花の音が弾けてその後

得たものと引き換えに

失った約束の
地(ち)と知(ち)と智(ち)


 私…彼女は狸を依り代にして狐にすり替わるのです。銀色の文様を付した鋭角を持つ剃刀が準備される。次なる晩具(ばんぐ)の登場といふ訳で御座います。『じょり』『じょり』『じょり』数回/切れ味を確認された銀色の波は太平洋の平和条項にすら刻み目を挿れる。※剃り手の階級にも依るとは思うがとの筆者の密かな思いを此処に伏しておく※。着物といふ見事な日本美の象徴体は帯知らずの絹ずれと成り下がり/恩知らずな布切れの残骸として横たわるのみ。憐れ也。憐れ也。そして。見事也。


一寸先は闇
帳の降りた漆黒の色

二寸釘の
打ちつけられる音がする

三面鏡のうち
どれが正体なのだろう

四面楚歌を憐れむ歌
それは『赤蜻蛉』

五免なさいと
垂れる頭(こうべ)に頭重感

六道輪廻の道ゆき。
其れは険しく激しく

七難八苦を極めると
論じる教授が居る

八寒地獄に落とされるのは
八方美人の運命

九牛一毛すら
剃り落とされ餌にされる天命

十全十美の虜
完全なものを卑下する企ての夜

百伶百俐の淑女を
貶(おとし)めるのは甘美

千辛万苦を舐める
性(さが)を眺め奉(たてまつ)る

万世不易なるものなど
ないと心得よ


 『参ろうか』
 ハートのクイーン

 『頃合いだな』
 スペードのジャック

 『妾妃の消氣に乗じて』
 倶楽部のエース

 『淫靡なる宵に奏でやう』
 ダイヤモンドのキング


 彼女…私は戌の刻に濃くなってゆく速度超過の車に乗せられる。丁度執筆者の所有する車の車載物の中に在るものみたい。可能であれば天然由来(オーガニック)なもので御願い致します。シンフォニック且つ生物としてベーシックなもので御願い致します。
 
 私は同車内にて脳内物質を高揚させ何度も絶頂に至るのです。何故ならば彼は性欲を統制する術を生まれながらに手にしている人だから。更に其の石橋のやうな硬さの意思を自ら叩いき/更に叩いて鋼鉄にし/更に叩いて酸化鉄の硬さを目指しているのですから。何時間も継続する勃起の虜にもなろうといふもの。


億万斯年の
月日を数え霊(たま)へよ

兆載永劫の
奴隷として仕え霊(たま)へよ

垓石焦土に焦がれつつも君は

秭極真当な御意見にのみ耳が傾く

無量大数の概念と∞印の区別つかずに

卑屈な狸の体位に吹く屈辱の風

其れは奴隷の所作
48手の精霊蝗虫(しょうりょうばった)

自由といふ名の鳥が鳴く

不自由といふ震動で言霊が揺れる

結局のところ空間は歪みつつ過去を邂逅し

積極的墓標を掲げ
揺れる未来に傾(かし)ぎ首


 私…彼女の意識は未だ戻らない。剃毛作業の準備は着々。否定される悶着。開放される某チャック。紐の付いた剃刀の装着。震動は微弱。状況は膠着。『じょり』『じょり』『じょり』準備が整ったやうで無毛地帯の痴態を求める下半身は湖畔絵図に近しい涅槃を探している。私は其の湖でひと泳ぎ。綺麗。綺麗。とても綺麗ね。見たこともない景色。とても綺麗。でも対岸に鈍く光る黄斑の舟が停泊している。或れは一体何なのかしら。ね。

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