《瞑想小説 狩人》

瞑想

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交渉

オモテナシ

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いつも通りの速度で
いつも通りの扉が開く

歪に曲がった部分があるのだろう
鉄と鉄がこすれる音がする

いつも通りの仮面を被った
いつもの従者がそこに居り

「来い、長老がお呼びだ」
抑揚のない
いつもの言葉で呼びつける

…今日は
 交渉の日ではなかったのか
 今日も
 私は輪番の巫女として

 撫でられ、
 愛でられ
 異物で犯され、
 貫かれるのだろうか

長老は秋の間にいるという
仮面の従者がそう告げる
君は首をかしげてみた

彼は、長老は
隣の部屋か
そのまた隣の部屋に
君を呼びつけるのが通例だ

場所が変わると
碌な事がない

その記憶に
カラダが反応してしまう
嫌悪感
恐怖
畏怖
それらが脳髄にやってくる


…《懲罰房》で散々な思いをした
  言葉責めの日があった

   《機械室》なる一室で
  永久機関に一晩中
  襲われたこともあった

   《沈黙の部屋》での苛烈な1夜は
    彼女の記憶から消されてしまった
    一切の記録はかき消され、
    記録に残ることもない
    故に、ここに記載する必要もない

………

大広間を抜け、
秋の間へと向かう

広間にはたくさんの
祈り女がおり
ストーンヘンジで会った
あの祈り女が君に気づく

軽く目配せをし
ウィンクをした彼女は
紫色のスープを
赤色のお椀に入れて運んでいる

その脇で
オレンジ色の肉を
藍色の皿で運ぶ祈り女が

黄色と青にぶつかったため
緑色は心配していた

…秋の間に
 入るのは初めてだ

構造は単純で
春の間の
対角線に有ること以外
何も変わったところがない

秋の間
その一番奥には
大浴場があり
客人のために使われるとのこと

因みに…
階位の高い祈り女は
シャワールームのある
部屋を与えられ

それ以外のものは
共同の夏風呂を使用する

大浴場から湯気が立ち上っている

もく
もく
もくと

火事かと思わんばかりに

もく
もく
もくと

君は廊下を歩きながら
その湯気が濃くなり、
視界が悪くなっていくのを感じた

従者は浴場の手前に
長老の姿を確認する

おもてなしのひとつ
風呂支度の出来栄えに
満足げな様子

「連れて参りました」
従者は一言だけを放ち、
そして即座に回れ右をする

長老は訝しげな
表情を浮かべ
君の足先から
頭のてっぺんまで
舐めるように見る

調度品を確認するかのように

君は恥ずかしくなる

…そんなに見ないでくだ、さい
 わたしは、ものでは
 ありま、せん

「フム」

「……」

「…
 輪番の、
 巫女よ、
 本日の交渉は、
 未だ平行線」

「……」

「故に、
 明日へ、
 明後日へと、
 持ち越しとなった
 その客人は今
 秋の間の一室、
 《特別室》で待たせている」

君は首をかしげ
長老の次の発言を待つ

「客人は言う
 特別なものは要らない、
 と
 食事は済ませてきた、
 と
 願わくば、風呂で一休み
 そして
 美しいものに
 囲まれて眠りたい、
 と
 そう言った」

「……?」

「そこでだ」

「お前が今夜
 彼の
 全般を相手しろ
 全般、だ」

「ぜん、ぱん…」

「勿論、
 失礼のないように
 心がけろ
 交渉に影響する
 わかった、な?」

「……」

「返事は?」

「は…い」

「良し、
 先ずは
 風呂をもてなすことだ
 もう一度言うが
 交渉は明日へと、
 明後日へと続く
 機嫌を損ねでもしたら
 コミュニティの痛手になる、
 大きな傷になる、
 そのような訪問客だ
 覚えておけ
 よいな?」

「…そんな、
 お風呂の
 お世話
 なん、て
 わた、し…
 どうすれば…」

君は頬が紅に染まる
甲月の間
いつも、
いつも恥ずかしがっている
君は可愛い
本当に

「何も難しいことはない、
 …彼を浴場に案内し
  服を脱ぐのをお手伝い、
  お前は襦袢一枚になり
  一緒に中へ入るのだ、
 …アトは彼の
  話しを聞いて、
  しっかり聞いて、
  リクエストがあれば
  それを実直にこなす、
  わかる、な?」

「……」

「…返事は?」

「は…い
 …私でなくては
 ならない、の
 ですか…?」

「…そうだ
 何故か?
 美しいものに触れたいという
 その彼に
 最も美しいものを
 差し出すのだよ
 …さしだし、
  刺しだし、
  挿し出す、
  ことになるかもしれんが」

「……」

「…行け、
 彼の
 部屋に」

「…は、い」

…………

促されるまま
もう1人の
側近とともに
特別室へと向かい
そのドアをノックする

「コン、コン、コン」

開いたドアの向こう側、
長老よりも少し若い、
ロマンスグレーの
初老のオトコが
君に微笑む

声は発さないが
その表情は「陽」
温かい微笑み、だ

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