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追手
開戦
しおりを挟む俺は狩人だ
正確に言えば
狩人、だった
コミュニティのナンバー・ツー
獣を狩るのが生業であり
ヒトを殺したことは、無い
お前は暗殺者
コミュニティに不益な
存在を抹消する
長老の子飼いの犬
そうだろう
洞窟に追い込み
相手は短剣
自分は長剣
炎を扱うことができ
その効果を十分に発揮できる
この位置取りも完璧だ
お前が、有利
俺は、不利
しかし
しかしな
俺には氣の感覚がある
狩場で養った感覚
生来のものか
後天のものか
又はその両方か
その感覚で
次の予想が立てられる
大雑把では、あるが
戦闘は
免れぬ…
俺の本能も
其れを認めているし
彼の筋繊維の一本一本も
それを強く望んでいる
結末は
どちらかの《死》
それのみ
それで、良い
:::::::::::::
さて…
声をかけるのは
追われる側と
相場が決まっている
才児よ
そのままだ
姿勢を低くしろ
もう…
立ち上がれば、熱気の層で
火傷しかねん温度になっている
「…長老の命令か
何故、俺を狙う
何故、俺を殺さねばならん」
端的に
正確に
ゆっくりと
はっきりと
喋ること
戦地においても
言葉は肝心だ
状況をひっくり返す
つもりはない
この場において
言葉は無粋
それは理解している
しかし
しかし
何故、俺が邪魔なのか
何故、消さねばならんのか
その理由は知っておきたい
「…」
返す言葉がないのなら
即刻、首を刎ねるか
この、短剣で
はたまた…
体術を用い
彼を床面に叩きつけ
気を失わせるか、なのだが
そのどちらも
今は厳しい、な
飛びかかるには
上層の温度が高すぎる
火傷に至る温度に身を晒せば
瞬時、目をつぶるように
ヒトの身体は出来ている
喉の火傷、気道の熱傷は死に至る
最低限、
現在の高さを維持しながら
彼の喉元にまで
辿り着くには…
あの長剣が邪魔だ
彼の腕の延長線に在り
自在にゆらゆら揺らめく
炎を発する長剣の、存在が邪魔だ
「…からな」
不意に彼が声を発する
嫌、発していたと表現すべき
出だし部分は聞き取れなかった
仕方がない
此処からの発言を
注意深く聞くしかない
もう一度
喋らせる時間もない
周囲の温度は更に増し
灼熱の一本道から
避難してきたコウモリが何匹も
入口へ向け、飛び立って行く
「…と、いうわけだ
お前は危険な存在らしいぜ
長老様にとって、な
輪番の祈り女
あの娘と会わせる訳には
いかん、と言っていたな」
「…」
「…大した精神力だ
熱いだろうに
これが、氣の力
お前に宿る
ルート・チャクラの力
というやつ、なのか?」
…身構えろ
隙なく
緩みなく
緊張もなく
…只、この一点を
忘れるな
瞑想と一緒だ
そう、いつもと一緒
《氣の流れ
その感覚を
信じる…》
灼熱の高温地帯と化した洞窟は
2匹の炎獣の住処となり
片方は短剣を
もう片方は長剣を構え
その距離を一気に、縮める
::::::::::::::::
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