《瞑想小説 狩人》

瞑想

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《才児》《クリップ責め》《蝋燭責め》

早朝と深夜の狭間で

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(…フム、今宵の遊戯は
 ここで終わりのようだ
 …
 良く、最後まで
 ご覧になれましたな
 さすが、と申しておきましょう)

(…強がって言うわけじゃないが
 …
 有り難いものを
 見させてもらった
 文字通りの、意味、でな)

(…文字通り)

(…そうさ
 俺は殺意を持って
 コミュニティを離れた
 その気持ちが
 より明確になる、
 強くなる、
 きっかけは
 さらなるきっかけで発芽し
 芽をつけ、
 大きく花咲くことだろう)

(…詩的で、よろしい
 では、スクリーンを
 切り替えましょう
 もう少し、心暖まるもので
 あればよいのですが、な)

~~~
~~~


闇夜の端に構えられた
小さくもなく
大きくもない
素っ気ないテントの
傍らで

誰かが矢尻を研いでいる

大きな体躯
しかし、しなやかで
柔らかい股関節と肩関節を
持っていることが見てとれる
大きく、
柔らかく、
力強い筋肉、
それらが強調し、
見事なボディバランスを
造っている

ウェストは細く
胸周りと背中
肩の筋肉が優雅に発達し

《機能を突き詰めたなら
 美にたどり着く》
そんなありもしない
哲学を示しているようだった

…どこかで、
 見たことのあるような
 ヤツだ

コミュニティの夜
そんなワンシーンなのだろう

49人の祈り女は
それぞれ
お気に入りの狩人のテントに潜り込む

《夜は自分を慰めること》

夜はいつも、こう
晴れの夜も
曇りの夜も
多少の雨でも

今夜はあいにくの
晴れ
太陽が出ていないことから
「天気の悪くない夜」
この表現が正解と言える

…睡眠時間を削ってまで
 何を…

他のテントからは
オトコとオンナの睦み合う声

端のテントにしてもらったことは
本当に良かったと
賢明な判断だったと
彼は胸を撫で下ろす

彼はぶつぶつと
何事か呟きながら
矢尻を研ぐことに
集中しているようだ

…集中
…集中

時間を気にするな
今は、俺
俺だけの時間
没頭しろ
それが今日の行動に繋がる

《チャンスは
 準備のできているものに舞い降りる》
《準備は必ず報われる》

未来に関する2つの名言
金言が脳に舞い降りたが
彼はそれを否定する

…違うな
 今、
 ここ、
 今に没頭すること
 それが、生

気づけば
彼の呼吸の様相が変わっている

4秒、吸い
4秒、止め
4秒、吐き
4秒、止める

そのリズムで間断なく
実施されていた呼吸はいつの間にか
静かになり
もっと静かになり

今は
肩、
僧帽筋のほんの一部
その上下運動だけで
十分に酸素を吸収し
二酸化炭素を排出しているようだ

~真息

マコトの呼吸
真息はヨーガの
仙道の極みの技術
彼はそれを知っている

脳波が周波数を下げ
もっと下げ

矢尻を研ぐその指先のリズム
単調な作業の連続

それが終わると

目を閉じ
安楽座で座り
簡単な印を指先で組んだ

時間は概念として
無意識の中に存在しているものの
彼の顕在意識には上らず
実感がないものになる

(…大したものだ)

(…よく、おわかりになれますな)

彼のテントに
祈り女がやってくる
ほろ酔いの足取り

何に酔っているのか
酒か
嫌、違うな
ケシの類だ
そんなものもあったり
なかったりと聞いている

上気した顔は
紅色に染まっており
照れているのか
先刻まで、他の狩人と
睦み合っていたのか
判別不能なたたずまい

「…こんばん、は」
彼女が言う

声が震えているな

緊張しているのか
照れているのか

何にせよ、この時刻に尋ねてくるのだ
目的は一つしかあるまい

「…間違うな
 今は早朝だ」

彼女の身体は
そのオトコの強く
はっくりした口調に
瞬間で縮み上がった

「…!?」

「…間違うな、今は早朝だ
 お前には深夜であっても
 …
 闇はその時
 その意識で
 性質を変えるもの
 夜と思えば怠惰に至り
 朝と思えば希望に満ちる」

「…」

「…お前は邪魔だ、去れ」

才児が言う
(…この台詞が、好きでね
 何度か、嫌、何度も
 見てしまいます)
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