《瞑想小説 狩人》

瞑想

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同種喰い

同種喰い 其の11

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はぁ
はぁ
もう、
わた、し…

こんなに
された、ら…

おかしく
なり、ます

いいえ
もう…
とっくに
おかしく
なっています

おむね、が
こんな、に…

「もっと、
 して欲しい?」

もうやめて
でも
やめない、で

優しくしないで
でも
優しくして

痛くしないで
でも…
少し強くして

食べないで
ても
食べるなら、本気で…

「どんな、
 気分に、なる?」

…は…い
 私、は
 蜘蛛の巣に
 かかった、蝶

…捕らわれた、蝶
 
…で
 す

::::::::::

夜に舞う
優雅な蝶々
私達とは
違う生活リズムを持った
夜行性の、蝶々

小さなカラダに似合わぬ
大きな6枚の羽を持っており
それぞれに特徴的な
丸い模様が付されています

仲間はおらず
一人ぼっち
それを寂しいと
思ったことはありません

言い寄るオスは
たくさん
それはたくさん
居りました、が
彼女はそれを
知らんぷり

昼は眠りの中にいる
ヒトに狙われないように
天敵に襲われないように
只、ひたすら
夜の到来を待ち
周囲から身を隠す


待望の夜
希望の夜

夜が来ると目覚め
人里に舞い降りる
小さな昆虫を
食べるためでも、
美しい泉の水を
飲むためでもなく
特別な栄養を補給するために

奇妙な習性を持つ
その蝶は
人の夢の中に現れては
その夢を餌にして食べるのです

産まれたての赤子の夢を、
思春期の乙女の夢を、
死に際の老人の夢を栄養にし
6枚羽をもっと
美しくしていく

そうやって
何年も
何年も過ごすうち

いつも、ふらふらと
気のむくまま
羽のむくまま
今夜の夢を探しているうち

とても精錬な夢を持つ
とても力強い夢を持つ
そんな男性に恋をする

《嗚呼
 心も
 身体も
 逞しい
 彼の心に触れていたい
 せめて
 せめて
 夢の世界だけでも
 私の、ものに
 なって、くだ、さい…》

その男性の夢に現れ
午前3時まで睦み合い
目覚めの光が来る前に
そそくさと姿を隠す

色々な人の
夢を渡り歩いたのだけれど
彼の夢が一番ステキだった
心を鍛え
カラダを鍛えることに一心不乱
知識を知恵の領域に
集中力を極みの領域へと
自分を高めることにしか
興味が持てない
そんな彼の夢が好き

彼は仕事の傍ら
朝の執筆に向かうのが常だった
《究極の心と身体》
その筆先に集中するため
眠りの質には随分と気を配る
意識的な眠り、と彼は言っていた

夜は
彼の夢の中へ
昼はひたすら
身を隠す日々

嗚呼
素敵
何も要らないわ
私は夢を栄養にできるもの
私は彼の夢を食べるもの

嗚呼
早く
夜に
ならないかしら

嗚呼
早く
彼の
元へ
向かいたい

嗚呼
その
魂の輝きを
もっと
もっと
私に頂戴…
貴方の魂に
触れることができれば
私はきっと
生きて
いける

そう思いながら
暑い夏は紫陽花に身を隠し
寒い冬は椿と仲良くなって
ひっそりと
ひっそりと
暮らしておりました

ある
夜のこと…
いつものように
彼の家に向かうと
中から大きな
声が聞こえます
聞いたことのないような
大きな、声が

「あなたは
 変なのよ
 夢の中で
 違うオンナの名前を…
 もう、ずっと
 もう、ずっとよ」

「知らんな
 そんなオンナなぞ…
 言葉を交わしたこともなければ
 会ったことも、ない」

「おかしいわ
 おかしいわよ
 眠っている間
 あなたは
 違うオンナの名前を呼んでは
 綺麗だ…とか
 待っていた…とか
 そんなことを喋っているのよ?」

「知らん
 何度も言わせるな
 君の言葉は《泥の剣》だよ」

「何よ、それ?」

「泥でこしらえ
 土で固めた
 何も切れない
 言葉の剣のことさ、
 無意味なものを作るな
 そんなことに、エネルギーを割くなよ」

「わかった、わ
 もう、知らない!」

ひとしきり
口論を終えた夫婦は
別々の寝室に入り
別々の夢を見ます

男の夢は相変わらず
ロマンチックで
きらきらしていて
希望に満ちている
今夜も、同じ

じゃあ…
奥様の、方は?

蝶は
初めて
奥様の夢を
覗いてみることに
おそる
おそると



…!

…蜘蛛
 毒蜘蛛の巣
 
…粘着性
 粘り気
 湿気

…歪な誓い
 宣誓と指輪
 宣教師とブーケ

…契約
 誓約
 誓いの言葉
 
…自慢
 傲慢
 安心
 安泰
 
…独り占め
 自分勝手
 束縛
 緊縛
 私利私欲

…嫉妬

…罠
 夢の罠

自分の夫を
寝取られまいと
幾重にも罠を張り
夢の中にも蜘蛛の巣を張っている

一生懸命、
毎日、
毎日、
サラダを作るのも
掃除をするのも
ダイエットをするのも
彼の行く先を聞くのも
行ってらっしゃいを言うのも
お帰りなさいを言うのも
神の前で誓ったのも
ヨーガのクラスに参加するのも

全て彼を
独占するため

愛ゆえの行為ではない
只、手に入れたものを
失いたくない
その一心で
奥様は夢の中にも
罠を張っていた

蜘蛛…
この女性、は
蜘蛛…

「捕らえた、わ」

奥様の夢に
捕らわれた蝶は
夢の中で緊縛され
拷問を受けながら
実体の在処の自白を
強要させられる

屋根裏部屋に
足音が迫ってくる
ぎし
ぎし
ぎし
不吉な音がする
嫉妬の炎が燃えている

夢の中だけでなく
実体をも捕らえられた蝶は
罵られ、弄ばれ
苛烈を極めた
拷問の末にその生を終えます

美しい6枚羽は
その身から剥ぎ取られ
奇妙なスープと一緒に煮込まれる

羽を失った
小さな胴体は
フライパンに置かれ
高熱に炙られるうちに
みるみる小さくなっていき
ほんの数センチの残骸に…

「さあ、召し上がれ」

「随分と、嬉しそうだ
 何かあったのか?」

「別、に…」

「そうか」

:::::::::::

「…凄い、想像ね」
「…でも、知的だわ」

嗚呼…
おむね、が
とても…

そんな気分に
なるのです
捕らわれた蝶は
どんな拷問を受けたのかしら

奥様に捕らわれ
緊縛された蝶は
どんな気持ちになるのかしら

赤目の女と
緑目の女に挟まれ
後ろ手に縛り上げられ
声を出すなと強要され
胸をひたすら弄ばれ
何度も
何度も
峠を越える
私と、一緒
多分、こんな気持ち…

「あと、5分、ね」
「声を大きくしちゃ、駄目よ」

嗚呼
あと、5分
あと、5分、も

はやく
はやく
終わらせ、て

好きにして
もう
私を好きにして

もういいわ
諦めました
体の反応には
抗えませぬ

…嗚呼
 狩人、様 
 貴方は今
 どこで
 何をされておりますか?

…深い森の中
 獣とともに暮らし
 永遠の楽園の
 王様になって
 いらっしゃるのですか?

…それとも
 それとも
 こんなワタクシを
 見かねて
 救い出すために
 短剣を研ぎ
 矢尻を尖らせ
 深い瞑想の中で
 集中力を研ぎ澄ます
 そんなことを
 なさっているのでしょうか

…わたし、は
 りんばん、の
 なかで
 同種喰いと呼ばれる
 2人のオンナの方に
 出会いまして…

…朝、昼、
 2度も
 彼女達に
 弄ばれることとなりました

…なお

…これが最後であれば
 良いと願うのですが
 どうも彼女等の目を見ると
 《そうは問屋が卸さない》
 ということになりそうな
 予感が、いたします

…嗚呼
 随分と
 罪深いカラダに
 なったものだと
 呆れてしまうでしょうね

…だって
 だって
 おむね、が
 こんな、に
 ああ
 かんじ、て
 しまう…
 の
 です

…むね
 だけで
 いく
 わたしをみて
 わらって
 くだ、さい
 たからか、に

あらあらかしこ
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