《瞑想小説 狩人》

瞑想

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酸欠の部屋

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練られた辛子は剥ぎ取られ/塗られ
更に練られては塗られ/剥ぎ取られ
無惨に四肢を晒した娘の微細な傷口に這入る
這入って相見えるのは赤血球の数々と群々
其れ等は同等分量の空間を酸欠状態に導いて笑う

『辛子の分量が足りぬ』古文の読めぬ子分の発言だ
『…とは言いましても/一味も七味も皆無です』
『情けないことを言うな/毒蜘蛛様が御所望だ』
『…とは言いましても』
『…辛子の成る木など御座いませぬ』
『ええい/埒が明かないとは正に此のこと』
『同基地のキッチンは此処にしかないのだ』
『見せろ/辛味があり絡みつくものならこの際』
『何でもいい/スピード感のみが大事だ』

飽迄も細い娘の半身は糸に拿捕されており
嫋やかな表情は苦悶に歪み十文字
2枚羽根は無惨に切り裂かれ八面六臂
絡みつく白色糸の効用が沁みる五臓六腑
痛みを快楽と直結するセンサーが働き四面楚歌
無毛地帯の痴態のみが完全な御挨拶をしており
その他の部分は完全緊縛に巻かれ/蒔かれ
辛子と混ざって新たな身体感覚の和了は近い

『嗚呼/どうも/毒蜘蛛様』
『娘の味付け加減と爆発下限界が丁度のやうで』
『今お持ちします/今直ぐにお持ち致します』
『娘/嬲りの演劇場へお持ち致します』
『ええ/ええ/奴隷市場の下層で御座いましょ』
『直ぐにお持ち致します/周囲の音から察するに』
『今宵の盛り上がりも一段と宜しいやうで』

置いてきぼりのムーランルージュ
ドットが斑点をつけ危篤種に襲われる
ポットで沸かされた比喩のあるキッチン
暗喩の沸点は誰も知らないらしい
明喩の引火点は時計仕掛けの火薬庫の中
廊下にフードを被った獣目の男が居り
同火薬庫の外壁に伝導する温度を確認したのち
中腰でインターホンを押下するポーズ

『宇/宇』継続を求める乱痴気騒ぎ
『宇/宇』性欲の感知器は色を変え
『宇/宇』撹拌(かくはん)された昂りを集約し
『宇/宇』辛子の色づきは黄土色
『宇/宇』黄土色は悲しみの色にして
『宇/宇』謝金に塗れた奴隷のアーサナ

『宇/宇』酷ひもんだな
『宇/宇』被度といふものかな
『宇/宇』非道といふものかな

『宇/宇』適当な加減に調理された彼女
『宇/宇』傷口に辛味成分№1が挿入され
『……!』嗜み破りの嬌声が漏れるのと
『……!』聴衆の起立所作は同時だった

『嗚/呼』娘の脊柱起立筋が最大限に収縮し
『嗚/呼』娘がダイナミックなアローになるのと
『嗚/呼』聴衆のうち最も彼女に興奮する者が
『嗚/呼』単純接触自慰を始めるのは同時だった

『葉/葉』脳内で暴れる6の文字(もんじ)が
『葉/葉』反転して更に感嘆符を連打し
『!/!』9と見分けがつかなく成る瞬間は
『!/!』銀髪のナイスミドルが小説『白鯨』を
『!/!』一頁読み進めるのと同時であり
『!/!』五日の出来事を何時かの静止画に重ねる
『!/!』性感帯操作と概ね同義であった

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