《瞑想小説 狩人》

瞑想

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奴隷市場 一刀轢断

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焼き羽根を
削り削られ
剥ぎ取られ
妖精奴隷は
痛み悶える

錠剤が
血液に混じり
麻痺させる
其れでも痛むは
相当・なりや

「嗚呼」「嗚呼っ!」
羽根の根本に
切り傷を
付ける獲物は
如月・ナイフ

股ぐらに
振動球体
咥えたまま
快と苦痛の
狭間に揺蕩へ

「……!」
「……っ!」

痛むだろう
其の切傷から
ムラサキの
体液流れて
どろどろ・どろり

ぽたぽたり
床に溢すな
貴・重・品
奴隷の体液
高値の逸品

奴隷市
妖精奴隷の
羽根焼きは
今宵のお皿の
中央に・乗る

「あ……っ!」
「ああ……っ」

未だ痛むか
錠剤追加だ
早う・飲め

::::::::::::

③詠み人知らず

13は
不吉な数字
ひとつ引け
其の数・12
其れは仲間だ

春が来る
夏が訪れ
過ぎる日々
秋は夕暮れ
冬はつとめて

窮月は
12の象徴
睦月は
隣で在りつつ
別物でもある

荒ぶれば
一揆が起こるは
世の常さ
血気盛んな
漢(おとこ)は正常

::::::::::::

血気盛んな親分子分
ノコギリ状の刃に
力を加えて右へ左へ
其の度、娘の身体も
左右に振れる…

研ぎの甘いナイフを
敢えて使うも宴の一部
苦悶の声をマイクが拾う
コンクリートに反響するは
「ああ……っ!」

妖精奴隷の断末魔
終末告げる言の葉は
陰を極め、黒を極め
黒よりも濃い紺となる

耳下(じか)3センチには
脳内模様を映し出す
二つのパッド
黒色・パッド
延伸されたコードは
四角いボックスに繋げられ
脳波の揺らぎを記録する

地火(じか)に焼かれるよりも
電撃の方が熱かったか…
羽根は肩甲骨周りで焦げ
無惨な姿を晒しているが
其れを心配するものは
この部屋に居ない
此処は奴隷市場…
闇の闇・悪魔の寝屋
欲望の住処にして
魑魅魍魎跋扈する巣窟・也

時価(じか)単価にして
幾らとなるのか…
其の羽根の味を確かめてやらう
先ずは一本目…綺麗に焼けた
其の羽根に乾杯しやうじゃないか

「欲望を否定するもの否定する」
奴隷市場の掲げるテーゼは
此処に極まる、其の証拠として
聴衆は総立ち、皆立ち
鎌鼬(かまいたち)
勃起は止まぬ・刃の轢断

:::::::::::::::

④詠み人知らず

其の指輪
素材は蒼玉
希少価値
偽品といへども
気品に満ちる

其の指輪
脳内乱舞
溶けてゆく
血肉が変われば
国土も変わる

青は紺
紺から藍色
禁色(きんじき)へ
変幻・自在
朱雀に玄武

禁色が
黒羽根色を
連れてくる
雪解け水を
童が詠めば

其の色は
許しの色に
変わるのだ
白虎・青龍
清水の如く

::::::::::::::

切れ目から
徐々に這入るは
八本歯のコル
ぎざぎざ刻み目
娘は・涙目

もう・声は
枯れ木と同じく
枯れ切って
揺れる身体を
支える・力は

其の細い
身体に微塵も
残らぬを
皆が知るのだ
残念・無念

肺循環
氣・水・血の
流れ路
羽根一枚目の
決損を・知り

治すため
全速力で
駆け巡る
見事な反応
生態・反応

体循環
氣・水・血の
戻り場が
何時もと違う
何か違うと

大暴れ
血(けつ)が
行き場を
失えば
心の臓器は
悲しく踊る

此の身体
一部の欠損
其の意味を
知って憐れむ
喪服の楽団

::::::::::::::

「…!」
「…!」
「…んっ!」

一本目
羽根は見事に
切り取られ
雨の降る音
更に高まる

二本目に
襲い掛からん
其の折も
麻縄ぎしりと
緊縛・解けず

猿芝居
夕焼け小焼けで
日が暮れて
山のお寺の
生臭坊主が

哀れなる
奴隷を救えず
意味のない
マントラ唱えて
檀家と・会合

誰ぞ在る
救いの其の手を
差し伸べよ
人に非ざる
ものとはいえど

こんなにも
哀れな出来事
あろうかね
羽根を失へば
娘は飛翔せず

::::::::::::

不・不・不
見事なものだな
不便を利として
攫って来た甲斐が
あったというものだ

不・不・不
妖精の村…尋ね入るには
傷ついた旅人の
「振り」では無理だ…
本当に傷を付け
血を流し、青息吐息の状態で
入口に突っ伏す事が出来なくば
彼女等の楽園への侵入は不可能

苦・苦・苦
俺は知っていたのさ
俺は随分と以前から知っていた
地底からもたらされた知恵の一つに
其の楽園の記載があったからな
誰が書いた書物だったか
作者の名前も今は思い出せぬが

「究極の心と身体」
其の目次にはっきりと記録されていた
人外の者の生態等について…
しかし、目次に記載は有るものの
其の頁は空白が広がるのみ
幾つかの頁は「空」として
其処に在るだけだったか

通常の心理状態では
平時の意識状態では
其処に付された文字を
見ることは出来ぬ
彼(異形の地底者)の教えのとおりだ
呼吸を止息とし、ピタリと意識を
一所に留めた折にしか
其の文字を見ることは叶わぬ
妖精の村の秘密はそれほどに
深く・深く・深いものだった訳だ
3重のロックを付された書物の
最後の錠前に付された秘密は精神
精神的な鍵で開ける

薄らぼんやりとした文字列…
彼女等、一部は彼等の
生態について記載されており
其の誕生から現在に至る
歴史書とも言える編纂を見る
其の残酷さは
人間の以上のもの
意外にも好戦的で
侵略行為を繰り返した史実が有る
俺は歴々の女王が蛮行を繰り返し
人間と戦時条約を結んだ事を知った

現在も言うならば休戦状態…
戦禍に在るという事を知り
俺の闘争・逃走ホルモンは
昂りを告げる…
夜に舞う蝶々よりも気高く
死神の来訪時よりも確固たる決意

其処に居るというのなら
見てみたくなるのが心情
知ってみたくなるのが人常
シてみたくなるのが人の性
嫌・嫌・違うな…漢の性だ
それがいい、それでいいのだ

俺は一人で旅に出た
・妖精と巡り合う事
・可能であれば捕らえる事
・何よりも必要とあらば即座に死ぬ事
此の3つを決心し、かの村に向かった

不・不・不
俺が怖かろう
死神を常に傍らに置き
泰然自若の意識で千枚の紙を貫き
自らの大腿部に矢を放ち…
痛みを傍観しながら死を迎える事を
顔色一つ変えず平然と実行する俺が

不・不・不
俺は市場の王
北方産まれの地獄育ち
故に何時死ねど涅槃へ至る
其の路を知っている…
答えは瞑想…呼吸…仙道…内観

此の俺の手の平で踊れ、奴隷よ
一枚目の羽根は、もう少し
もう少しで片付くのだな
鳴け・鳴け・泣け・泣け
啼け・啼け・哭け・哭け

苦・苦・苦
女王には届くまい
此の悲しみの声の羅列は
市場全体が陰の周波数
守りの周波数の中に在る限り

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