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2章〜フォレスト王国王都〜

閑話、あの夢は過去ーーーー

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 此処は何処?


 ーーいいや、ナディソウルは知っている。始まりの場所だ。


 ……はっ!

 僕は何を考えているんだ?ナディソウル?始まりの場所?僕はそんなコト、知らないよ……?

 
『ルティ、早くおいでよ』
『ふふっ、ちょっと待って。私は貴方の様に速く歩けないもん。あっ!』

 ルティと呼ばれた女性は何もない所でこけた。……いや、力が抜けた?

 というか僕は何を見ているんだ!?

『ルティ!!』

 男性が駆け寄る。……いやいやいや、速すぎ!!何あのスピード。

『ルティ、最近こういう事多いよ?大丈夫?』
『ナディは心配性ね。大丈夫!私、どこからどう見ても元気いっぱいでしょ?』
『そうだけど……』

 何故だろう。あのルティさんがリティア、ナディさんが僕に重なって見える。


 ジ、ジジ、ジーー

 見る場所が変わる。

『ルティ消えないでっ!!消えるくらいなら一緒に転生しよう……』

 腕がだらんと下がったルティさんを抱えるナディさんがいる。

 そこに新たな声が加わって来た。

「私の力に影響されて過去で迷ってしまわれたのですね」
「え……」

 この声の主は僕が見えていて、僕に話しかけている。

「このコトは、貴方様が自身の力で思い出さなければいけないものなのです」
「そうなの?」
「そうです。御自身でも何となく理解しているのでしょう?」

 うん、そんな感じはする。これ以上はまだ見てはいけない。だって、僕のどこかで警報が鳴っているのだから。誰でも分かる。

「でも、方法がないんだ。自分ではどうする事も出来ない」
「貴方様を戻すくらいの事ならギリギリ出来ます。本来、戻るのに使う力など微々たるものなのです」

 それだとおかしい。だったら僕は今此処にいないから。

「貴方様は自身の過去に酔っているのですよ。だから私が貴方様を現実に戻させて頂きますね」

 パアァーー!

 優しい光に包まれながら意識が沈んでいく事を感じる。

「貴方様の愛する方に伝えてください。どういたしまして。そして約束します。来世も幸せになると。ーーさようならは言いません」

 そこで完全に僕の意識は沈みきった。
 

「ソーク!ソーク!!」
「どうしたの?」
「ソークぅ!!……えっ?ソ、ソークうぅぅ!!良かったよ~~」

 次目が覚めたら今にも涙をこぼしそうなリティアが間近で見えた。

 リティアがポロポロと泣いている間に皆にこの状況を説明してもらった。

 正直、リティアの泣き声がとても大きかった。だけどちゃんと、というかしっかりと聞き取れた。

 あの過去?を見始めてから僕は段々と自分の身体が変わっていっているのだと実感する事が多々あった。

 
 やっぱりあの過去は僕にとって、とても大切な『何か』なのだ。


 僕は五分くらいの間行方不明だったらしい。そして現れたと思ったら気絶してるしでリティアがパニックを起こして今の状況だと分かった。

 リティアを落ち着ける為にもと僕はリティアに貰ったルビーのネックレスに魔力を流す。

《リティア聞こえる?》
《ふえっ!?う、うん。聞こえるよ!使ってくれて嬉しい!ありがとうっ!!》
《どういたしまして。そして伝言》
《……誰からの?》
 
 ……名前知らなかった。うん、ぼかそう。

《まあ分かると思うから、ね。『貴方様の愛する方に伝えてください。どういたしまして。そして約束します。来世も幸せになると。ーーさようならは言いません』だって》
《……っ、声が似過ぎて一瞬言葉失っちゃったよ》

 リティア、今そこを褒められてもあまり嬉しく無いんたよ。

《ソーク、伝えてくれてありがとう》

 リティアは泣きながらお礼を言ってきた。此処で慰めるなんて事は出来ない。

 何故泣いているのかはその人しか本当の理由を知り得ないのだから。
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