78 / 248
第三章 誰がために、彼女は微笑んで
㉕ 『口論』
しおりを挟む
宿での夕食は、一階の食堂で提供される方式だった。ジェノとイルリアは二人でテーブルを囲んで、食事を味わう。
一応、先ほど飲んだ水は、イルリアの魔法を封じている銀色の板を使って薬等が入っていないことは確認したが、魔法の数は有限である事に加え、ここでこちらの手の内を晒すような愚を犯すことはできない。
少量ずつ出された食事を口に運んで味を確認したが、違和感はなかった。無味無臭の薬だった場合はどうしようもないが、いつまでも食事を取らないではいられない。
ジェノは、味は悪くないが、さして特筆することのない素朴な夕食を静かに口に運びながらも、思考を巡らせる。
もっとも、傍目には、無表情で食事をしているようにしか見えないのだが。
「ねぇ、もう少し美味しそうに食べられないの? 店の人が心配そうにあんたを見ているわよ」
イルリアに注意され、ジェノは小さく嘆息する。
マナー違反をしているわけではないのだ。他の客と同じ様に放っておいてくれと思う。
自分を監視しているのかもしれないと思ったが、それならばこんな露骨な態度は取らないのではと思う。
「それで、何を考えていたのよ?」
シチューを口に運び、イルリアが小声で尋ねてくる。
「ああ。逆を考えていた」
「はっ? 逆ってなによ?」
イルリアのオウム返しに、ジェノは口を開く。
「先程の俺がした話が、まったくの見当違いだった場合を考えていた」
流石に人の目と耳があるため、それ以上、ジェノは言葉にしない。
「ふーん。でっ、その可能性って有り得るの?」
「おそらくない。できれば、そうであってほしいが……」
ジェノはそこまで言うと、また食事を開始する。
先程のイルリアとの話では、あえて言わなかったが、『化け物』『巨大な壁』『神殿』『聖女』これらの他に、もう一つの事柄が関係していると考えた方が、ナターシャのあのときの態度も説明がつく。
「そうね。本当に杞憂であってほしいわ」
イルリアもその事に気づいているのだろうが、自分が言わないため、あえて口にしない。
「ああ」
ジェノは短くイルリアに同意する。
この一件と、サクリは無関係であると思いたい。
ジェノ達がそんな会話をしていると、宿屋にリットが戻ってきた。
彼はひどく上機嫌なようで、ジェノ達を見つけると、こちらに歩み寄ってくる。
「ほう。悪くなさそうな夕食だな。お姉さん、俺にも同じものを」
ウエイトレスの女性に注文をし、リットはイルリアの隣の席に腰を降ろす。
イルリアは心底嫌そうな顔で、腰を少し浮かせて椅子を彼から遠ざけて座り直す。
「リット、何処に行っていたんだ?」
「んっ? ああ、野暮用、野暮用。これでもいろいろ駆け回って腹が空いているんだ。そのあたりの話は後でするよ」
リットはそう言うと、運ばれてきたお冷を口に運ぶ。
「お前に話しておく必要があるかは分からんが、こちらでもいろいろあった」
「ああっ、だろうな」
その思わせぶりな回答に、イルリアはジト目でリットを見る。
「リット、あんたはいったい何を……」
「止めておけ。絶対にこいつは口を割らない」
ジェノは、イルリアの問を遮る。
イルリアは不承不承ながらも口を噤み、食事を続ける。
「……リット。少し早いが、回答だ。俺とイルリアは、明日の午後にジューナ神殿長に会う約束になっている」
「はいはい、了解、了解。最後のチャンスも棒に振るわけね。いいぜ、それはそれで面白そうだ」
リットは至極軽い感じで答え、ヘラヘラと笑う。
先に部屋に戻るとイルリアが席を立ったが、ジェノはリットの食事が終わるまで同席した。
「すまなかった。お前に気を使わせたのにな。だが、俺は、やはり……」
ジェノがそう言うと、リットは嘆息する。
「だから、別にいいって。ただな、選んだからには後で後悔はするなよ、ジェノちゃん」
リットはそう言うと、デザートを食べ終わり静かに席を立つ。
ジェノもそれに倣い、席を立って部屋に戻ることにした。
◇
部屋で休んでいると声がかかり、イルリアはジェノの部屋に足を運んだ。
そして、リットを交えて、再び今日の出来事をジェノがリットに説明する。
「なるほどね。猿に似た化け物に子供が襲われ、更に犠牲になりそうだった男を、正義の味方のジェノちゃんがさっそうと現れて救ったというわけだ。
物語なら犠牲になる人間が逆の気がするが、そういう話も斬新で悪くないかもな」
「茶化すな。人が死んでいるんだ」
「そうだな。確かに死んでいるな」
分かっているのか、いないのか。リットはそう言って笑みを浮かべる。
「そして、その化け物を倒すと、タイミングよくナターシャ神官たちが現れたわけね。そして、ジェノちゃん達の活躍を大々的に宣伝した。そのことが引っかかっているってわけだ」
「ああ。そして、その際に、化け物に襲われそうになっていた男が、何かを俺に伝えようとしていたことが気になる。生憎と、邪魔をされてしまったせいで、それが何なのかは分からないままだ」
ジェノの言葉を聞き、リットはさも面白そうに喉で笑う。
その行為が、イルリアには腹立たしくて仕方がない。
「リット! あんたは何がおかしいのよ! 一人だけ何もかも分かっているって顔をして! この一件には、サクリも関わっているかもしれないのよ!」
イルリアの怒りの声に、しかしリットの笑みは消えない。
「それがどうかしたのか、イルリアちゃん?」
「どうかしたのかってなによ! 分かっている事があるのなら教えなさいよ! 自分一人で情報を握っていて、分からない私達が苦しんでいるのを見るのがそんなに楽しいわけ?」
イルリアはリットを睨みつける。
「イルリア」
「あんたは黙っていなさいよ! 何なのよ! なんでこいつにそんなに気を使っているのよ! こいつは今回の事件を殆どわかっているのでしょう? だったら……」
話に割り込もうとしたジェノにも噛み付くイルリア。
だが、そこでリットは声を上げて笑う。
「いいねぇ、いいねぇ。その自分勝手な物言い。分からない事を自分で調べようとせずに、知っている人間から教えてもらえるのが当たり前だと思っているわけだ」
「何でもかんでも訊いているわけではないでしょう。ただ、この一件は人の命が掛かっているのよ!」
「それで? 命が掛かっているのならば、俺は常にお前達に自分の情報を話さなければいけないルールでもあるのか? 俺は自分の意志もなく、お前達に有益な情報を与える便利な本だとでもいうのか?」
リットは口元の笑みを崩さない。だが、その目が笑っていないことにイルリアは気づく。
「イルリア、お前の苛立ちも分かるが、少し静かにしていてくれ」
ジェノに言われ、イルリアは文句の言葉を飲み込む。
「リット。教えられる範囲でいい。答えてくれないか?」
「いいぜ。それで、何を訊きたい?」
ジェノに問われると、リットは再び笑みを浮かべる。
「すまないが、三つ教えてくれ。一つ目は、俺とイルリア、そしてお前は、この村で行われようとしている何かに巻き込まれようとしているということだな?」
「ああ」
「二つ目だ。その何かを解決するには、俺とイルリアでは手に余るということか?」
「そのとおりだぜ」
そこまでリットの回答を聞き、ジェノは少し間をおいて、最後の質問を口にする。
「三つ目の質問だ。サクリは……」
「その質問には答えられない。ただ、前にも言ったように、サクリちゃんはもう助けられない。それが答えられる全てだ」
イルリアは黙って二人の会話を聞いていたが、サクリを助けられないという話は初耳だった。
「なぁ、ジェノちゃん。ここまで分かったのなら、考えを変える気にはならないか? この村に残ったところで、サクリちゃんは救えない。そして、イルリアちゃんは淡い期待を抱いているようだが、ジェノちゃんのアレを聖女様が治すこともできない。
それなのに、この村に残る必要なんてないはずだぜ?」
「どうして、どうしてあんたに、聖女様が治せないって分かるのよ!」
我慢できなくなって、イルリアは再びリットに文句を言う。だが、リットは涼しい顔で、
「俺が治せないからだよ。天才の俺にできないことが、凡人にできるわけが無いだろう?」
と言って笑う。
納得がいかない。そんな自己陶酔な発言で、納得できるはずがない。
かの有名な聖女様を、無名の魔法使いが根拠なく侮辱しているようにしか思えない。
それに、サクリの事を話せないというのはどういうことだ?
この男は思わせぶりなことを適当に口にしているだけで、本当は何も分かっていないのではないだろうかと、イルリアは勘ぐってしまう。
「リット。イルリア。すまんが明日の朝まで時間をくれ。少し話を整理したい」
ジェノがイルリア達の間に入り、そう声をかけてきた。
リットは「いいぜ。もともと明日の朝までの予定だったしな」とそれを受け入れ、イルリアも特に拒む理由もなかったので受け入れた。
そして、この日は解散となった。
けれど、結果として、翌朝になっても、ジェノの考えは変わることはなかったのだった。
一応、先ほど飲んだ水は、イルリアの魔法を封じている銀色の板を使って薬等が入っていないことは確認したが、魔法の数は有限である事に加え、ここでこちらの手の内を晒すような愚を犯すことはできない。
少量ずつ出された食事を口に運んで味を確認したが、違和感はなかった。無味無臭の薬だった場合はどうしようもないが、いつまでも食事を取らないではいられない。
ジェノは、味は悪くないが、さして特筆することのない素朴な夕食を静かに口に運びながらも、思考を巡らせる。
もっとも、傍目には、無表情で食事をしているようにしか見えないのだが。
「ねぇ、もう少し美味しそうに食べられないの? 店の人が心配そうにあんたを見ているわよ」
イルリアに注意され、ジェノは小さく嘆息する。
マナー違反をしているわけではないのだ。他の客と同じ様に放っておいてくれと思う。
自分を監視しているのかもしれないと思ったが、それならばこんな露骨な態度は取らないのではと思う。
「それで、何を考えていたのよ?」
シチューを口に運び、イルリアが小声で尋ねてくる。
「ああ。逆を考えていた」
「はっ? 逆ってなによ?」
イルリアのオウム返しに、ジェノは口を開く。
「先程の俺がした話が、まったくの見当違いだった場合を考えていた」
流石に人の目と耳があるため、それ以上、ジェノは言葉にしない。
「ふーん。でっ、その可能性って有り得るの?」
「おそらくない。できれば、そうであってほしいが……」
ジェノはそこまで言うと、また食事を開始する。
先程のイルリアとの話では、あえて言わなかったが、『化け物』『巨大な壁』『神殿』『聖女』これらの他に、もう一つの事柄が関係していると考えた方が、ナターシャのあのときの態度も説明がつく。
「そうね。本当に杞憂であってほしいわ」
イルリアもその事に気づいているのだろうが、自分が言わないため、あえて口にしない。
「ああ」
ジェノは短くイルリアに同意する。
この一件と、サクリは無関係であると思いたい。
ジェノ達がそんな会話をしていると、宿屋にリットが戻ってきた。
彼はひどく上機嫌なようで、ジェノ達を見つけると、こちらに歩み寄ってくる。
「ほう。悪くなさそうな夕食だな。お姉さん、俺にも同じものを」
ウエイトレスの女性に注文をし、リットはイルリアの隣の席に腰を降ろす。
イルリアは心底嫌そうな顔で、腰を少し浮かせて椅子を彼から遠ざけて座り直す。
「リット、何処に行っていたんだ?」
「んっ? ああ、野暮用、野暮用。これでもいろいろ駆け回って腹が空いているんだ。そのあたりの話は後でするよ」
リットはそう言うと、運ばれてきたお冷を口に運ぶ。
「お前に話しておく必要があるかは分からんが、こちらでもいろいろあった」
「ああっ、だろうな」
その思わせぶりな回答に、イルリアはジト目でリットを見る。
「リット、あんたはいったい何を……」
「止めておけ。絶対にこいつは口を割らない」
ジェノは、イルリアの問を遮る。
イルリアは不承不承ながらも口を噤み、食事を続ける。
「……リット。少し早いが、回答だ。俺とイルリアは、明日の午後にジューナ神殿長に会う約束になっている」
「はいはい、了解、了解。最後のチャンスも棒に振るわけね。いいぜ、それはそれで面白そうだ」
リットは至極軽い感じで答え、ヘラヘラと笑う。
先に部屋に戻るとイルリアが席を立ったが、ジェノはリットの食事が終わるまで同席した。
「すまなかった。お前に気を使わせたのにな。だが、俺は、やはり……」
ジェノがそう言うと、リットは嘆息する。
「だから、別にいいって。ただな、選んだからには後で後悔はするなよ、ジェノちゃん」
リットはそう言うと、デザートを食べ終わり静かに席を立つ。
ジェノもそれに倣い、席を立って部屋に戻ることにした。
◇
部屋で休んでいると声がかかり、イルリアはジェノの部屋に足を運んだ。
そして、リットを交えて、再び今日の出来事をジェノがリットに説明する。
「なるほどね。猿に似た化け物に子供が襲われ、更に犠牲になりそうだった男を、正義の味方のジェノちゃんがさっそうと現れて救ったというわけだ。
物語なら犠牲になる人間が逆の気がするが、そういう話も斬新で悪くないかもな」
「茶化すな。人が死んでいるんだ」
「そうだな。確かに死んでいるな」
分かっているのか、いないのか。リットはそう言って笑みを浮かべる。
「そして、その化け物を倒すと、タイミングよくナターシャ神官たちが現れたわけね。そして、ジェノちゃん達の活躍を大々的に宣伝した。そのことが引っかかっているってわけだ」
「ああ。そして、その際に、化け物に襲われそうになっていた男が、何かを俺に伝えようとしていたことが気になる。生憎と、邪魔をされてしまったせいで、それが何なのかは分からないままだ」
ジェノの言葉を聞き、リットはさも面白そうに喉で笑う。
その行為が、イルリアには腹立たしくて仕方がない。
「リット! あんたは何がおかしいのよ! 一人だけ何もかも分かっているって顔をして! この一件には、サクリも関わっているかもしれないのよ!」
イルリアの怒りの声に、しかしリットの笑みは消えない。
「それがどうかしたのか、イルリアちゃん?」
「どうかしたのかってなによ! 分かっている事があるのなら教えなさいよ! 自分一人で情報を握っていて、分からない私達が苦しんでいるのを見るのがそんなに楽しいわけ?」
イルリアはリットを睨みつける。
「イルリア」
「あんたは黙っていなさいよ! 何なのよ! なんでこいつにそんなに気を使っているのよ! こいつは今回の事件を殆どわかっているのでしょう? だったら……」
話に割り込もうとしたジェノにも噛み付くイルリア。
だが、そこでリットは声を上げて笑う。
「いいねぇ、いいねぇ。その自分勝手な物言い。分からない事を自分で調べようとせずに、知っている人間から教えてもらえるのが当たり前だと思っているわけだ」
「何でもかんでも訊いているわけではないでしょう。ただ、この一件は人の命が掛かっているのよ!」
「それで? 命が掛かっているのならば、俺は常にお前達に自分の情報を話さなければいけないルールでもあるのか? 俺は自分の意志もなく、お前達に有益な情報を与える便利な本だとでもいうのか?」
リットは口元の笑みを崩さない。だが、その目が笑っていないことにイルリアは気づく。
「イルリア、お前の苛立ちも分かるが、少し静かにしていてくれ」
ジェノに言われ、イルリアは文句の言葉を飲み込む。
「リット。教えられる範囲でいい。答えてくれないか?」
「いいぜ。それで、何を訊きたい?」
ジェノに問われると、リットは再び笑みを浮かべる。
「すまないが、三つ教えてくれ。一つ目は、俺とイルリア、そしてお前は、この村で行われようとしている何かに巻き込まれようとしているということだな?」
「ああ」
「二つ目だ。その何かを解決するには、俺とイルリアでは手に余るということか?」
「そのとおりだぜ」
そこまでリットの回答を聞き、ジェノは少し間をおいて、最後の質問を口にする。
「三つ目の質問だ。サクリは……」
「その質問には答えられない。ただ、前にも言ったように、サクリちゃんはもう助けられない。それが答えられる全てだ」
イルリアは黙って二人の会話を聞いていたが、サクリを助けられないという話は初耳だった。
「なぁ、ジェノちゃん。ここまで分かったのなら、考えを変える気にはならないか? この村に残ったところで、サクリちゃんは救えない。そして、イルリアちゃんは淡い期待を抱いているようだが、ジェノちゃんのアレを聖女様が治すこともできない。
それなのに、この村に残る必要なんてないはずだぜ?」
「どうして、どうしてあんたに、聖女様が治せないって分かるのよ!」
我慢できなくなって、イルリアは再びリットに文句を言う。だが、リットは涼しい顔で、
「俺が治せないからだよ。天才の俺にできないことが、凡人にできるわけが無いだろう?」
と言って笑う。
納得がいかない。そんな自己陶酔な発言で、納得できるはずがない。
かの有名な聖女様を、無名の魔法使いが根拠なく侮辱しているようにしか思えない。
それに、サクリの事を話せないというのはどういうことだ?
この男は思わせぶりなことを適当に口にしているだけで、本当は何も分かっていないのではないだろうかと、イルリアは勘ぐってしまう。
「リット。イルリア。すまんが明日の朝まで時間をくれ。少し話を整理したい」
ジェノがイルリア達の間に入り、そう声をかけてきた。
リットは「いいぜ。もともと明日の朝までの予定だったしな」とそれを受け入れ、イルリアも特に拒む理由もなかったので受け入れた。
そして、この日は解散となった。
けれど、結果として、翌朝になっても、ジェノの考えは変わることはなかったのだった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【完結】勇者の息子
つくも茄子
ファンタジー
勇者一行によって滅ぼされた魔王。
勇者は王女であり聖女である女性と結婚し、王様になった。
他の勇者パーティーのメンバー達もまた、勇者の治める国で要職につき、世界は平和な時代が訪れたのである。
そんな誰もが知る勇者の物語。
御伽噺にはじかれた一人の女性がいたことを知る者は、ほとんどいない。
月日は流れ、最年少で最高ランク(S級)の冒険者が誕生した。
彼の名前はグレイ。
グレイは幼い頃から実父の話を母親から子守唄代わりに聞かされてきた。
「秘密よ、秘密――――」
母が何度も語る秘密の話。
何故、父の話が秘密なのか。
それは長じるにつれ、グレイは理解していく。
自分の父親が誰なのかを。
秘密にする必要が何なのかを。
グレイは父親に似ていた。
それが全ての答えだった。
魔王は滅びても残党の魔獣達はいる。
主を失ったからか、それとも魔王という楔を失ったからか。
魔獣達は勢力を伸ばし始めた。
繁殖力もあり、倒しても倒しても次々に現れる。
各国は魔獣退治に頭を悩ませた。
魔王ほど強力でなくとも数が多すぎた。そのうえ、魔獣は賢い。群れを形成、奇襲をかけようとするほどになった。
皮肉にも魔王という存在がいたゆえに、魔獣は大人しくしていたともいえた。
世界は再び窮地に立たされていた。
勇者一行は魔王討伐以降、全盛期の力は失われていた。
しかも勇者は数年前から病床に臥している。
今や、魔獣退治の英雄は冒険者だった。
そんな時だ。
勇者の国が極秘でとある人物を探しているという。
噂では「勇者の子供(隠し子)」だという。
勇者の子供の存在は国家機密。だから極秘捜査というのは当然だった。
もともと勇者は平民出身。
魔王を退治する以前に恋人がいても不思議ではない。
何故、今頃になってそんな捜査が行われているのか。
それには理由があった。
魔獣は勇者の国を集中的に襲っているからだ。
勇者の子供に魔獣退治をさせようという魂胆だろう。
極秘捜査も不自然ではなかった。
もっともその極秘捜査はうまくいっていない。
本物が名乗り出ることはない。
新約・精霊眼の少女
みつまめ つぼみ
ファンタジー
孤児院で育った14歳の少女ヒルデガルトは、豊穣の神の思惑で『精霊眼』を授けられてしまう。
力を与えられた彼女の人生は、それを転機に運命の歯車が回り始める。
孤児から貴族へ転身し、貴族として強く生きる彼女を『神の試練』が待ち受ける。
可憐で凛々しい少女ヒルデガルトが、自分の運命を乗り越え『可愛いお嫁さん』という夢を叶える為に奮闘する。
頼もしい仲間たちと共に、彼女は国家を救うために動き出す。
これは、運命に導かれながらも自分の道を切り開いていく少女の物語。
----
本作は「精霊眼の少女」を再構成しリライトした作品です。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
婚約者の形見としてもらった日記帳が気持ち悪い
七辻ゆゆ
ファンタジー
好きでもないが政略として婚約していた王子が亡くなり、王妃に押し付けられるように形見の日記帳を受け取ったルアニッチェ。
その内容はルアニッチェに執着する気持ちの悪いもので、手元から離そうとするのに、何度も戻ってきてしまう。そんなとき、王子の愛人だった女性が訪ねてきて、王子の形見が欲しいと言う。
(※ストーリーはホラーですが、異世界要素があるものはカテゴリエラーになるとのことなので、ファンタジーカテゴリにしています)
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
獅子姫の婿殿
七辻ゆゆ
ファンタジー
ドラゴンのいる辺境グランノットに、王と踊り子の間に生まれた王子リエレは婿としてやってきた。
歓迎されるはずもないと思っていたが、獅子姫ヴェネッダは大変に好意的、素直、あけっぴろげ、それはそれで思惑のあるリエレは困ってしまう。
「初めまして、婿殿。……うん? いや、ちょっと待って。話には聞いていたがとんでもなく美形だな」
「……お初にお目にかかる」
唖然としていたリエレがどうにか挨拶すると、彼女は大きく口を開いて笑った。
「皆、見てくれ! 私の夫はなんと美しいのだろう!」
社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ~【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
俺は社畜だ。
ふと気が付くと見知らぬ場所に立っていた。
諸々の情報を整理するに、ここはどうやら異世界のようである。
『ジョブ設定』や『ミッション』という概念があるあたり、俺がかつてやり込んだ『ソード&マジック・クロニクル』というVRMMOに酷似したシステムを持つ異世界のようだ。
俺に初期スキルとして与えられた『ジョブ設定』は、相当に便利そうだ。
このスキルを使えば可愛い女の子たちを強化することができる。
俺だけの最強ハーレムパーティを築くことも夢ではない。
え?
ああ、『ミッション』の件?
何か『30年後の世界滅亡を回避せよ』とか書いてあるな。
まだまだ先のことだし、実感が湧かない。
ハーレム作戦のついでに、ほどほどに取り組んでいくよ。
……むっ!?
あれは……。
馬車がゴブリンの群れに追われている。
さっそく助けてやることにしよう。
美少女が乗っている気配も感じるしな!
俺を止めようとしてもムダだぜ?
最強ハーレムを築くまで、俺は止まらねぇからよぉ!
※主人公陣営に死者や離反者は出ません。
※主人公の精神的挫折はありません。
前世は冷酷皇帝、今世は幼女
まさキチ
ファンタジー
【第16回ファンタジー小説大賞受賞】
前世で冷酷皇帝と呼ばれた男は、気がつくと8歳の伯爵令嬢ユーリに転生していた。
変態貴族との結婚を迫られたユーリは家を飛び出し、前世で腹心だったクロードと再会する。
ユーリが今生で望むもの。それは「普通の人生」だ。
前世では大陸を制覇し、すべてを手にしたと言われた。
だが、その皇帝が唯一手に入れられなかったもの――それが「普通の人生」。
血塗られた人生はもう、うんざりだ。
穏やかで小さな幸せこそ、ユーリが望むもの。
それを手に入れようと、ユーリは一介の冒険者になり「普通の人生」を歩み始める。
前世の記憶と戦闘技術を引き継いではいたが、その身体は貧弱で魔力も乏しい。
だが、ユーリはそれを喜んで受け入れる。
泥まみれになってドブさらいをこなし。
腰を曲げて、薬草を採取し。
弱いモンスター相手に奮闘する。
だが、皇帝としての峻烈さも忘れてはいない。
自分の要求は絶対に押し通す。
刃向かう敵には一切容赦せず。
盗賊には一辺の情けもかけない。
時には皇帝らしい毅然とした態度。
時には年相応のあどけなさ。
そのギャップはクロードを戸惑わせ、人々を笑顔にする。
姿かたちは変わっても、そのカリスマ性は失われていなかった。
ユーリの魅力に惹かれ、彼女の周りには自然と人が集まってくる。
それはユーリが望んだ、本当の幸せだった。
カクヨム・小説家になろうにも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる