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第28話 ルーデウスの奮闘 その1
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時は遡り、マリ達が辺境伯領を出発した頃エントン王国の王城には多くの兵士と女貴族が集まっていた。
城の広間にある玉座に座るのは、マリの弟ルーデウスだ。
「皆さん、急ぎ集まって下さりありがとうございます。王城にお呼びした理由は聞いているかと思いますが、今一度説明させて頂きます」
ルーデウスの話を女貴族達は黙って聞き続ける。
「数日後、東にあるドック王国と西のキャット王国が攻めてきます。……最悪、南のゴルメディア帝国も参戦する可能性があります」
ルーデウスがここまで話して、ようやく女貴族達の顔色が変わった。
「ルーデウス殿下、私の領地は農業地区です。 敵の兵数に関係無く、守りには適しません……策はあるのですか?」
最初に発言したのは西の農業地区を治めるイサミ子爵だ。
王代理のルーデウスを問い詰めるイサミ子爵の背後には、共に領地を治める多くの女爵達が不安げな顔で立っている。
「イサミ子爵……進言感謝します。 策はあります、西の領地にある畑を全て収穫して王都に運んで下さい。 食料が要です」
「……全て、ですか。 かしこまりました」
イサミ子爵の顔は歪み、明らかに不満を表しているが王代理のルーデウスに逆らうつもりは無いようだ。
「ちょい待ってんか。 ルーデウス殿下、うちの東側は産業地区や。そっちのイサミはんみたいに、じゃあ全部王都に運んだろか~っていう訳にはいかんですよね?」
今度は東の商業地区を治めるメル子爵がルーデウスの発言に食って掛かる。
「メル子爵、分かっています。 在庫で使える武器や鎧類は王家が買い取りますし、食料も買います。 それ以外は全て他国の商会に売り払うか、倉庫を借りて移動して下さい」
「はぁ~~~!? なにをぬかしてますねん! そんな簡単にはいきませんよ!? そもそも、直ぐ隣の国が攻めて来るんやろ?! 他国に移動なんて出来るわけ無いやないですか! それなら、地理の分かっとるうちの領地で防衛戦した方が勝ち目があるわ!」
ルーデウスの発言に、更にメル子爵は激怒する。
「メル子爵!! ルーデウス殿下は王代理! 発言には気を付けて頂こうか!」
そのメル子爵を止めるのは、執事長のウォンバットだ。
「ウォンバット、大丈夫です。 メル子爵、本当にごめんなさい。 勝つには籠城しかありません……敵の兵は恐らく合計で2万人を越えるでしょう」
「それなら、うちの商会で傭兵を追加で雇ったらええやないですか! エントン王国全体の兵士と傭兵が集まれば東と西を守り切るのなんて楽勝と違いますか?」
メル子爵の言葉は尤もと云える。
小国群の中では最強と云えるエントン王国に、兵力で負ける2国が同時に攻めて来ても難なく持ちこ堪えれるだろう。
攻めてくるのが、2国だけなら。
「もし、ゴルメディア帝国が参戦したら兵の総数は私達を軽く凌駕するでしょう。 そうなれば、戦線を広げた我々は各個撃破され終わりです」
ルーデウスの冷静な指摘にメル子爵は押し黙る。 怒りと焦りのあまり、ゴルメディアの存在を失念していたのを恥じた。
「そろそろ宜しいですかな? ルーデウス 殿下」
ルーデウスの前に進み出たのは、エントン王国騎士団長のボルガスだ。
漆黒の鎧に身を包んだ歴戦の老戦士であり、エントン王国最強のルニア辺境伯の夫である。
「はい、ボルガス騎士団長。 作戦についてですね」
ルーデウスは毅然と返事をする。
「お集まりの皆様にお伝え致す。 この後、領地の民全てと共に食料を持てるだけ持って王都に避難して下され。 兵は全て私の指揮に入っていただく」
女貴族達がざわめき立つ。
全ての民となれば10万に近い人数になるからだ。
「皆さん安心して下さい。 王城を開ける事で、全ての民を避難させれる事はウォンバットに確認済みです。 私達は城壁に陣取り、援軍が来るまで徹底抗戦します」
「援軍……まさか、この短時間で既に辺境伯へ伝令を?」
1人の女爵が呟く。
「そのまさかです。 ルーデウス殿下は、文が届いたその場で我が妻へ伝令を飛ばしました。 急げば、10日で援軍が来るでしょう」
騎士団長ボルガスの言葉に女貴族達や兵士達は喜ぶ。
それなら勝てると。
エントン王国最強のルニア辺境伯が精鋭を連れて来るとなれば、例えゴルメディア帝国が参戦しても勝てるだろう。
「お待ち下さい!! ルーデウス殿下、女王陛下が辺境伯の元に行かれているのは承知の筈。 陛下が王国の危機を知れば即座にお戻りになられるでしょう……それは王国の未来を思うと危険では?」
場の空気が緩んだと思ったその時、1人の少年がルーデウスの前に立った。
エントン王国の唯一にして、初めての爵位を授かった貴族。
アーサー男爵だ。
「アーサー男爵、その通りです。 姉上が知れば、必ず危険を省みず戻って来られるでしょう。 敵にそれを察知されると、非常に危険です。 既に敵は姉上が王城に居ない事を知っているのですから」
「殿下! なら、尚更ではないですか! エントン王国の行く末を思うなら、安全な辺境伯の元に滞在して頂くべきです」
「ふふ、ありがとうございますアーサー男爵。 でも、きっとあの姉上なら何を言っても知れば帰って来られるでしょう。 なので、ちょっとした策を考えました」
「策でございますか……?」
ルーデウスが手を鳴らすと、メイド達があるモノを持ってきた。
そのモノを見て女貴族達は目を丸くし、イサミ子爵は苦笑いをしている。 メル子爵に至っては腹を抱えて笑っていた。
そして、アーサー男爵は顎が外れんばかりに驚愕するのであった。
こうして、女王不在で戦争の準備は進む。 己達の王国を守る為に。
城の広間にある玉座に座るのは、マリの弟ルーデウスだ。
「皆さん、急ぎ集まって下さりありがとうございます。王城にお呼びした理由は聞いているかと思いますが、今一度説明させて頂きます」
ルーデウスの話を女貴族達は黙って聞き続ける。
「数日後、東にあるドック王国と西のキャット王国が攻めてきます。……最悪、南のゴルメディア帝国も参戦する可能性があります」
ルーデウスがここまで話して、ようやく女貴族達の顔色が変わった。
「ルーデウス殿下、私の領地は農業地区です。 敵の兵数に関係無く、守りには適しません……策はあるのですか?」
最初に発言したのは西の農業地区を治めるイサミ子爵だ。
王代理のルーデウスを問い詰めるイサミ子爵の背後には、共に領地を治める多くの女爵達が不安げな顔で立っている。
「イサミ子爵……進言感謝します。 策はあります、西の領地にある畑を全て収穫して王都に運んで下さい。 食料が要です」
「……全て、ですか。 かしこまりました」
イサミ子爵の顔は歪み、明らかに不満を表しているが王代理のルーデウスに逆らうつもりは無いようだ。
「ちょい待ってんか。 ルーデウス殿下、うちの東側は産業地区や。そっちのイサミはんみたいに、じゃあ全部王都に運んだろか~っていう訳にはいかんですよね?」
今度は東の商業地区を治めるメル子爵がルーデウスの発言に食って掛かる。
「メル子爵、分かっています。 在庫で使える武器や鎧類は王家が買い取りますし、食料も買います。 それ以外は全て他国の商会に売り払うか、倉庫を借りて移動して下さい」
「はぁ~~~!? なにをぬかしてますねん! そんな簡単にはいきませんよ!? そもそも、直ぐ隣の国が攻めて来るんやろ?! 他国に移動なんて出来るわけ無いやないですか! それなら、地理の分かっとるうちの領地で防衛戦した方が勝ち目があるわ!」
ルーデウスの発言に、更にメル子爵は激怒する。
「メル子爵!! ルーデウス殿下は王代理! 発言には気を付けて頂こうか!」
そのメル子爵を止めるのは、執事長のウォンバットだ。
「ウォンバット、大丈夫です。 メル子爵、本当にごめんなさい。 勝つには籠城しかありません……敵の兵は恐らく合計で2万人を越えるでしょう」
「それなら、うちの商会で傭兵を追加で雇ったらええやないですか! エントン王国全体の兵士と傭兵が集まれば東と西を守り切るのなんて楽勝と違いますか?」
メル子爵の言葉は尤もと云える。
小国群の中では最強と云えるエントン王国に、兵力で負ける2国が同時に攻めて来ても難なく持ちこ堪えれるだろう。
攻めてくるのが、2国だけなら。
「もし、ゴルメディア帝国が参戦したら兵の総数は私達を軽く凌駕するでしょう。 そうなれば、戦線を広げた我々は各個撃破され終わりです」
ルーデウスの冷静な指摘にメル子爵は押し黙る。 怒りと焦りのあまり、ゴルメディアの存在を失念していたのを恥じた。
「そろそろ宜しいですかな? ルーデウス 殿下」
ルーデウスの前に進み出たのは、エントン王国騎士団長のボルガスだ。
漆黒の鎧に身を包んだ歴戦の老戦士であり、エントン王国最強のルニア辺境伯の夫である。
「はい、ボルガス騎士団長。 作戦についてですね」
ルーデウスは毅然と返事をする。
「お集まりの皆様にお伝え致す。 この後、領地の民全てと共に食料を持てるだけ持って王都に避難して下され。 兵は全て私の指揮に入っていただく」
女貴族達がざわめき立つ。
全ての民となれば10万に近い人数になるからだ。
「皆さん安心して下さい。 王城を開ける事で、全ての民を避難させれる事はウォンバットに確認済みです。 私達は城壁に陣取り、援軍が来るまで徹底抗戦します」
「援軍……まさか、この短時間で既に辺境伯へ伝令を?」
1人の女爵が呟く。
「そのまさかです。 ルーデウス殿下は、文が届いたその場で我が妻へ伝令を飛ばしました。 急げば、10日で援軍が来るでしょう」
騎士団長ボルガスの言葉に女貴族達や兵士達は喜ぶ。
それなら勝てると。
エントン王国最強のルニア辺境伯が精鋭を連れて来るとなれば、例えゴルメディア帝国が参戦しても勝てるだろう。
「お待ち下さい!! ルーデウス殿下、女王陛下が辺境伯の元に行かれているのは承知の筈。 陛下が王国の危機を知れば即座にお戻りになられるでしょう……それは王国の未来を思うと危険では?」
場の空気が緩んだと思ったその時、1人の少年がルーデウスの前に立った。
エントン王国の唯一にして、初めての爵位を授かった貴族。
アーサー男爵だ。
「アーサー男爵、その通りです。 姉上が知れば、必ず危険を省みず戻って来られるでしょう。 敵にそれを察知されると、非常に危険です。 既に敵は姉上が王城に居ない事を知っているのですから」
「殿下! なら、尚更ではないですか! エントン王国の行く末を思うなら、安全な辺境伯の元に滞在して頂くべきです」
「ふふ、ありがとうございますアーサー男爵。 でも、きっとあの姉上なら何を言っても知れば帰って来られるでしょう。 なので、ちょっとした策を考えました」
「策でございますか……?」
ルーデウスが手を鳴らすと、メイド達があるモノを持ってきた。
そのモノを見て女貴族達は目を丸くし、イサミ子爵は苦笑いをしている。 メル子爵に至っては腹を抱えて笑っていた。
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