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第127話 マリの目覚めと大砦防衛戦
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マリ達が大砦を出発し、2日目の朝。
遂にマリが目覚めた。
「……あれ? ジャック? メリーさん? ヨハネ? ……って此処は……何処?」
馬車を停め、夜営していたメリー達はマリが目覚めた事に喜びの声を上げた。
「陛下!? メリー! ヨハネ! 陛下がお目覚めになったぞ!」
1番に気付いたジャックの言葉に歓喜したメリーはマリの胸に飛び込む。
「陛下! 良かった……良かったです!」
「ちょっ、メリーさん苦しいよ……。 あれ……? 私、そういえば途中調子が悪くなったんだよ……ね?」
マリはメリーに抱きつかれながら、倒れる前の事を思い出した。
「そうだよ、マリ。 すまない、少し目を見せてくれるかい」
まだ身体を引きずるヨハネがマリの目を覗き込む。
「わっ!? 何々、近いよ! って、ヨハネ怪我したの? 大丈夫!?」
「ふふ、私は大丈夫さ。 ふぅ……良かった、とりあえず完全に呪いは引っ込んだみたいだね。 落ち着いたら姉上に診てもらおう」
ヨハネの言葉にジャックとメリーは胸を撫で下ろす。
そんな3人の反応に困ったマリは周囲を見渡し、4人しか居ない事に気付いた。
「えぇ?? ねぇ、本当に何があったの? メイド暗部部隊の皆は?」
3人は顔を見合わせ、事前に覚悟していた事をマリに説明する。
「陛下……全ては私の責任であり、判断です。 先ずは聞いて下さい」
メリーがマリの意識が無い間に起きた事を話し始めた。
◆◇◆
ーーーーという事態になり、陛下が望まないのを承知で私達だけで先にエントン王国の国境へと向かっています」
メリーの説明中、マリの表情はとても固い。
「サードの死は全て私のせいだ。 ……すまない」
何かを押さえ付けているかのような感情をヨハネは察していた。
「……ヨハネは、重傷を負ってまで私を助ける為に戦ってくれた。 貴方のせいじゃない……メリーさんのせいでもない。 全部、妖精ティナ……いや、ルミニスに迂闊に呪いを掛けられた私のせいだよ」
マリの怒りは全て己に向けられていた。
目覚めたばかりの弱々しい拳を握り込み、爪が食い込んだ所からは血が滴る。
「陛下、それは違います! 非があるのならば、それはルミニス達にあります。 決してその様に言われないで下さい……サードが、サードが浮かばれません!」
メリーの訴えにマリは力無く座り込む。
「うん……そうだね。 ごめんね、メリーさん。 辛い嫌な決断ばかりさせてごめんね」
「いえ、私の事等良いのです。 貴女が生きていて下されば……」
抱き合う2人をジャックとヨハネは黙って見守っていた。
◆◇◆
大砦防衛戦が始まって2日目。
マリ達が馬車で去った日の夜に、ゴルメディア帝国の兵士達が大砦に姿を現し何やら狼狽えながら攻めてきた。
当然、そんな浮足立った兵士達が赤い死神と新重近衛団達や黒騎士団達の相手になる筈も無く。
全くの被害無しで朝を迎えた。
1日目も拍子抜けな程に弱い兵士達しか攻めてこず、ルニア達は肩透かしの防衛戦を終わらせ2日目の朝にも攻めて来た兵士達を蹴散らした所だった。
「いや、弱すぎじゃないのか? なぁ、デラン殿」
防衛戦なのに、最早大砦から出て向かってくる敵兵士達を倒す事に飽き飽きしたルニアがぼやく。
「元ゴルメディア帝国の騎士としてお恥ずかしいばかりです。 言い訳になりますが、ルニア侯爵殿とラリー殿達が強すぎるのです」
デランの言う通りゴルメディア帝国の兵士達は弱く無く、むしろ精強である。
しかし、残念過ぎる事にマリがおこなった帝国崩しの結果最強戦力の黒騎士団を丸ごと失い、次に強い近衛師団の団長も副団長も死んだのだ。
それに、ルニア達は知らないがゴルメディア帝国側の予定では大砦の味方と合流し挟み撃ちにする筈だった。
しかし、到着してみれば大砦は陥落し、強すぎる赤い死神と達人集団の老騎士達に蹂躙された挙げ句味方だった筈の失踪した黒騎士団5000人が敵になっているのだ。
これで最強の大砦を落とせと言われる方が無理だ。
現に後方から指示を飛ばしているブラックは唾を撒き散らし、ただひたすらに兵士達を突撃させていた。
「はぁ……もう強者はいないのか。 民達も全員エントン王国に向けて出立したし、明日にはもう私達も帰るか?」
「はは、ルニア侯爵殿のおかげで死者は1人もおりません。 このまま無事にエントン王国に到着出来たら陛下もきっとお怒りにならないですよ」
「そうだったら良いんだがな。 息子のルカも世話になってるし、無様な結果には出来ない。 よし、気を引き締めよう! まだメリー殿が言っていた強い精霊人形達も来てないし、妖精とやらも見てないからな」
ルニアは巨大な大剣を振り回し、また突撃して来た可哀想な敵兵士達に向かって走る。
「その時の為の肩慣らしになってもらおうかぁぁぁぁ!」
大砦防衛戦は今の所、エントン王国側の圧倒的優位で進んでいる。
遂にマリが目覚めた。
「……あれ? ジャック? メリーさん? ヨハネ? ……って此処は……何処?」
馬車を停め、夜営していたメリー達はマリが目覚めた事に喜びの声を上げた。
「陛下!? メリー! ヨハネ! 陛下がお目覚めになったぞ!」
1番に気付いたジャックの言葉に歓喜したメリーはマリの胸に飛び込む。
「陛下! 良かった……良かったです!」
「ちょっ、メリーさん苦しいよ……。 あれ……? 私、そういえば途中調子が悪くなったんだよ……ね?」
マリはメリーに抱きつかれながら、倒れる前の事を思い出した。
「そうだよ、マリ。 すまない、少し目を見せてくれるかい」
まだ身体を引きずるヨハネがマリの目を覗き込む。
「わっ!? 何々、近いよ! って、ヨハネ怪我したの? 大丈夫!?」
「ふふ、私は大丈夫さ。 ふぅ……良かった、とりあえず完全に呪いは引っ込んだみたいだね。 落ち着いたら姉上に診てもらおう」
ヨハネの言葉にジャックとメリーは胸を撫で下ろす。
そんな3人の反応に困ったマリは周囲を見渡し、4人しか居ない事に気付いた。
「えぇ?? ねぇ、本当に何があったの? メイド暗部部隊の皆は?」
3人は顔を見合わせ、事前に覚悟していた事をマリに説明する。
「陛下……全ては私の責任であり、判断です。 先ずは聞いて下さい」
メリーがマリの意識が無い間に起きた事を話し始めた。
◆◇◆
ーーーーという事態になり、陛下が望まないのを承知で私達だけで先にエントン王国の国境へと向かっています」
メリーの説明中、マリの表情はとても固い。
「サードの死は全て私のせいだ。 ……すまない」
何かを押さえ付けているかのような感情をヨハネは察していた。
「……ヨハネは、重傷を負ってまで私を助ける為に戦ってくれた。 貴方のせいじゃない……メリーさんのせいでもない。 全部、妖精ティナ……いや、ルミニスに迂闊に呪いを掛けられた私のせいだよ」
マリの怒りは全て己に向けられていた。
目覚めたばかりの弱々しい拳を握り込み、爪が食い込んだ所からは血が滴る。
「陛下、それは違います! 非があるのならば、それはルミニス達にあります。 決してその様に言われないで下さい……サードが、サードが浮かばれません!」
メリーの訴えにマリは力無く座り込む。
「うん……そうだね。 ごめんね、メリーさん。 辛い嫌な決断ばかりさせてごめんね」
「いえ、私の事等良いのです。 貴女が生きていて下されば……」
抱き合う2人をジャックとヨハネは黙って見守っていた。
◆◇◆
大砦防衛戦が始まって2日目。
マリ達が馬車で去った日の夜に、ゴルメディア帝国の兵士達が大砦に姿を現し何やら狼狽えながら攻めてきた。
当然、そんな浮足立った兵士達が赤い死神と新重近衛団達や黒騎士団達の相手になる筈も無く。
全くの被害無しで朝を迎えた。
1日目も拍子抜けな程に弱い兵士達しか攻めてこず、ルニア達は肩透かしの防衛戦を終わらせ2日目の朝にも攻めて来た兵士達を蹴散らした所だった。
「いや、弱すぎじゃないのか? なぁ、デラン殿」
防衛戦なのに、最早大砦から出て向かってくる敵兵士達を倒す事に飽き飽きしたルニアがぼやく。
「元ゴルメディア帝国の騎士としてお恥ずかしいばかりです。 言い訳になりますが、ルニア侯爵殿とラリー殿達が強すぎるのです」
デランの言う通りゴルメディア帝国の兵士達は弱く無く、むしろ精強である。
しかし、残念過ぎる事にマリがおこなった帝国崩しの結果最強戦力の黒騎士団を丸ごと失い、次に強い近衛師団の団長も副団長も死んだのだ。
それに、ルニア達は知らないがゴルメディア帝国側の予定では大砦の味方と合流し挟み撃ちにする筈だった。
しかし、到着してみれば大砦は陥落し、強すぎる赤い死神と達人集団の老騎士達に蹂躙された挙げ句味方だった筈の失踪した黒騎士団5000人が敵になっているのだ。
これで最強の大砦を落とせと言われる方が無理だ。
現に後方から指示を飛ばしているブラックは唾を撒き散らし、ただひたすらに兵士達を突撃させていた。
「はぁ……もう強者はいないのか。 民達も全員エントン王国に向けて出立したし、明日にはもう私達も帰るか?」
「はは、ルニア侯爵殿のおかげで死者は1人もおりません。 このまま無事にエントン王国に到着出来たら陛下もきっとお怒りにならないですよ」
「そうだったら良いんだがな。 息子のルカも世話になってるし、無様な結果には出来ない。 よし、気を引き締めよう! まだメリー殿が言っていた強い精霊人形達も来てないし、妖精とやらも見てないからな」
ルニアは巨大な大剣を振り回し、また突撃して来た可哀想な敵兵士達に向かって走る。
「その時の為の肩慣らしになってもらおうかぁぁぁぁ!」
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