《瞑想小説 狩人》

交差

次女の事情／三女の惨状

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斯様に自由を奪われた娘は
最早／心すら攫われた
毛様体筋に力はなく
眼輪筋は収縮する一方で
早／一両日の肉体陵が続く
誰も荒れた口腔内を癒やす
蜂蜜を与へる事せず

『嗚呼…嗚呼…ああ…っ』
『もう…駄目…駄目…』

毒蜘蛛／大蜘蛛／春の蟲
其の動きは知性と感性と管制を伴い
歓声を一身に受けつつ歓喜したのち
娘の肢体を器用に上下反転させる
蚕となった娘の肢体を反転させる
其の運動神経たるや群生する蜻蛉の如し
赤と青との睦み合いの如し

次女（じじょ）は字状（じじょ）
で事情（じじょう）を白状（はくじょう）し
白色糸（はくじょうし）に
薄情死（はくじょうし）の気配を感じている
陵辱死（りょうじょくし）を狙う
弘法大師（こうぼうたいし）の不知
誰も居ない岩石地を探索する大蜘蛛の拉致
飛行に必要なエネルギーは何処に在る／娘よ

上下反転することで娘の２つの突起は
下方に向かふ事を許されるのであるが

其処は冷たく冷たいベッド

其処は冷たいダブルクイーンサイズ

其処は獣のにほひが優勢な山域

其処は肉欲が理性を凌駕する区域

喰気の雰囲気と乱痴気の気配
ペネトレイト／インする四季の韻

同ベッドは零度以下に保たれているのだらう

右の突起が寒いと泣いている／嗚呼

左の突起が冷たくなっている／嗚呼

『嗚呼…嗚呼…駄目…』
『もう…駄目…駄目…』
『御勘弁…を／を／を』

どくぐも／みへるか
おおきな／おおきな
足のお長い
くもがまたがる

娘にまきつき
娘をとらへて
離さぬ離さぬ
ごらん／ごらんよ

ようせいどれいの
みのふるまいは
さざんか／しとやか
むじゃきなものさ

ああ／だめ／やめて
いや／いや／おねがひ
となえてみても
かなわぬ／ねがひ
とどかぬ／ねがひ

どれいのいちばは
げんじの短剣
どれいのいちばは
へいけの長剣
どれいのいちばは
めいじの維新

此れを絵画に
素敵な絵画に
誰ぞ持つのだ
紙と素敵筆（しのふで）

ひとぐらふのが／習慣で
ひとぐらふのが／喜びで
ひとを地の底／貶める
ひとをなぶりて／喜びを識る

とがったあしは／つきささる
見事な研磨／見事なり
その剣魔ノ先／欲望光色
せんたん部分を
やうやうみたまへ

娘／むかへる／蜘蛛のつまさき
娘／ほねぼね／ほれぼれするほど

けんこうこつから
さこつにいたり
さこつになにかを
とりつけられる
どれいのしょうしょ
かなしみしょうしょ

とべぬ／てふてふ
はねやき／てふてふ
とべぬをかなしみ
じべたにはえば

かなしみうんめい
ああ／ああ／だめよ
わたしはえさでは
御座ひませんわ

なぜにわたくし
なぜにわたくし
めすの数とは
おすの半分

ねえ／さいでやしょ
ねえ／さいでやしょ
なぜにわたくし
なぜにわたくし

もの珍しいですか
妖精といふ／いきものが
もの珍しいですか
このわたくしが
羽根をやかれた
むすめの赤裸々／そのすがた

朝食は幸福
夕食は退屈
少食を美徳とし
共食の給餌
胸飾の橙突起

晒され曝され
去られ皿され
秘密の饗宴／私は鶏（にわとり）
卵を産めというのであれば
産みだしますゆへ／お許しどうぞ
嬲った部分に／隅々「お済」の
判子を押して／せめて綺麗に

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