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第107話 久し振りの再開

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 「それじゃあ、またな」

 セムネイルは滞在していた小さな町パイムを後にし、セリス達と旅を再開していた。

 「セムネイルさーん! 皆さーん! 本当にありがとうございましたー!」

 遠くなった町の門で小柄な受付嬢リパンが一生懸命に手を降っているのが見え、セムネイル達も手を振り返す。

 「ふふ、何か良いわねこういうの」

 「ん? どうした、グラ」

 「ん~ん、何でも無いわ。 それより、此処から目的地の街までどれぐらい掛かるの?」

 微笑むグラの質問にセリスが答える。

 「リパンさんに聞いておきました。 此処から歩いて3日だそうです」

 「まだまだですね~」 「俺は別に良いぞ! セムネイルやセリス達と歩くの好きだ!」

 「くっくっくっ、俺もだぞノラ」

 セムネイルに頭を撫でられたノラが嬉しそうに尻尾を揺らす。

 「まぁ、夜には家に帰れるんだ。 気長に行こうか」

 セムネイル達は南へと続く道を歩き続けた。

 ◆◇◆

 「ん? 何か来てるな」

 朝から出発した一行は、途中の草原で昼食を食べていた。 折角の旅なので、敷物を出しその上でローズ達が作ってくれていた弁当を広げている。

 しかし、セムネイルの広範囲に及ぶ気配察知に反応が有りセムネイルに向けて真っすぐ殺気を放っていた。

 「え? ん~……貴方様すみません、私の気配察知にはまだ入っておりませんわ。 500m先まで感知できる様になったのですが……」

 「いや、セリスちゃんも充分凄いからね? 普通の気配察知って、50mぐらいが限界だからね?」

 グラのフォローを聞きながらもセリスは落ち込む。

 「くっくっくっ、セリス忘れるなよ? お前は俺よりも魔法の才があるんだ。 必ずお前は俺を追い抜く、信じろ」

 「……はい♡」

 嬉しそうに頬を赤く染めるセリスの頭を撫で、セムネイルは立ち上がった。

 「俺だけで良い。 皆は弁当を食っててくれ」

 「セムネイル……私も行こうか?」

 「いや、3人を頼む」

 「分かったわ」 「貴方様なら何も心配しておりません」 「お弁当ちゃんと残しておきますね」 「ぐるる……なるべく早くな! 俺の腹が食えって言ってるから!」 

 グラにセリス達を任せ、セムネイルは1人で草原を歩き始めた。 何故、妻達を連れて行かないか……それは察知した気配が魔神並みだったからだ。

 ◆◇◆

 暫く歩いた先で、ソレはセムネイルを見つめていた。

 「ほぉ……まさか、まだ絶滅していなかったとはな。 それで? 何の用だ、黒龍」

 「グァハハハハ! 何の用だとは酷いな……古き敵よ」

 セムネイルを待ち構えていたのは巨大な竜だった。 しかし、正体はただの竜では無い。 セムネイルが呼んだ通りこの世界で最強の魔物種である竜の更に上位種、神や魔神に近い存在にして神話の魔物、龍である。 

 その見た目は恐ろしくも美しい姿をしていた。 真っ赤な瞳にズラリと並ぶ鋭利な牙、闇の様な漆黒の身体。 長い首から下は強靭な肉体の鎧に包まれ、背中からは巨大な羽が生えている。 2本の手には長く全てを引き裂けそうな爪が生えていた。 そして長く細い尻尾が嬉しそうに揺れている。

 「そうだな……俺達は敵同士だったな。 だが、それは大昔の話だろ? 今は何をしてるんだ。 龍は神や魔神にすら目の敵にされてたろ」

 「グァハハハハ、何をしてる……か。 悪いが、今日は世間話をしに来た訳では無いのだ、古き敵よ。 忠告だ……いや、ある意味願いか。 世界の各地に、人間では踏破出来ぬダンジョンが有る。 それらを全て踏破せよ……せねば、今の世界は滅びる」

 セムネイルは黒龍の話しに眉をひそめる。

 「お前……何を知ってる」

 「悪いが時間だ。 我等龍は憎きエオルニアに探されておるからな。 良いか、頼んだぞ。 そのダンジョンで捕まっている者達をどうか救ってくれ……さらばだ。 古き敵よ」

 黒龍は空に飛び上がり、一瞬で視界から消えた。

 「はぁ……昔から変わらないなアイツ。 説明する時間が無いなら、羊皮紙に纏めるとか色々考えろよ。 だからトカゲとか言われるんだよ……全く。 でも、元気そうだったな」

 セムネイルは面倒くさがりながらも、嬉しそうに微笑んだ。
 そして、グラ達の下へと戻るのであった。
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