《瞑想小説 狩人》

蟲責め

蟲責め 其の15

…嗚呼
　ブラシ、は
　やめ、て…
　おかしく、
　な、る…

…虚空蔵
　求聞持法は？
　どのような完成をみたのだ？

…は…い
　こくうぞ、う
　じもん、じ、ほうは…
　嗚呼…
　おねがい
　もう、ほんとう、に
　おみみ、が…

…尻尾と耳
　どちらが良いかな？

…どち、らも…
　ですが
　おみみ、の方が
　直接的、な
　感じが…
　いた
　しま
　すっ！

…耳を掴んで…
　中を
　ブラシで
　ごし
　ごし
　ごしと

…嗚呼…
　嗚呼…！

…どうだ？
　綺麗な毛並みに
　なってきた
　お前は、猫だ
　そうだな？
　
…嗚呼
　わたしは…
　ね、こ
　わたしは
　ねこ、です
　宇、宇…
　
…お前は
　私の
　ペットだ
　そうだな？

…は…い
　わたし、は
　ちょうろう、さ、まの
　嗚呼…
　ペット
　で、す…

…四つん這いがお似合いだ
　手足を拘束されているのが
　随分と様になっている
　《被虐、因われの猫》
　そんなお前は
　その乙女
　攫われた乙女の気持ちになって
　おれば良い
　
…は…い
　嗚呼…

…虚空蔵
　求聞持法は？

…は…い
　こくうぞ、う
　じもん、じほうは…
　嗚呼…
　あな、ぐらの
　なか、で…
　：
　嗚呼…
　嗚呼…
　それ、は
　彼等、修行僧の
　手によって完成を迎えます
　見聞きしたことを忘れず
　永遠に自分の知識とする技法
　そのためには
　自分という器を
　《空》の状態に
　しておかなくてはならない、と
　彼等は言います
　《空》は《無》とも同義、
　無限大の力を持つ
　その状態に自分を置いている限り
　見聞きしたとこは
　忘れようがない、と
　：
　：
　嗚呼…
　おみ、み…
　そんな、に…
　された、ら…
　しゃべられませぬ…
　：
　：
　見たこと、に関しては
　写真に収めるようにパチリと
　シャッターを押すイメージで
　聞いたこと、に関しては
　脳内に空のレコーダーがあり
　録音ボタンを押すイメージで
　それだけで記憶できると
　彼等は確信を得ます
　：
　不思議な
　不思議な
　能力を獲得しても、なお
　彼等は前進を続け
　《見聞きしたことを整理する方法》
　《宇宙図書館に自在に入室する方法》
　この２つを手にすることとなります
　彼等は言うのです
　見聞きしたことを
　覚え、記憶し、
　永遠の知識にするのは
　確かに、素晴らしいことだ
　が
　しかし
　この情報は一体
　何処から来たものなのか
　本当に価値のあるものなのか
　そこが疑わしいものも、
　数多く存在するのが現実
　ならば
　情報を整理し、
　真偽を確かめ、
　整理する方法を確立する必要がある
　その手法は…
　多数決、ではない
　常識の秤にかけることでもない
　実験…
　《人体実験》だと

…実験？　

…は…い
　嗚呼…
　おみ、みが
　蟲さん、おね、がい
　解放、
　解放、
　して下さいまし
　尻尾も、
　お耳も、
　刺激が、
　つよ、すぎ、ま…す
　そんな、に
　暴れ、ないで…

…蟲が？
　暴れている？

…は…い

…どこで

…みみの、なかで…
　のうの、なかで…
　噛まない、で
　舐めない、で
　おね、がい…

…《脳》を噛まれ
　舐められている？

…は…い
　嗚呼、嗚呼
　ちょうろう、さ、ま
　
…何だ？
　そんな目で、
　懇願するような目で、
　見おってからに

…この、蟲さん、は
　消えてなくなるのですか？
　それ、とも…

…さて、な
　それこそ
　お前が知らなくても良い
　情報だ
　続きを、
　続きを、
　話してもらおうか…

…は…い
　宇、宇、宇…
　彼等は情報を整理するにあたり
　知識と知恵を２つに分断しました
　定義そのものを
　はっきりと分けたのです
　：
　《知識》
　細かい数字
　統計的なデータ
　分析によって得られた結果
　宇宙図書館から持ち帰った答え
　実験の前段階、
　情報に過ぎないもの
　：
　《知恵》
　知識で得られたものを
　人体で複数回、実験し、
　証明されたもの
　本当に価値のあるもの
　：
　このように分類しました
　じんたい…
　じっけん、は…
　おねが、い
　おみみ、を
　ひっぱら、ないで…
　：
　人体実験、は
　基本的に彼等自身が被験体と
　なることが多かった
　なれど
　本当に残虐なもの
　本当に危険なもの
　これらの
　被験体になるのは如何なものか
　危険が及ぶのは得策ではない
　そう考えた彼等は
　人さらいのグループと結託し
　《土牢の乙女》の身体を使い
　実験をすることと、
　した、の
　で、す…

…何とも
　可哀想な
　話ではないか
　処女だった乙女は
　それを失い
　貫かれ
　挙げ句の果て
　狂った知恵の実験体とも
　された訳だ…
　今のお前も、一緒
　四つん這いで拘束され
　人体の外に神経を這わされ
　蟲の活動とともに
　尻尾を
　耳を
　犯されている

…嗚呼
　もう…
　駄目…で、す…
　……☓…☓……

…気を付け、
　気を付け、
　気を保て、
　今宵の戯れ
　《蟲責めの夜》は
　まだ終わっておらん
　気を保て

…宇、宇、宇、
　葉、葉、葉ぁっ
　
…話の続きを聞く前に
　今の気持ちを
　詩歌にしてもらおうか

…は…い

…早く

…嗚呼

《縛られて
　身動きとれぬ
　このカラダ
　何時まで続くや
　蟲の囁き》

…良いぞ
　聡明な、オンナだ
　直接的な情緒があり
　被虐にも満ちておる
　もう、一句

…は…い

《とめどなく
　あふれる泉は
　花蕾、
　悪戯されども
　水は貰えず…
　枯れゆく華は
　どこどこゆくの
　ブラシは刺激を
　脳の髄まで》

…良
　い
　な

…嗚呼…
　おみみ、ひっぱら
　ない、で…

…気分を
　変えるとするか

…？

…尻尾も
　猫耳も
　随分毛並みが
　整ってきた
　ここで小休止
　サービス・タイムとしよう

…なに、を…

…舐めろ、私を

…そん、な…

…いいから、舌を出せ
　いつもやっておるだろう？
　サービス・タイムだ
　私を舐めろ
　そして
　語りを止めるな、よ
　いい娘にしていられないのなら
　もっと
　もっと
　きついお仕置きをしてやる
　ほれ
　舌を出せ

…は…い

…舐めろ
　私を
　早く

…どこ、を…？

…決まっておろうが
　言わせるな
　私だ、私自身、だ
　
…嗚呼…
　は…い

…話を続けろ、舐めながら
　這いつくばった
　そのポーズで

…は…い

…続けろ
　話を

…むり、です
　この、じょうたい
　で、は

…そうだ
　そうだ
　ペロ
　ペロ
　ペロと
　猫になった気持ちで
　周りから…
　そうだ
　芯棒の先までを

…嗚呼…
　葉っ
　葉っ…

…本当のペットに
　なってきおったな
　屈辱的、か？

…は…い

…ブラッシングは
　休憩としてやろう
　そのまま
　私を咥えておれ
　私を舐めておれ
　私は
　お前を眺めながら、
　お前の話を聞きながら、
　もう一本のブラシ
　《針ブラシ》の
　準備を
　進めると、しよう…

…そん、な…

…話を続けろ
　舐め、ながら

…嗚呼…
　は…い