186 / 248
第五章 邂逅は、波乱とともに
③ 『我儘』
しおりを挟む
マリアとセレクトが帰って行った後、それ以降は珍しく<パニヨン>を訪れるお客様はいなかった。
『本日の営業は終了致しました』と書かれた掛け看板が、珍しく仕事をしてくれたようだ。
普段であれば、バルネアさんとジェノとの時間が取れることを嬉しく思うメルエーナだが、マリア達との話し合いの後、ジェノが険しい顔をしているのが心配で仕方がなかった。
それから、普段より少し遅れてジェノが稽古に出かけたのだが、その際に、彼は『特別稽古に行ってくる』と言っていた。
それは、ジェノが稽古先の兄弟子であるシーウェンと二人で外で食事を食べてくるから、夕食はいらないという意味だ。きっと、男同士の話があるのだろう。
理由はわからないが、険しいジェノの表情を和らげたいと思い、夕食は気合を入れて作ろうと思っていたメルエーナは、とても寂しい気持ちになる。
落ち込むメルエーナを、バルネアが気にかけて話しかけてくれたので、なんとか笑顔を浮かべ、二人で夕食を準備する。
その際に、バルネアの提案で、季節の果物を使ったゼリーも作った。
拉麺という味付けの濃い料理を食べてくる、ジェノの口直しのために。
「ごちそうさまでした」
「はい。お粗末さまでした」
メルエーナはバルネアとの二人だけの食事を終えて、すぐに食器を台所に運ぶ。
いつも食器洗いをするのは、メルエーナかジェノのどちらかだ。
ただ、これはバルネアにそうするように言われたからではなく、メルエーナがこの家にやってくるまでの間、ジェノがそうしていたので、メルエーナも同じようにしている。
ただでさえバルネアはこの店の唯一人の料理人としてお客様に食事を提供し続けている。それに加えて、空いた時間で、自分やジェノに丁寧に料理を教えてくれる。
ジェノからそうだと聞いたわけではないが、そんなバルネアに対する感謝とせめてものお礼のつもりで彼が率先して洗い物を引き受けているのは明らかだった。だから、自分もそれに加えて貰ったのだ。
「バルネアさん。それでは洗い物は私がやっておきますので」
「いつもありがとうね、メルちゃん」
バルネアは自分の分の食器を台所まで運んできて、優しく微笑み、感謝の言葉をかけてくれる。
このエルマイラム王国の国王様から、『我が国の誉れである』とまで言われた料理人とは思えない腰の低さ。
もう少し威厳を持っても良いのではと思わなくもないが、この朗らかさこそが、バルネアという稀代の料理人の魅力の一つなのだ。
(あっ……)
メルエーナは食器洗いを開始するが、バルネアが部屋に戻らず、先程まで食事をしていたテーブルの席に戻るのを横目で見て、何か話があるのだと理解する。
手を止めずに、メルエーナはバルネアの言葉を待つことにした。
「う~ん、メルちゃん。強力なライバルが登場してしまったわね」
「えっ? えっ?」
不意に呟かれたバルネアの思わぬ言葉に驚き、メルエーナは皿を手から滑らせてしまいそうになってしまう。
「あのセレクトっていう男の人と一緒に居た、マリアちゃん。ものすごく綺麗な娘だったわ。しかも、ジェノちゃんのことを知っている口ぶりだったし……」
バルネアの言葉に、メルエーナは恥ずかしそうにしながらも、自分がジェノの事を憎からず思っていることはみんなに知られているので、素直に「はい」と頷いた。
「あんな綺麗な女の子、初めて見ました。それに、給仕の際に見たら、スタイルもすごく良くて……」
自らの慎ましい胸部を一瞥し、メルエーナは嘆息する。
「メルちゃん。これは、今度の旅行でジェノちゃんの気持ちをガッチリ掴まないと駄目ね」
「……はい。できればそうしたいのですが……」
手を止めて俯くメルエーナに、バルネアは「大丈夫。メルちゃんは可愛いんだから」と言って微笑んでくれる。
その言葉は嬉しかったが、メルエーナも流石に自分のような田舎娘では、マリアのような眩い美貌の持ち主とはまるで勝負にならないことは分かっている。
「大丈夫。抜かりはないわ。今回の旅行は、ジェノちゃんの気持ちをメルちゃんに向けさせるきっかけづくりの意味合いもあるのよ」
「えっ?」
全く予想外のバルネアの言葉に、メルエーナは驚きの声を上げた。
「でも、そのためには、少しだけメルちゃんに勇気を出してもらわないと駄目よ」
「勇気、ですか?」
「ええ、そうよ。実は今度の旅行で行く宿には、特別な……」
バルネアの説明を聞いているうちに、メルエーナの頬はだんだん紅潮していく。
「そっ、そんな……。でっ、ですが、それくらいしないとジェノさんには……」
「そんなに難しく考えなくても大丈夫よ。ただ二人っきりでお話をするシュチュエーションが特別なだけだから」
バルネアは笑顔でいうが、メルエーナはそのことを想像するだけで恥ずかしさで頬が火照ってしまう。
「メルちゃんとジェノちゃんに足りないのは、スキンシップだと思うの。でも、なかなか普段の生活でそれを求めるのは勇気がいるわ。だから、これはその第一歩にしましょう。
いくらジェノちゃんでも、旅先の開放的な気分にそんな素敵なシュチュエーションだったら、ねっ?」
バルネアの提案に、メルエーナは覚悟を決める。
(そうです。自分から動かないと状況は変わりません。何としても、一人の異性としてジェノさんに見てもらえるようにならないと駄目です!)
と心の中で自分を叱咤する。
そんなことを思いながら気合を入れるメルエーナに、バルネアは微笑ましげな優しい眼差しを向けてくれる。
やがて、洗い物を終わらせたメルエーナは、当日のためにとのアドバイスを受けて、バルネアから今度行く宿の構造等を教えてもらい、それをメモに取る。
そして、現状できることはすべてやり終えたところで、ジェノが帰宅した。
メルエーナ達は笑顔で出迎えたが、二人に話がありますとジェノは言い、いつものテーブルで話をすることになったのだった。
◇
「それは駄目よ。認められないわ」
バルネアはプンプンと少し怒った顔で言う。
だが、正直愛らしさが先に来てしまい、怖いとはまるで思えない。
「……すみません。我儘なのは十分分かっています。ですが……」
話を終えたジェノに返ってきたのは、予想外の答えだった。
普段のバルネア性格を考え、「仕方がないわね」と言ってくれるのではと少し期待していたジェノは、己の見通しの甘さを後悔する。
「今更、宿をキャンセルなんてできないし、家族全員で出かけることに意味があるのよ。ジェノちゃんを置いて、私とメルちゃんだけで旅行なんて駄目よ!」
バルネアだけでなく、メルエーナも寂しそうな顔を向けてくる。
ジェノはシーウェンと話をし、件のセレクトという男のことを訊いてきた。
シーウェンの話では、彼がまだこの国の言葉や文化に慣れていなかったときに、世話になった恩師で信頼の置ける人物だと言っていた。だから、そんな師が困っていたので、ジェノのことを紹介したらしい。
その話全てを鵜呑みにはできないが、全く素性の知らない人間よりはマシだ。それに、シーウェンにセレクトがこの街にやってきた経緯も話していたので、それを聞き出すことができた。
セレクトとマリアは、左右の瞳の色が異なる人間たちに襲われて、この街まで避難してきたのらしい。その際に、その襲撃者が<霧>のことを口にしたようだ。
先日も<霧>によるものと思われる化け物が、このナイムの街にも現れた。そして、近場で<霧>の関係者と思われる人間が暴虐の限りを尽くしている。
それを知ってしまった以上、ジェノはのんびりと旅行に出かける心持ちにはなれなくなってしまった。
一刻も早くセレクトたちの話を聞きたい。こちらの情報と照らし合わせて<霧>に関わり不幸な目に合う人間を減らしたい。もう、サクリ達のような犠牲を生みたくはない。
まして、それにバルネアさんとメルエーナが巻き込まれることなどあってはいけないのだ。
そんな気持ちが溢れ出し、ジェノは理由を説明し、来週の旅行を辞退したいと申し出たのだが、バルネアにこうして却下されてしまった。
「事情は分かったわ。でも、駄目よ。今のジェノちゃんは冷静さを欠いているもの」
「……そんなことは……」
ジェノは否定しようとしたが、バルネアだけでなく、メルエーナにも首を横に振られた。
「ジェノさん。そんな思いつめた顔で言っても説得力がないです。私とバルネアさんのことを気にしてくれるのは嬉しいですけれど、大事なときこそ少し冷静にならないといけないと思います」
「メルちゃんの言うとおりよ。それに、いつものジェノちゃんならば、約束を忘れたりしないはずよ」
普段と同じ無表情にジェノは徹しているつもりなのだが、バルネア達にはなぜか通用しないらしい。それに、指摘されてようやく『約束』を思い出すという体たらくだ。
「すまない、メルエーナ。泳ぎを教える約束だったな」
「……はい」
メルエーナは寂しそうに頷く。
「とはいっても、もう旅行まで時間がないわ。よくわからないけれど、あのセレクトさんとマリアちゃんとの話し合いは、すぐには終わらないのでしょう?」
「……ええ。それに向こうも急ぎのようですので」
ジェノの言葉に、メルエーナは悲しそうな顔をする。そのことにジェノの胸は痛む。
「という訳なので、旅行を辞退するのは駄目。でも、無理に旅行に出かけても、ジェノちゃんは心あらずになってしまいそうね。だから、私から譲歩案があるわ」
「……話してください、バルネアさん」
ジェノはバルネアに続きを促す。
それからバルネアの譲歩案というものを聞いたジェノは、結果としてそれを受け入れることにしたのだった。
『本日の営業は終了致しました』と書かれた掛け看板が、珍しく仕事をしてくれたようだ。
普段であれば、バルネアさんとジェノとの時間が取れることを嬉しく思うメルエーナだが、マリア達との話し合いの後、ジェノが険しい顔をしているのが心配で仕方がなかった。
それから、普段より少し遅れてジェノが稽古に出かけたのだが、その際に、彼は『特別稽古に行ってくる』と言っていた。
それは、ジェノが稽古先の兄弟子であるシーウェンと二人で外で食事を食べてくるから、夕食はいらないという意味だ。きっと、男同士の話があるのだろう。
理由はわからないが、険しいジェノの表情を和らげたいと思い、夕食は気合を入れて作ろうと思っていたメルエーナは、とても寂しい気持ちになる。
落ち込むメルエーナを、バルネアが気にかけて話しかけてくれたので、なんとか笑顔を浮かべ、二人で夕食を準備する。
その際に、バルネアの提案で、季節の果物を使ったゼリーも作った。
拉麺という味付けの濃い料理を食べてくる、ジェノの口直しのために。
「ごちそうさまでした」
「はい。お粗末さまでした」
メルエーナはバルネアとの二人だけの食事を終えて、すぐに食器を台所に運ぶ。
いつも食器洗いをするのは、メルエーナかジェノのどちらかだ。
ただ、これはバルネアにそうするように言われたからではなく、メルエーナがこの家にやってくるまでの間、ジェノがそうしていたので、メルエーナも同じようにしている。
ただでさえバルネアはこの店の唯一人の料理人としてお客様に食事を提供し続けている。それに加えて、空いた時間で、自分やジェノに丁寧に料理を教えてくれる。
ジェノからそうだと聞いたわけではないが、そんなバルネアに対する感謝とせめてものお礼のつもりで彼が率先して洗い物を引き受けているのは明らかだった。だから、自分もそれに加えて貰ったのだ。
「バルネアさん。それでは洗い物は私がやっておきますので」
「いつもありがとうね、メルちゃん」
バルネアは自分の分の食器を台所まで運んできて、優しく微笑み、感謝の言葉をかけてくれる。
このエルマイラム王国の国王様から、『我が国の誉れである』とまで言われた料理人とは思えない腰の低さ。
もう少し威厳を持っても良いのではと思わなくもないが、この朗らかさこそが、バルネアという稀代の料理人の魅力の一つなのだ。
(あっ……)
メルエーナは食器洗いを開始するが、バルネアが部屋に戻らず、先程まで食事をしていたテーブルの席に戻るのを横目で見て、何か話があるのだと理解する。
手を止めずに、メルエーナはバルネアの言葉を待つことにした。
「う~ん、メルちゃん。強力なライバルが登場してしまったわね」
「えっ? えっ?」
不意に呟かれたバルネアの思わぬ言葉に驚き、メルエーナは皿を手から滑らせてしまいそうになってしまう。
「あのセレクトっていう男の人と一緒に居た、マリアちゃん。ものすごく綺麗な娘だったわ。しかも、ジェノちゃんのことを知っている口ぶりだったし……」
バルネアの言葉に、メルエーナは恥ずかしそうにしながらも、自分がジェノの事を憎からず思っていることはみんなに知られているので、素直に「はい」と頷いた。
「あんな綺麗な女の子、初めて見ました。それに、給仕の際に見たら、スタイルもすごく良くて……」
自らの慎ましい胸部を一瞥し、メルエーナは嘆息する。
「メルちゃん。これは、今度の旅行でジェノちゃんの気持ちをガッチリ掴まないと駄目ね」
「……はい。できればそうしたいのですが……」
手を止めて俯くメルエーナに、バルネアは「大丈夫。メルちゃんは可愛いんだから」と言って微笑んでくれる。
その言葉は嬉しかったが、メルエーナも流石に自分のような田舎娘では、マリアのような眩い美貌の持ち主とはまるで勝負にならないことは分かっている。
「大丈夫。抜かりはないわ。今回の旅行は、ジェノちゃんの気持ちをメルちゃんに向けさせるきっかけづくりの意味合いもあるのよ」
「えっ?」
全く予想外のバルネアの言葉に、メルエーナは驚きの声を上げた。
「でも、そのためには、少しだけメルちゃんに勇気を出してもらわないと駄目よ」
「勇気、ですか?」
「ええ、そうよ。実は今度の旅行で行く宿には、特別な……」
バルネアの説明を聞いているうちに、メルエーナの頬はだんだん紅潮していく。
「そっ、そんな……。でっ、ですが、それくらいしないとジェノさんには……」
「そんなに難しく考えなくても大丈夫よ。ただ二人っきりでお話をするシュチュエーションが特別なだけだから」
バルネアは笑顔でいうが、メルエーナはそのことを想像するだけで恥ずかしさで頬が火照ってしまう。
「メルちゃんとジェノちゃんに足りないのは、スキンシップだと思うの。でも、なかなか普段の生活でそれを求めるのは勇気がいるわ。だから、これはその第一歩にしましょう。
いくらジェノちゃんでも、旅先の開放的な気分にそんな素敵なシュチュエーションだったら、ねっ?」
バルネアの提案に、メルエーナは覚悟を決める。
(そうです。自分から動かないと状況は変わりません。何としても、一人の異性としてジェノさんに見てもらえるようにならないと駄目です!)
と心の中で自分を叱咤する。
そんなことを思いながら気合を入れるメルエーナに、バルネアは微笑ましげな優しい眼差しを向けてくれる。
やがて、洗い物を終わらせたメルエーナは、当日のためにとのアドバイスを受けて、バルネアから今度行く宿の構造等を教えてもらい、それをメモに取る。
そして、現状できることはすべてやり終えたところで、ジェノが帰宅した。
メルエーナ達は笑顔で出迎えたが、二人に話がありますとジェノは言い、いつものテーブルで話をすることになったのだった。
◇
「それは駄目よ。認められないわ」
バルネアはプンプンと少し怒った顔で言う。
だが、正直愛らしさが先に来てしまい、怖いとはまるで思えない。
「……すみません。我儘なのは十分分かっています。ですが……」
話を終えたジェノに返ってきたのは、予想外の答えだった。
普段のバルネア性格を考え、「仕方がないわね」と言ってくれるのではと少し期待していたジェノは、己の見通しの甘さを後悔する。
「今更、宿をキャンセルなんてできないし、家族全員で出かけることに意味があるのよ。ジェノちゃんを置いて、私とメルちゃんだけで旅行なんて駄目よ!」
バルネアだけでなく、メルエーナも寂しそうな顔を向けてくる。
ジェノはシーウェンと話をし、件のセレクトという男のことを訊いてきた。
シーウェンの話では、彼がまだこの国の言葉や文化に慣れていなかったときに、世話になった恩師で信頼の置ける人物だと言っていた。だから、そんな師が困っていたので、ジェノのことを紹介したらしい。
その話全てを鵜呑みにはできないが、全く素性の知らない人間よりはマシだ。それに、シーウェンにセレクトがこの街にやってきた経緯も話していたので、それを聞き出すことができた。
セレクトとマリアは、左右の瞳の色が異なる人間たちに襲われて、この街まで避難してきたのらしい。その際に、その襲撃者が<霧>のことを口にしたようだ。
先日も<霧>によるものと思われる化け物が、このナイムの街にも現れた。そして、近場で<霧>の関係者と思われる人間が暴虐の限りを尽くしている。
それを知ってしまった以上、ジェノはのんびりと旅行に出かける心持ちにはなれなくなってしまった。
一刻も早くセレクトたちの話を聞きたい。こちらの情報と照らし合わせて<霧>に関わり不幸な目に合う人間を減らしたい。もう、サクリ達のような犠牲を生みたくはない。
まして、それにバルネアさんとメルエーナが巻き込まれることなどあってはいけないのだ。
そんな気持ちが溢れ出し、ジェノは理由を説明し、来週の旅行を辞退したいと申し出たのだが、バルネアにこうして却下されてしまった。
「事情は分かったわ。でも、駄目よ。今のジェノちゃんは冷静さを欠いているもの」
「……そんなことは……」
ジェノは否定しようとしたが、バルネアだけでなく、メルエーナにも首を横に振られた。
「ジェノさん。そんな思いつめた顔で言っても説得力がないです。私とバルネアさんのことを気にしてくれるのは嬉しいですけれど、大事なときこそ少し冷静にならないといけないと思います」
「メルちゃんの言うとおりよ。それに、いつものジェノちゃんならば、約束を忘れたりしないはずよ」
普段と同じ無表情にジェノは徹しているつもりなのだが、バルネア達にはなぜか通用しないらしい。それに、指摘されてようやく『約束』を思い出すという体たらくだ。
「すまない、メルエーナ。泳ぎを教える約束だったな」
「……はい」
メルエーナは寂しそうに頷く。
「とはいっても、もう旅行まで時間がないわ。よくわからないけれど、あのセレクトさんとマリアちゃんとの話し合いは、すぐには終わらないのでしょう?」
「……ええ。それに向こうも急ぎのようですので」
ジェノの言葉に、メルエーナは悲しそうな顔をする。そのことにジェノの胸は痛む。
「という訳なので、旅行を辞退するのは駄目。でも、無理に旅行に出かけても、ジェノちゃんは心あらずになってしまいそうね。だから、私から譲歩案があるわ」
「……話してください、バルネアさん」
ジェノはバルネアに続きを促す。
それからバルネアの譲歩案というものを聞いたジェノは、結果としてそれを受け入れることにしたのだった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる