75 / 568
交渉
月
しおりを挟む「温かい…」
ベッドに潜り込むと
君はそう囁いた
白い長髪の
オトコは
左隣におり
右に少し傾いた姿勢で
君を眺め
笑顔を作る
「…この部屋は
とても良い
天窓があるのが
とても良い、な」
「は…い
そう、思います…」
君はなるべく
距離を取ろうとする
右端へ、
右端へ、
もぞ、
もぞ、
もぞと
…でも
お布団を引っ張っちゃ駄目
粗相は、いけない
「…可愛い娘だ、
美しい娘だ、
可憐で、細く、
しなやかな」
「…有難う
…御座います…」
「まだ、怖いかな?
オトコだものな、
私は…」
「…は…い、
少し…」
「…天窓、
天体…
…月、
そう、
《月の話》をして、あげよう
…この距離なら、
聞こえるかな?」
空気を読む男だ
空気を視る男だ
聡明
博学
理知
そんな言葉がぴったり似合う
何故なら
彼も少し
左へ
左へ
気づかれぬように
「…おつき、さま?」
「そう、月の、話」
「…」
「…2つ、話してあげよう
先ずは不思議な天体である
ということについて」
「…」
「私の村と
月の距離、
それを1としよう
大きさも1でいい
…
私の住む星の大きさは関係なし、
観測者の位置はゼロとして…」
「…?」
君はベッドの中
可愛い仕草で
首をかしげる
…何のこと?
仕草がそう言っている
「1をゼロで
割り算すると、どうなるかな?」
「…1をゼロで…?
…無限大、です、か?」
「そうだな」
「…?」
「では、同じ条件で
観測者と太陽の距離を400としよう
大きさも同じく400として…」
「…」
「400をゼロで割る
答えは?」
「同じ…です…」
「そう、その通り」
「…??…??」
「…
私の村から
月までをの距離を1とする
すると
太陽までは400の距離、
…
では、大きさは?
というと
これまた月が1
太陽が400
ぴったりと、一致する」
「…ふし、ぎ…」
「…だろう?
《なぜ、一緒になるのだろうか》
私の村の66人
読者家達は
読んで、
読んで、
読み尽くした
昔話に至るまで、
読んでいる音が聞こえるほどに
読んで、
読んで、
さらに読んだ」
「…答えは
…見つかったのですか?」
「…答えは、
…出なかった、
いくら読んでも、
いくら探しても、
何故だと、思うね?」
「…何故、です…?
おしえ、て」
「…簡単なことだった、
答えが出ないことが
そもそもの答えだった
…
…
結論は、こう
あれは、月は、
ある観測者が
造りだしたもの
それ以外に答えがない」
「…つくり、もの…」
「そう、造りもの」
「……」
「…太陽が、
淋しくないようにと
この村に住む、
この星に住む人々が、
寂しくないようにと
造られた、もの」
「素敵な…
お話…
です……………」
「陰のマークに、
陽をポツンと
陽のマークに、
陰をポトリと
そしてゼロで割る
答えは、どうかな?」
「…おな、じ……☓……」
「そうだ、
その通り、
そして、
2つが1つになる
瞬間すら
観測者は用意した
《月蝕》と《日蝕》
2が1になり、
陰と陽が
混ざり合う
特別な瞬間を」
「……☓……」
「そして…」
「……z……」
「…?」
「もっと…………
きか、せて………z……」
「……」
「……z……」
「…もう、お休み…
疲れているんだろう
…お月様の話は
また、今度、だ
良い夢を、な
…おやすみ」
…
…
z……オヤスミ…
z……ナサイマセ…
z……かり、うど…サマ…
…
嵐は止み
月が顔を出す
月は言う
おっと、
あぶない
あぶない
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる