《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交渉

結界

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少し変わった
話しを付しておく

《結界のオトコ》
という話だ

俺はあるオンナを連れ、
湖畔まで車を走らせる
お気に入りのカフェに行くためだ

運転手は俺で
彼女は左後方が定位置

彼女は右の
大腿部を
なで廻されながら
奇妙なオトコの
奇妙な話を興味深そうに
聞いている

ふむ、
ふむ、
ふむと

可愛い仕草で
頷いている

最近は
フロー理論がお気に入り、
概念として、
静かにやってくる流行は

確固たる足音とともに
知識となり、
その蓄積が脳の中に刻まれる

知識は
渦になり
螺旋になり
脳内の住人になり

次へ向かう力を、
現実の、力を与えてくれる

…カフェに着くと
 俺は
 彼女を右肩に抱き
 見せびらかすように
 歩く 

 ピッタリと、
 横に
 これは俺のものだ
 このイイオンナは
 俺のもの

 彼女は五臓六腑を癒やす
 食の探求に余念がないようで

 デーツという
 意味不明な物体の効能について、
 板藍根という
 未知のお茶の効能について、
 涼やかな声で、
 淀みなく話す

…嗚呼、
 君の
 声に、
 身体つきに、
 もっと酔いしれていたい
 デーツ、
 板藍根、
 そんなの
 どうでもいいぜ 

…俺が食したい、もの
 俺が飲みたい、もの

…俺のエネルギーの源は
 唯一、○○
 なのだ、
 知っているだろう

…只、今日も
 射精はしない、
 そう、決めている

 2時間程の談話を終え
 彼女は手洗いへ、
 俺は外で煙草に火を点ける
 風情のあるシーンだ

 外にはいつくか
 見晴らしの良いテーブルがあり、
 そこに1人のオトコが居るのが
 視界に入る

 そのオトコが
 喫煙所にいたため
 俺は彼と
 近接せざるを得なかった

 「…?」

 何だろう?
 何かを一心に
 造っている

 「…何を、造っているの、です?」

 俺は訪ねる

 「…これのことですか?」

 「…は、い
 そうだ、
 そういえば…」

 「…」
 
 「貴方は
 以前もここに、いらっしゃった
 貴方に会うのは、2度目だ,
 多分…
 確か、その時も
 同じものを
 造っていらっしゃった」

 「知りたい、
 ですか?
 これが、何なのか?」

 「…はい」

 胸が高鳴る
 教えて、
 欲しい

 「…結界、です」

 「結界?」

 心が踊りだす、
 変なオトコが、
 ここにも居る

 「そう、
 ステンレスパイプ
 銅
 真鍮
 アルミニウム
 これらの棒を
 このように…
 このように…
 …
 …
 …
 すると
 結界にも
 アーシングにも
 使えるようになるのです」

 「……」

 前者も後者も
 俺は知っている

 結界は
 陰陽五行説から、
 アーシングは
 エハン・デラヴィなる
 人物から学んだ

 これだけ読み
 これだけ聞き
 これだけ生きていれば
 その概念に触れることもある

…続きは、またの機会にしよう
 交渉が続いている

…彼女は言っていた
 帰りの車中で
 「…貴方は、
 呼ばれたのね…
 …多分、必要な、ことだったのよ」

…成程、
 わかる、
 気がする

…………………

部屋の空気が
さらに張り詰め

隣村の長が
呆れたように
ため息をつく

「…私が、
 昨夜、
 彼女に、
 その一節を漏らした
 可能性が、あると
 そう仰る?」
 
「…そう…、
 もしそうなら、
 交渉は破談、
 とさせていただく」

……

……

「…恐怖…」

……

「…貴方は、
 …恐怖に
 取り憑かれているの、だな」

……

「…そうかも、しれん
 何とでも言うがいい
 恐怖は人を動かす動機の一つ
 …私はこのコミュニティの長
 産まれた時から、そのように、
 定められていた
 …先代から受け継ぎ
 なおも継続していくためには
 必要なことをし、
 無駄なことは、しない」

……

「…話を戻しても
 よろしいですかな
 …昨夜、
 私は彼女に
 月の話をしたまで
 肉体交渉もなければ、
 情報に触れるようなことは、何も…」

「月…」

「そう、月の話です
 そんな一時を
 彼女と
 共有したまで」

「…あぶない
 …あぶない
 貴方は、知り過ぎている
 …今日は、
 これにて、幕引きとしましょう
 明日、
 また、
 同じ時間に」

「…不無」

「…娘よ
 今夜も同じく
 彼についておれ
 粗相の、ないようにな」

「……
 …は、い」

今日の交渉の
傍聴者であり
立会者でもある
君は

首をかしげ
何が話されたのか
何が起ころうとしているのか
理解しようとするが
理解には至らない

一方、

木製の長机は
書記として
しっかりと役目をこなす

全ての会話と、
全ての映像を
記録し

壊さぬよう
気をつけながら
目安箱に収めた
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