70 / 549
交渉
オモテナシ
しおりを挟むいつも通りの速度で
いつも通りの扉が開く
歪に曲がった部分があるのだろう
鉄と鉄がこすれる音がする
いつも通りの仮面を被った
いつもの従者がそこに居り
「来い、長老がお呼びだ」
抑揚のない
いつもの言葉で呼びつける
…今日は
交渉の日ではなかったのか
今日も
私は輪番の巫女として
撫でられ、
愛でられ
異物で犯され、
貫かれるのだろうか
長老は秋の間にいるという
仮面の従者がそう告げる
君は首をかしげてみた
彼は、長老は
隣の部屋か
そのまた隣の部屋に
君を呼びつけるのが通例だ
場所が変わると
碌な事がない
その記憶に
カラダが反応してしまう
嫌悪感
恐怖
畏怖
それらが脳髄にやってくる
…《懲罰房》で散々な思いをした
言葉責めの日があった
《機械室》なる一室で
永久機関に一晩中
襲われたこともあった
《沈黙の部屋》での苛烈な1夜は
彼女の記憶から消されてしまった
一切の記録はかき消され、
記録に残ることもない
故に、ここに記載する必要もない
………
大広間を抜け、
秋の間へと向かう
広間にはたくさんの
祈り女がおり
ストーンヘンジで会った
あの祈り女が君に気づく
軽く目配せをし
ウィンクをした彼女は
紫色のスープを
赤色のお椀に入れて運んでいる
その脇で
オレンジ色の肉を
藍色の皿で運ぶ祈り女が
黄色と青にぶつかったため
緑色は心配していた
…秋の間に
入るのは初めてだ
構造は単純で
春の間の
対角線に有ること以外
何も変わったところがない
秋の間
その一番奥には
大浴場があり
客人のために使われるとのこと
因みに…
階位の高い祈り女は
シャワールームのある
部屋を与えられ
それ以外のものは
共同の夏風呂を使用する
大浴場から湯気が立ち上っている
もく
もく
もくと
火事かと思わんばかりに
もく
もく
もくと
君は廊下を歩きながら
その湯気が濃くなり、
視界が悪くなっていくのを感じた
従者は浴場の手前に
長老の姿を確認する
おもてなしのひとつ
風呂支度の出来栄えに
満足げな様子
「連れて参りました」
従者は一言だけを放ち、
そして即座に回れ右をする
長老は訝しげな
表情を浮かべ
君の足先から
頭のてっぺんまで
舐めるように見る
調度品を確認するかのように
君は恥ずかしくなる
…そんなに見ないでくだ、さい
わたしは、ものでは
ありま、せん
「フム」
「……」
「…
輪番の、
巫女よ、
本日の交渉は、
未だ平行線」
「……」
「故に、
明日へ、
明後日へと、
持ち越しとなった
その客人は今
秋の間の一室、
《特別室》で待たせている」
君は首をかしげ
長老の次の発言を待つ
「客人は言う
特別なものは要らない、
と
食事は済ませてきた、
と
願わくば、風呂で一休み
そして
美しいものに
囲まれて眠りたい、
と
そう言った」
「……?」
「そこでだ」
「お前が今夜
彼の
全般を相手しろ
全般、だ」
「ぜん、ぱん…」
「勿論、
失礼のないように
心がけろ
交渉に影響する
わかった、な?」
「……」
「返事は?」
「は…い」
「良し、
先ずは
風呂をもてなすことだ
もう一度言うが
交渉は明日へと、
明後日へと続く
機嫌を損ねでもしたら
コミュニティの痛手になる、
大きな傷になる、
そのような訪問客だ
覚えておけ
よいな?」
「…そんな、
お風呂の
お世話
なん、て
わた、し…
どうすれば…」
君は頬が紅に染まる
甲月の間
いつも、
いつも恥ずかしがっている
君は可愛い
本当に
「何も難しいことはない、
…彼を浴場に案内し
服を脱ぐのをお手伝い、
お前は襦袢一枚になり
一緒に中へ入るのだ、
…アトは彼の
話しを聞いて、
しっかり聞いて、
リクエストがあれば
それを実直にこなす、
わかる、な?」
「……」
「…返事は?」
「は…い
…私でなくては
ならない、の
ですか…?」
「…そうだ
何故か?
美しいものに触れたいという
その彼に
最も美しいものを
差し出すのだよ
…さしだし、
刺しだし、
挿し出す、
ことになるかもしれんが」
「……」
「…行け、
彼の
部屋に」
「…は、い」
…………
促されるまま
もう1人の
側近とともに
特別室へと向かい
そのドアをノックする
「コン、コン、コン」
開いたドアの向こう側、
長老よりも少し若い、
ロマンスグレーの
初老のオトコが
君に微笑む
声は発さないが
その表情は「陽」
温かい微笑み、だ
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる