《瞑想小説 狩人》

瞑想

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同種喰い

評議会

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昼の祈りが終わると
祈り女は軽い昼食をとり
採集のための
小さな籠とともに
東1里にある
牧歌的な森へと向かう

昼の祈りが、終わり
礼拝堂は
ひっそりと静まり返った

只、後列の一部分に
少し湿り気が
残っている、ようだが

:::::::::::::

礼拝堂の真上
螺旋階段を上った
廊下の先には
《評議室》がある

ざわ
ざわ
ざわ

まさに今
とある会議が
開催されようとしているのだ

大きな教室のような佇まい
中央のステージに向かい
斜めに傾斜した階段があり
長いテーブルが6列

それぞれのテーブルは3人がけで
前から順に
1番から3番
4番から6番
7番から9番
10番から12番
13番から15番
16番から18番まで
番号が付されており
序列順に評議員が並んで
座っている

3、6、9
12、15、18には
何故か数字に◎が付いている

その意味を知っている
評議員は居ないだろう
多分、な

中央ステージの
左手には狩人の長が
右手には長老が座っている
今日の議題に付された案件は一つのみ

狩人の狩る獣の数が
減っているのは何故か?

長老が杖を床に打ち鳴らす

トン、トン、トン
これが始まりの合図のようだ

「…始めよう
 狩人の長よ
 ここ数週の狩りの成果は
 酷いものだ
 何故、だね?
 心当たりがあれば申せ」

…長老は評議長のローブを
 纏っており
 大きな玉が連なった数珠を
 首に下げている

…ブラックタイガーアイを
 使用したその数珠は
 威厳の象徴としてそこに在る
 ある村との交渉で
 随分と強引な手法で手に入れたもの

「は…い
 とある狩人が以前、
 狩場で死んだことは
 申し上げたとおりで、御座います
 それが全て、
 とまでは申しませぬが、
 成果が上がらぬ
 要因の一つでは、あるかと…」

狩人の長は
罪人のように青ざめた顔、
声は、震えている

「ナンバー・ツー、
 端のテントの狩人のことかな?」

「その…
 とおり、で
 御座います」

「彼の所属は?」

「は…い
 彼は《太陽》と呼ばれる
 弓矢を主軸に狩りを実施する
 グループの一員でした…
 不思議なオトコ、でして
 獣の匂いよりも
 氣の残り香を
 探知することが重要だ、
 そんなことを
 言っておりました…」

「不無、
 不無、
 狩人のグループに
 《太陽》
 《月》
 《中庸》という
 グループがあるのは知っている
 得意とする武器もそれぞれに違う
 そうだな?」

「は…い」

「私が問いたいのは」

「……」

「どのようにこの事態を
 打開するのかということ、
 その一点、だ
 狩る獣の量が半減し
 質も落ちたと
 調理師が嘆いておったぞ」

「は、
 はい…
 では…
 狩りの開始時間を早め、
 終了の時間についても
 延長することと致します…
 また、長老様
 この事態を
 打開するために
 何名かを
 私達に、お貸しいただけませぬか?」

「…考えて、おこう…
 狩人の長よ、
 肉が無くては、
 民の腹は膨れんのだ
 採集だけでは
 限度があるのだぞ…
 そのこと、ゆめゆめ
 忘れぬ、ように」

「は…い」

「狩りの出来ぬ
 狩人は、
 狩人に、あらず!
 以上!」

異論・反論があれば
18人の評議員の誰かの
手が挙がるはず

静寂…

挙手…

なし…

狩人の長は
がっくりと肩を落とし
評議室を後にする

彼は帰路
様々なことを
考えていたようだが
要約すると、こうだ

…端のテントの狩人…
 あいつの力は…
 影響力は、
 絶大だったのだな
 彼一人が居なくなっただけで
 こんなにも
 我々の力が衰えるとは
 夢にも、思っていなかった…

…畜生
 畜生
 見返して、やるぜ
 何とか、してやる
 狩りの時間を延ばすことが
 正解かどうかはわからん
 空白のナンバー・ツーに
 誰を据えるかも重要、だ
 
…祈り女にも顔が立たん
 来るオンナ
 来るオンナ
 みんな
 最近の肉はどうのこうの
 これでは栄養がどうのこうの
 そんな話、ばっかりだ

…畜生
 畜生

…三連符には
 《あいつは狩場で
 死んだことにしておけ》と
 きつく口止めされているのだ…が、
 あいつを呼び戻す方法は
 ないのだろうか?
 
…せめて
 せめて
 あいつの特別な狩りの技法を
 氣を探知する
 狩りの手法を
 教わっておくべきだった

程なく
戻って来た
狩りのグループを
迎え入れるも
本日の成果も今ひとつ

これでは長老は
納得せんだろうと
再び、肩を落とす彼

それぞれの
リーダーを集め
本日の評議会での
出来事を伝達すると
彼等の反応は様々だった

若い狩人は言う
「…よっしゃ、やってやりましょう
 今まで以上の成果を挙げて
 評議会を、長老を
 見返してやりましょうよ!」

中堅の狩人は
「不無、最近はみんな
 疲れているようだし、な…
 無理もない」

最年長の狩人は
髭をさすっているだけで
何も喋ることがないらしい

::::::::::::

…待て
 待て
 違う、ぞ

…狩りの時間を延ばすだけで
 成果が上がる
 などと思うな

…そんなことは
 一時の気休めに過ぎんぞ
 狩人の長よ
 
…鍛錬、
 鍛錬、
 違う種類の
 鍛錬が必要なのだ

…いいか
 鍛錬場で
 重いものを適正回数
 持ち上げるような
 鍛錬では駄目だ
 それでは
 筋肉が無駄に発達するだけだ

…余計に
 動けなくも、なるぞ

…集中力
 集中力を
 研ぎ澄ますんだ
 獣の気配
 獣の宿す《氣》は
 そこかしこに
 散らばっているではないか

…若い狩人よ
 お前の右後ろにも
 その氣があるのだぞ
 何故、気付けんのだ




…俺にあって
 彼等にないもの
 
…俺が持っていて
 彼等が持っていないもの

…《氣》

…《氣》の感覚

…この感覚は
 俺だけのもの
 なのか?

…これを
 もっと鋭く
 鍛錬すれば
 ひょっと、して…

…このコミュニティの
 バランスを
 崩し
 突破する
 一つの力になるのだろうか

…ひょっと、して

…あのコミニティを
 守護するものの1つ
 
…進入するものを常に警戒し、
 探知するシステム、
 あの、奇妙な、周波数…
 
…あれは特殊な
 《氣》の集まりなのか?

…では
 その
 発生源は?

…そして
 それを
 打ち消す、ためには?

俺は思案する
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