《瞑想小説 狩人》

瞑想

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涅槃図…蝋燭の科学

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 幾つかの慰安器具が持ち込まれる。幾つもの慰安器具が持ち込まれる。洞窟の壁体は相変わらず彼女の嬌声を器用に反響させている。『ふたつ』鞭打ちの度に跳ね回る無垢な少女の魂は骸骨諸氏の願望(がんぼう)を満たし顔貌(がんぼう)を不確かなものにする。

『嗚呼/嗚呼/嗚呼』緊縛絵図の中で跳ねる乙女
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』此処は涅槃図の中であり中枢
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』打痕はひび割れており
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』血液とはいえぬ液体/流るる
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』其の液体は粘度を持ち
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』洞窟床面の低きへ流れる
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』鞭は何度振るわれたのだろう
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』新鮮な喘ぎ声は宴の供物となり
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』史劇に官能の刺激を加え
『嗚呼/嗚呼/嗚呼』骸骨達の血肉とし給餌される

 四肢の緊縛について語るのに杜仲茶と桑茶と黒豆茶が飽きる頃。彼女の華奢な首と同等の縦幅を持つ首輪の段階着圧を一段きつく縛り直す者が居る。淫靡車から持ち出された猫耳の末端を彼女に着想させる者が居る。被虐猫(ファンシーキャット)は蛮氏を切断(カット)し頬を更に赤らめる。

 纏物の雰囲気といふのは非常に大事でな…今日の湖畔の睦み合いでも其れを実感したのを著者実体験として語っておく。猫耳を撫でる所作で脳内安定物質第二(オキシトシン)が増加するのを互いに感じる事ができる陰(おんな)と陽(おとこ)はそう居るまいて。ともあれ彼女は外耳と中耳に耳栓のやうなもので固定された擬似的な『猫耳』を着装される運命を甘受する。

『葉/葉/葉…』
  鞭振宴は好調の一途
『葉/葉/葉…』
  快感の会館は開館し
『葉/葉/葉…』
  被虐と快痛の経路を開門する
『葉/葉/葉…』
  其の門を叩くのは彼女自身の脳
『葉/葉/葉…』
  涙雨は緊縛感度の起爆剤となり
『葉/葉/葉…』
  悦楽は氷面下で表面化せぬものの
『葉/葉/葉…』
  痛みと快感の区別は曖昧模糊
『葉/葉/葉…』
  恥辱と悦楽の分別は臍帯の寝床

 ※そういえば※ 昨日の呟きプラットフォームから直接引用してもよいか,◎◎殿よ。どうせ君は消すんだろ。賢明な貴女の事だから。綺麗に断捨離しているのだから俺に係るものも早く全削除してしまった方が君の為だぜ。『…仏壇に備える様な蝋燭で身体に蝋を垂らされると/肌に痕が残るほど熱い。殿方には蝋燭を使う時は/出来るだけ融点の低い蝋燭をお願いします』

 ※そうそう※ 此れに返信しやうかと思ったが/小説の中に封じ込める方が自分らしいと思い自重した。経験が全て。蝋燭について語るのは蝋燭を女体に垂らした事のある者のみだよ。同文面を拝見した瞬間に俺は大阪での熱射の夜を鮮明に思い出した。

(特殊な能力といふのは先天性でなく後天性で鍛える事が出来る事を此処に伝えておく。一度見聞きした事物を永遠に忘れなくする手法もある。俺が正月に招かれた寺でも出来るぜ。虚空蔵求聞持法だ。出来の悪い仏徒も。イエスの死に様の真実を知らぬ同教徒も聞いておけ。虚構の小説に潜む戯言の一つとして。)

 ※つまり※ 大阪の熱帯夜『ドMなんです。調教してください。』という女と知り合った。経緯(いきさつ)は長くなるのでカット。俺は彼女にホテルに来るように言いつけるとともに『①自分の持っている淫具を全て持ってくること』『②低温蝋燭を購入してくること』の二つを命じた。勿論,金銭は全て俺が持ってやった。その女の素性は明かせないが著名な演芸場のダンサーだったくらいは記載して構わんだろう。

 …其の時の経験を思い出したのさ。君の発言に『そうだな。知っているよ。蝋燭にもいろいろあるしな。ところで君。ファラデー博士の「ロウソク科学」を読んだ事はあるかい?』とコメントしたかったがやめた。 

『けた/けた/けた』骸骨一団は鞭打ち宴の推移を確認しながら淫靡車から複数本の低温蝋燭を取り出し/彼女の柔肌と新規着装具の猫耳に狙いを定める。其の眼はまるで白い狼。白狼の目だ。

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