163 / 220
第162話 幸せな昼食
しおりを挟む
「さて、準備はこんなもんか。 おーい、始めるぞ~」
セムネイルが指を鳴らすと、初級魔法の火の粉が発動し薪に火が付いた。
焚き火の上に置かれたのはセムネイルが創造した焼き網であり、美味しそうな分厚い牛肉を網の上に置いてゆく。
「セムネイル様、野菜も切れました~」
「お、良いね~。 外で食べる焼き肉なんて初めてだよ、お兄さん」
「ありがとな。 ローズ、サシャ。 さ~て、焼くぞ!」
セムネイルは巨大な焼き網の上に野菜や肉を敷き詰める。
「クンクン! くはー! セムネイル、俺腹減ったぞー!」
「ふわ~……セムネイル様、リンはもうお腹ペコペコです~」
「はいはい、2人共待ってね~。 おにぎり作る約束でしょ?」
焼かれる肉の匂いにノラとリンが釣られてふらふらとやって来たが、セリスによって直ぐに家へと連れ戻されていく。
その様子を苦笑いで見ていたローズとサシャも手伝いに戻って行った。
「くっくっくっ、ちゃんと皿に置いておくから安心しろよ~。 タリア、すまんが人数分タレを準備してくれ」
「任せて下さい!」
「あ、ごめんね……タリア。 タレはもう私が準備しちゃった……」
「……え?」
セムネイルの側でタリアが鼻息荒く返事をしたが、その後ろでタレ皿を持ったアヤメが固まる。 どうやら、気を利かせてアヤメが先に動いてくれていたようだ。
「アヤメ、ありがとう。 えっと……そうだ、タリア。 家に戻って俺用におにぎりを握ってきてくれるか? 大きなヤツが良いな」
「っ!? 今度こそ私に任せて下さい! 愛情をたっっっくさん入れたのを作ってきますー!」
「ちょっ! タリア?! 変なの入れたら容赦しないからね!」
満面の笑みで家へと走るタリアと心配して付いて行ったアヤメを見送り、セムネイルは幸せそうに微笑む。
「ふーん……良い顔してるじゃん。 セムネイル」
「ん? 何がだグラ」
「別に~……ねぇ、セムネイル。 家の外でのんびりとBBQしたい何て、急に何で言い出したの? 私の知る限り、こんな文化はこの世界に無いと思うんだけど?」
勘の良いグラに問われたセムネイルは苦笑いで天を仰ぐ。
「アイツが……何時か平和な世界になったらしたいって言ってたのを思い出してな」
「アイツって、初代勇者の咲だよね? やっぱりか~。 昔、良く言ってたもんね~夏は外でBBQだよ! って」
「くっくっくっ、この世界に四季とやらは無いと説明したんだがな。 まぁ、暑いか寒いかの世界だ。 今は夏とやらで良いんじゃないか?」
「あははは、そうだね。 あ、お肉美味しい!」
セムネイルとグラは笑い合いながら昔に思いを馳せた。
◆◇◆
「セムネイル~、カリンちゃんとコリンちゃん戻って来たよ~」
手伝いもせずにひたすら肉を頬張っているグラに呼び掛けられ振り向くと、ボロボロのシスター服から着替えたカリンとコリンがお腹を空かせて帰って来た。
「「ただいま帰りました~。 わぁ~、BBQとは聞いたことがありませんでしたがとても美味しそうですね」」
「おぉ、お帰りカリンコリン。 お疲れ様、ほれ肉焼けてるぞ」
セムネイルは大量の肉と野菜を焼いており、その中から食べ頃な肉を皿に盛ってやる。
「「ありがとうございますセムネイル様。 農場エリア、酪農エリア、養蜂場エリア、人間族の村も魔人族の村も見回り終わりました。 怪我をした娘達が数人いましたが、治療済です」」
カリンとコリンはセムネイルに仕えるシスターとしての使命だからと、必ず4次元の村やエリアを見回りしていた。
そのおかげか、この4次元内でのカリンコリンの双子はとても好印象で魔人や亜人とも打ち解けている。
「今日もありがとうな。 トラブルの話も無かったか?」
セムネイルは2人に焼けた肉を配り終えると、また焼く係に戻った。
「セムネイル様が午前にジェイソンさん達へ渡した武器や防具が高品質過ぎて皆さんがパニックになってたぐらいでしょうか」
「あ、ドワーフのルグさんと熊獣人のベアさんが昨日の夜はありがとうございましたー! と、おっしゃってましたよ」
「そうか、分かった。 ん? おにぎりも出来たみたいだぞ」
家の玄関が開け放たれ、苦笑いのローズ達が小さなおにぎりを乗せた皿を持ってきてテーブルに置いた。
ノラとリンは我慢の限界だったのか、早速焼けた肉に齧り付いている。
野性味溢れるノラより、清楚そうなエルフであるリンが肉に齧り付く姿はギャップがあってとても可愛らしかった。
そして、額を押さえたアヤメが出て来て最後にタリアが大岩の様に巨大なおにぎりを抱えて出て来た。
「ぶっ?! タリア、それおにぎりなのか?」
セムネイルが恐る恐る問うと、タリアは満面の笑みで答える。
「はい! セムネイル様への愛を込めるとこんなに大きくなりました! もっともっと大きいのが良かったのですか!?」
「あ、いや……アヤメ?」
「……すみませんセムネイル様。 私では止めれませんでした」
タリアの隣ではアヤメが申し訳無さそうに項垂れ、グラは巨大なおにぎりを見て爆笑していた。
「あはは……セムネイル様。 タリアさん、凄く頑張ってたんですよ?」
ローズの言葉を聞き、セムネイルは覚悟を決める。
「グラ、焼くのを頼む! タリア、来い!!」
「ひー……お腹痛い! えぇ?! ちょっ、あち!」
セムネイルはグラに焼く係を任せ、タリアの抱える巨大なおにぎりに食い付いた。
そんな様子を妻達は笑いながらBBQを楽しむのであった。
セムネイルが指を鳴らすと、初級魔法の火の粉が発動し薪に火が付いた。
焚き火の上に置かれたのはセムネイルが創造した焼き網であり、美味しそうな分厚い牛肉を網の上に置いてゆく。
「セムネイル様、野菜も切れました~」
「お、良いね~。 外で食べる焼き肉なんて初めてだよ、お兄さん」
「ありがとな。 ローズ、サシャ。 さ~て、焼くぞ!」
セムネイルは巨大な焼き網の上に野菜や肉を敷き詰める。
「クンクン! くはー! セムネイル、俺腹減ったぞー!」
「ふわ~……セムネイル様、リンはもうお腹ペコペコです~」
「はいはい、2人共待ってね~。 おにぎり作る約束でしょ?」
焼かれる肉の匂いにノラとリンが釣られてふらふらとやって来たが、セリスによって直ぐに家へと連れ戻されていく。
その様子を苦笑いで見ていたローズとサシャも手伝いに戻って行った。
「くっくっくっ、ちゃんと皿に置いておくから安心しろよ~。 タリア、すまんが人数分タレを準備してくれ」
「任せて下さい!」
「あ、ごめんね……タリア。 タレはもう私が準備しちゃった……」
「……え?」
セムネイルの側でタリアが鼻息荒く返事をしたが、その後ろでタレ皿を持ったアヤメが固まる。 どうやら、気を利かせてアヤメが先に動いてくれていたようだ。
「アヤメ、ありがとう。 えっと……そうだ、タリア。 家に戻って俺用におにぎりを握ってきてくれるか? 大きなヤツが良いな」
「っ!? 今度こそ私に任せて下さい! 愛情をたっっっくさん入れたのを作ってきますー!」
「ちょっ! タリア?! 変なの入れたら容赦しないからね!」
満面の笑みで家へと走るタリアと心配して付いて行ったアヤメを見送り、セムネイルは幸せそうに微笑む。
「ふーん……良い顔してるじゃん。 セムネイル」
「ん? 何がだグラ」
「別に~……ねぇ、セムネイル。 家の外でのんびりとBBQしたい何て、急に何で言い出したの? 私の知る限り、こんな文化はこの世界に無いと思うんだけど?」
勘の良いグラに問われたセムネイルは苦笑いで天を仰ぐ。
「アイツが……何時か平和な世界になったらしたいって言ってたのを思い出してな」
「アイツって、初代勇者の咲だよね? やっぱりか~。 昔、良く言ってたもんね~夏は外でBBQだよ! って」
「くっくっくっ、この世界に四季とやらは無いと説明したんだがな。 まぁ、暑いか寒いかの世界だ。 今は夏とやらで良いんじゃないか?」
「あははは、そうだね。 あ、お肉美味しい!」
セムネイルとグラは笑い合いながら昔に思いを馳せた。
◆◇◆
「セムネイル~、カリンちゃんとコリンちゃん戻って来たよ~」
手伝いもせずにひたすら肉を頬張っているグラに呼び掛けられ振り向くと、ボロボロのシスター服から着替えたカリンとコリンがお腹を空かせて帰って来た。
「「ただいま帰りました~。 わぁ~、BBQとは聞いたことがありませんでしたがとても美味しそうですね」」
「おぉ、お帰りカリンコリン。 お疲れ様、ほれ肉焼けてるぞ」
セムネイルは大量の肉と野菜を焼いており、その中から食べ頃な肉を皿に盛ってやる。
「「ありがとうございますセムネイル様。 農場エリア、酪農エリア、養蜂場エリア、人間族の村も魔人族の村も見回り終わりました。 怪我をした娘達が数人いましたが、治療済です」」
カリンとコリンはセムネイルに仕えるシスターとしての使命だからと、必ず4次元の村やエリアを見回りしていた。
そのおかげか、この4次元内でのカリンコリンの双子はとても好印象で魔人や亜人とも打ち解けている。
「今日もありがとうな。 トラブルの話も無かったか?」
セムネイルは2人に焼けた肉を配り終えると、また焼く係に戻った。
「セムネイル様が午前にジェイソンさん達へ渡した武器や防具が高品質過ぎて皆さんがパニックになってたぐらいでしょうか」
「あ、ドワーフのルグさんと熊獣人のベアさんが昨日の夜はありがとうございましたー! と、おっしゃってましたよ」
「そうか、分かった。 ん? おにぎりも出来たみたいだぞ」
家の玄関が開け放たれ、苦笑いのローズ達が小さなおにぎりを乗せた皿を持ってきてテーブルに置いた。
ノラとリンは我慢の限界だったのか、早速焼けた肉に齧り付いている。
野性味溢れるノラより、清楚そうなエルフであるリンが肉に齧り付く姿はギャップがあってとても可愛らしかった。
そして、額を押さえたアヤメが出て来て最後にタリアが大岩の様に巨大なおにぎりを抱えて出て来た。
「ぶっ?! タリア、それおにぎりなのか?」
セムネイルが恐る恐る問うと、タリアは満面の笑みで答える。
「はい! セムネイル様への愛を込めるとこんなに大きくなりました! もっともっと大きいのが良かったのですか!?」
「あ、いや……アヤメ?」
「……すみませんセムネイル様。 私では止めれませんでした」
タリアの隣ではアヤメが申し訳無さそうに項垂れ、グラは巨大なおにぎりを見て爆笑していた。
「あはは……セムネイル様。 タリアさん、凄く頑張ってたんですよ?」
ローズの言葉を聞き、セムネイルは覚悟を決める。
「グラ、焼くのを頼む! タリア、来い!!」
「ひー……お腹痛い! えぇ?! ちょっ、あち!」
セムネイルはグラに焼く係を任せ、タリアの抱える巨大なおにぎりに食い付いた。
そんな様子を妻達は笑いながらBBQを楽しむのであった。
11
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~
泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。
女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。
そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。
冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。
・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。
・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。
かるい気持ちで治験に参加しただけだったのに。(R-18)
量産型774
恋愛
かる~い気持ちで治験に参加したら、
不幸?にも世界の転換点に遭遇し、
幸運?にもハーレムを作ってしまった、
そんな人のお話。
※とあるお方のとある政策の余波をモロに食らった、とある人のお話です。
某お話と時間軸で被っている為ファンタジー要素有。
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる