28 / 32
夏祭り
第二十八話
しおりを挟む
日が沈み始め、外気が徐々に下がり涼しさがやって来る夕方五時前、私達は駅の公衆電話の近くで楓を待った。
駅はお祭りがあるということでいつも以上の人が行き来している。もちろん浴衣を着た同い年の子や甚平を着た男集団、彼氏と手を繋いだカップまで幅広い人が学校の反対側に流れて行く。
祭り会場は学校とは反対側の出口を出てすぐ目の前から豊海神社までの約一キロメートルぐらい。駅の中から見てもわかるぐらい多くの人で盛り上がっている。
「楓さん・・・はもう時期来るのよね」
美夢は緊張しているのか強張った口調で聞いてくる。
「到着が五時二分だからそろそろだと思う」
「会って高校での遥華のこといっぱい聞いてみよう」
いずみは美夢とは逆で楓に会うことを心待ちにしている様子。
あの後三人でUNOをしながら楓について少し話した。人柄がよく、友達が多くて慕われていると。私の彼女ということは言わなかった。むしろ言えなかった。二人がそういうことに理解あるかどうか、長い付き合いの私でもわからなかったから。
時間が気になり壁に取り付けられた時計に目をやる。分針はすでに四分を指していた。
「そろそろ着てもいい頃なのに」
そう言いながら視線を下ろすと二人が私の方をじっと見ていた。何か言いたげな顔ではなく、何かをじっと見つめるような目で。
「どうしたの?」
「わぁ!」
「キャ!」
急に肩に手を置かれながら叫ばれたものだから体がビクッと反応し、いつもは出さないような高い声が喉から漏れた。
私は急いで距離を取り後ろを振り向く。そこに立っていたのは白生地にワンポイントの入ったTシャツにデニムのショートパンツ、腰に赤と黒のチェック柄の入ったネルシャツを巻いた楓が立っていた。
「はぁ、不審者かと思ったじゃん」
「いや、遥華がずっとこっちに背ばっか向けてるから脅かそうと思って」
そう言っていたずらな笑みを見せる楓。楓の顔を見るのはとても久しい。電話越しの声は聞いているけど直接楓の声を聞くとどこかほっとする。
ちなみに私は白一色のTシャツに膝まである黒のスカート。美夢は青を基調としたワンピース、いずみはロングズボンに大きく英語が書かれた白のブラウス。靴は私といずみがスニーカー、楓と美夢がサンダルを履いている。
楓が二人の方を見ているし、二人も楓を見ているので早めに紹介した方が良いとすぐに思った。
「えーと、こちらが私の高校から友達で楓」
「初めまして西野楓です」
楓がぺこりと頭を下げるとすぐに二人の紹介にはいった。
「楓、こっちが美夢であっちがいずみ」
「初めまして天野美夢です」
「天野いずみっす」
「やっぱり」
二人がそれぞれ名乗ると楓は謎が解けたとでも言いたげな顔で私を見る。
「天野さんって双子だよね!遠くから見たときは凄く似てるなーって思った」
いずみがそうなんだよと話を続けるので二人の距離はすぐに縮まっていくだろう。祭りの終わりには意気投合できそう。
ここに来るまでのいろんな心配がなかったかのように消えていく。
「じゃあ早速行こうか」
話が盛り上がってきていただけど私がそれを遮った。今日の目的はお祭りを楽しむこと。決して公衆電話の前でたむろすることではない。それに美夢が少し難しい顔をして二人の会話を聞いている。会話に入るタイムングでも伺っているのだろうか。
いずみと楓はどちらかというと二人ともフレンドリーなところがあるので、そこは似た者同士話が合うのだろう。
駅を出る頃にはなぜか私の過去話で盛り上がっていった。いずみと美夢が話すのを楓がほーとかヘーとか相槌を打ちながら真剣な眼差しで聞いている。
三人の共通の話題が今のところ私しかないことは重巡わかっている。美夢もいずみの話に付け足すようにしながら会話に入っているし。
だけどそれを横で聞いている私の身になって欲しい。とても恥ずかしいから。
そんなことを知らない楓はいずみ達の話を聞いて本当?と聞いてくる。だから私は顔では笑いながら今にでも走って立ち去りたい気持ちを抑えながら人混みの中へと入って行った。
駅はお祭りがあるということでいつも以上の人が行き来している。もちろん浴衣を着た同い年の子や甚平を着た男集団、彼氏と手を繋いだカップまで幅広い人が学校の反対側に流れて行く。
祭り会場は学校とは反対側の出口を出てすぐ目の前から豊海神社までの約一キロメートルぐらい。駅の中から見てもわかるぐらい多くの人で盛り上がっている。
「楓さん・・・はもう時期来るのよね」
美夢は緊張しているのか強張った口調で聞いてくる。
「到着が五時二分だからそろそろだと思う」
「会って高校での遥華のこといっぱい聞いてみよう」
いずみは美夢とは逆で楓に会うことを心待ちにしている様子。
あの後三人でUNOをしながら楓について少し話した。人柄がよく、友達が多くて慕われていると。私の彼女ということは言わなかった。むしろ言えなかった。二人がそういうことに理解あるかどうか、長い付き合いの私でもわからなかったから。
時間が気になり壁に取り付けられた時計に目をやる。分針はすでに四分を指していた。
「そろそろ着てもいい頃なのに」
そう言いながら視線を下ろすと二人が私の方をじっと見ていた。何か言いたげな顔ではなく、何かをじっと見つめるような目で。
「どうしたの?」
「わぁ!」
「キャ!」
急に肩に手を置かれながら叫ばれたものだから体がビクッと反応し、いつもは出さないような高い声が喉から漏れた。
私は急いで距離を取り後ろを振り向く。そこに立っていたのは白生地にワンポイントの入ったTシャツにデニムのショートパンツ、腰に赤と黒のチェック柄の入ったネルシャツを巻いた楓が立っていた。
「はぁ、不審者かと思ったじゃん」
「いや、遥華がずっとこっちに背ばっか向けてるから脅かそうと思って」
そう言っていたずらな笑みを見せる楓。楓の顔を見るのはとても久しい。電話越しの声は聞いているけど直接楓の声を聞くとどこかほっとする。
ちなみに私は白一色のTシャツに膝まである黒のスカート。美夢は青を基調としたワンピース、いずみはロングズボンに大きく英語が書かれた白のブラウス。靴は私といずみがスニーカー、楓と美夢がサンダルを履いている。
楓が二人の方を見ているし、二人も楓を見ているので早めに紹介した方が良いとすぐに思った。
「えーと、こちらが私の高校から友達で楓」
「初めまして西野楓です」
楓がぺこりと頭を下げるとすぐに二人の紹介にはいった。
「楓、こっちが美夢であっちがいずみ」
「初めまして天野美夢です」
「天野いずみっす」
「やっぱり」
二人がそれぞれ名乗ると楓は謎が解けたとでも言いたげな顔で私を見る。
「天野さんって双子だよね!遠くから見たときは凄く似てるなーって思った」
いずみがそうなんだよと話を続けるので二人の距離はすぐに縮まっていくだろう。祭りの終わりには意気投合できそう。
ここに来るまでのいろんな心配がなかったかのように消えていく。
「じゃあ早速行こうか」
話が盛り上がってきていただけど私がそれを遮った。今日の目的はお祭りを楽しむこと。決して公衆電話の前でたむろすることではない。それに美夢が少し難しい顔をして二人の会話を聞いている。会話に入るタイムングでも伺っているのだろうか。
いずみと楓はどちらかというと二人ともフレンドリーなところがあるので、そこは似た者同士話が合うのだろう。
駅を出る頃にはなぜか私の過去話で盛り上がっていった。いずみと美夢が話すのを楓がほーとかヘーとか相槌を打ちながら真剣な眼差しで聞いている。
三人の共通の話題が今のところ私しかないことは重巡わかっている。美夢もいずみの話に付け足すようにしながら会話に入っているし。
だけどそれを横で聞いている私の身になって欲しい。とても恥ずかしいから。
そんなことを知らない楓はいずみ達の話を聞いて本当?と聞いてくる。だから私は顔では笑いながら今にでも走って立ち去りたい気持ちを抑えながら人混みの中へと入って行った。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【本編完結】アイドルの恋愛事情~アイドルカップルの日常~
奏
恋愛
同じアイドルグループ所属の陽葵と美月はファンに大人気のカップリング。
Q.公認状態だけれど、実際の関係は……?
A.恋人同士
甘えたな年上キャプテン×クールな年下後輩
基本的にバカップルがイチャイチャしているだけで鬱展開はありませんので、安心してご覧下さい。
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
*本編完結しました。今後は番外編を更新します
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
悪魔との100日ー淫獄の果てにー
blueblack
恋愛
―人体実験をしている製薬会社― とある会社を調べていた朝宮蛍は、証拠を掴もうと研究施設に侵入を試み、捕まり、悪魔と呼ばれる女性からのレズ拷問を受ける。 身も凍るような性調教に耐え続ける蛍を待ち受けるのは、どんな運命か。
【R-18あり】先輩は私のお姉ちゃんだけどそれを先輩は知らない
こえだ
恋愛
百合です。少しドロドロした設定かも知れません。
途中からR18の内容が入る予定です。
小説はど素人の初心者です。
なので気になる点、アドバイスなんかあったらコメントくださるとすごく嬉しいです。
<冒頭>
私の学校にはみんなが憧れる1つ上の先輩がいる。
スポーツ万能、勉強でも学年で1番を取るような誰にでも優しい完璧な先輩。
この先輩は私のお姉ちゃんらしい。
そして先輩はそのことを知らない…
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる