《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交差

奴隷市場 狂喜乱舞

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:::::::::::::::::::

其処には太陽が在り、光が在り
反射する光が在り、其れをまた反射する
樹木の群々が乱立する様にあった
ベッドの上にしては固すぎる様な気がするし
其れ等樹木から発生した落ち葉の上にしては
柔らかすぎる奇妙な偶体の上に
身体を横たえている自分を見る

こん・こん・こん
ドアのノックの音がする
先の咳払いと同音異義である音
俺はお前を知っている
俺はお前を求めて此処に居る
目を覚ました事にしても良し
目を覚ましていない振りを続けるも吉

「…ん」
俺が発した吃音は其れだけ
ぎいとドアの開く音ととももに
少女が中に入って来る……
何時かの死神の来訪と同様でありながら
全く違う性質を持つ「氣」を内包している

其の少女の様相を見よ…
我の求めしもの、君の求めしもの也
優しさの象徴であり、無垢の体現であり
愛とか呼ばれる奇妙な球体の象徴である
「妖精」と呼ばれる存在が眼前に…

身の丈は俺を100として50
俺が抱いた女、又は抱かざるを得なかった
女の出立ちの中で最も美しい顔立ちをしている

黄土色のワンピース越しに申し訳程度の
胸の膨らみを有しており、其の形は淫靡也
足の表現を付すならば「足」よりも「脚」
只、飛翔するのに疲れた場合にのみ
使用されるのであろう、か細く整った脚
産毛すら纏わぬ此の美しさを見よ
「一糸纏わず」の糸文字を初に変えて
「一初纏わず」と相応しい文字に
変えてみたいと真剣に願う俺を…
是非是非・是非に笑って頂きたい

背中には其の象徴の二枚羽根
其れについて記載されていた
文書・図書・本・手記にして手稿
「究極の心と身体」の一節に間違いは無い
身の丈を遥か越す優美な羽根には
勿論、飛翔する為の役割が備わっているのだろうが
俺には其れが随分と悲しく見えるのは何故かな

慈悲喜捨という古代宗教の中で見る
「悲」の文字を其処に付してやらう
「捨」の文字を其処に付してやらう
更に色(しょく)…紫の飲食物としてやらう
次に触(しょく)…触れて触れて汚してやらう
次に嘱(しょく)…俺に属する肉体としてやらう
次に燭(しょく)…蝋燭責めの餌食としてやらう
次に飾(しょく)…飾りつけは鮮やかに
次に蝕(しょく)…祭のプリマドンナとしてやらう
次に植(しょく)…電気の力で焼き伏せて
終に食(しょく)…我等の臓腑に収まるが良い

::::::::::::::::::::::

薄目を更に薄くし、呼吸を更に小さくし
死人のアーサナを深く深く深いものとすれば
呼吸様相が変わるのだ…生憎だったな、姫君よ

……足の具合は……
……どうか・な……

囁く様な声、吐息が7割で発生が3割
声はまるで鈴の音の様に狭い部屋を包む
死神の嫉妬が其処彼処に広がる事を
此の妖精娘は知る由もあるまいぞ
声は魔法…声は魔法だ
言葉は魔法…言葉は魔法だ
其れは振動、ヴァイブレーション
周囲を包み振動させる渦であり曲線
他より遥かに耳の良い俺には
彼女の咳払いから、此の言葉から
奥底の更に底、娘自身も理解の届かぬ
マリアナ海溝よりも深い部分を
知る事が出来る故に…………

容易く発声すべきでは無かったな
森で意識混濁に陥っていた俺を
どの術で此処まで運んだかは知らんが
救うべきでは無い相手をお前は助けた
融通無碍の身体操作で意図的に
自らの半分を死に至らしめていた俺の所作は

…偽装だ
無知故に其れに気づかぬのだ

…仮装だ
はろうぃーんよりも見事な仮装さ

…化粧だ
死化粧、花化粧、お前はしていないが

…一点
目的を反復するに至れば
俺はお前を目撃する事が第一
其れは既に叶った、薄目越しに
お前の純粋無垢、可憐三昧な
姿を拝むことが出来ているのだから
第二幕は娘、妖精娘、無垢な娘よ
お前を攫い、ザックに詰め
我の帰属する奴隷市場まで連れ帰る事

…………狩人………

お前は何を探している
祈り女とは一体、何だ
長老とは一体どんな存在だ
コミュニティの祭りとは一体
何故、此の村を訪問したのだ
お前とすれ違う一瞬の交差路
終始一貫、泰然自若の態度である
貴様を殺すのが先の作業であったか
まあいいさ…先ずは此の小娘を頂く

俺は薄目のまま、半死人のまま
ベッドとは言えないベッドの上
彼女の次の行動を待つこととした

::::::::::::::

「嗚呼…っ」
「嫌……っ」
「葉、葉、葉……」

そう、其の吐息が皆を昂らせる
麻縄で捕縛された娘巫女…
羽根を失い肩甲骨の根本まで
露わにされた今の気分はどうだね

「嫌…嫌…嫌…」
何時かと一緒の事を言う
奴隷身分の毛並みが良く似合う
そうして悶えているのお前は
美の山脈だ、淫靡の螺旋階段だ

「………!」
「………!」
おっと、気絶させるなよ
夜はまだ長い…秋ノ夜長ヲ
奇特な宴を続けようじゃないか
乾杯しやう…欲望の部屋に
乾杯しやう…人の繁栄と
乾杯しやう…人外のあへぎ声に
乾杯しやうじゃないか、皆で

「……嗚呼………つ」

ぎし・ぎし・ぎし・麻縄縛り
ベッドの揺れる音に似たりて
狂気乱舞の宴は極まり更けゆく

::::::::::::::::
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