《瞑想小説 狩人》

《才児》《クリップ責め》《蝋燭責め》

罠

しまった
ミスをした

完全に自分を見失っていた
情けない

俺は永久機関の村を離れ
ひとまず北へ向かった
幾つかの山を越え
谷を越えた時

誰かが設置したのであろう
罠に右足を噛みちぎられた

…畜生
…畜生

前日までの洞穴に
戻るのは難儀したが
半日をかけ
何とか辿り着く

痛みは…
増すばかり

気温は？　
　何とかなる、
　昨日仕留めた鳥の羽毛がここに
食事は？
　何とかなる、
　一日一食分で数日は
水は？
　これは問題だ
　何とかなる、とは言い難い

…終わったことは仕方がない
　多分、あの演説にでも
　酔っていたんだろう

…自分自身に酔っていたのだろう
　情けない

（…調子が良い時ほど
　注意することよ）

…祈り女よ
　そう、言ってくれ
　もっと先に
　罠にかかる前に

…畜生
…さて、
…どうしたものか

…もう一度、自分を
　俯瞰的に眺める時間とでもするさ
　しかし、相当、痛む
　ズキズキと
　ジクジクと
　半日経ってこれでは
　明日はもっと痛むな
　間違いなさそうだ

…微小生物どもが
　悪さをしなければいいのだが
　免疫力を信じるしかない
　自然免疫の、力を
　
…座る、寝る
　これを繰り返すしかないだろう
　回復の王様
　「瞑想」
　「睡眠」
　これを繰り返す
　しかない

…しかし…
　眠れるだろうか
　この痛みの中で
　
…やってみるしかない
　選択肢は他にないのだから

…水、水分は
　どうしたものか

…ええい
　かの親鸞も飲まず食わずで
　どうのこうのとしていたと言う
　ならば、なるようになるまで

…眠ってやる

～～～

やはり、
な

熱、
ひどい熱

患部だけじゃない

頭
頭の中が発熱している

炎症
ミトコンドリアの損傷
テロメア

根本的なもの
根源的なものが
痛んでいるのが
解る

…いよいよだな

俺はそう思い
右足の状態を
ひとまず確認する

患部は熱を発し
真夏の石畳よりも
もう少し熱くなっている

額に手を置いてみれば
手のような
末端組織を切り離し
もっと
大事なものを守ろうと
身体が反応しているのが
確認できる

手足冷たく
前額部は発熱し
著しい熱

…回復
　回復を待つしかない
　瞑想
　睡眠

…瞑想
　考えるな
　そこもエネルギーロスになる
　思考を手放せ
　可能な
　限りで
　いいから…

…祈り女
　オンナ
　彼女

…指先
　仕草
　舞い
　
…りんばん
　ちょうろう
　こうげつ
　あな
　ほらあな
　かのじょの

…いったい
　いま
　どう

…してる

～
～☓
～☓☓

…全く
　困ったものだ
　聞いていたのとは随分、違う
　仕方なし　

…《ヒフミヨイマワリテメクルムナヤコト
　アウノスヘシレカタチサキ》

…《ノウボウアカシャギャラバヤオンアリキャ
　マリボリソワカ
　ノウボウアカシャギャラバヤオンアリキャ
　マリボリソワカ
　ノウボウアカシャギャラバヤオンアリキャ
　マリボリソワカ
　ノウボウアカシャギャラバヤオンアリキャ
　マリボリソワカ》

…起きなさい
　狩人よ
　この随想の著者よ

…少し
　痛みが
　引いた
　気がする