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二人の関係
第三話
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「はぁ・・・」
昼休み、持ってきた弁当を持って屋上に着ていた。一人で昼食は久しぶりだ。
いつもは楓と一緒に食べるけど、今日はまだ、一度も楓と言葉を交わしていない。
授業中に斜め前にいる楓と目が会うことはあった。だけど楓の顔を見ると告白の事を思い出して目を逸らしてしまう。
移動教室の時も一緒に移動するのに、今日は一人で先に移動した。
「・・・はぁ」
ここに来てからの何度目かのため息が口から出る。誰もいない屋上は暖かい日差しと風で昨日より涼しい。
膝においている弁当に箸を向ける。お母さんのいつもの味なのにいつもと違うような気がした。一人だからだろうか。
空では雲が西から東に流れて行く。その雲を見上げながら目で追う。
その時、ガチャッと屋上のドアノブが回される音がした。ドアは金属音を鳴らしながら開いて行く。
私の体はドアの方を見ながらこわばった。クラスの人に問わず、女の子の集団にでも鉢合わせしたらなにを言われるかわからない。
だけどその心配はドアから現れた人物を見た途端風に流されるように消えていった。
「遥華ここに居たんだ!?」
現れたのは誰でもない楓本人だった。私のこわばっていた体が少しだけ脱力していく。
「探したんだよ」
楓はそう言いながらドアを閉めて歩み寄って来る。手にはビニール袋を携えていた。ビニール袋には絵柄や模様すらない。購買で売っているパンを購入した時にもらえる袋だった。
「みんなで購買に行って帰って来たら遥華居ないじゃん。だから遥華の居そうな場所全部回ったんだよ!ま、二箇所しかないけど」
よいしょっと、と年寄りみたいに声を出しながら私の横に腰を下ろした。すぐさま袋を開けるとビニールに入ったクリームパンを口に運んだ。
私はそんな普段通りの楓を見つめてしまっていた。
昨日の告白はまるで嘘だったのだろうかとも思ってしまう。あれは夢、そう夢だったんだ!ラブレターも私の妄想だったんだよ。と思えてくる。
だけど私の頭には楓の言葉が何回も再生される。夢ではないと自分に言い聞かせるように。
いろんな思考を巡らせていたから、じっと見ていたはずの楓が頬を赤くしながら俯いたのに気づくのが遅れた。
「遥華どうしたの?私の顔ばっかり見て」
「・・・え!?、いやごめん。考えごとしてた」
恥ずかしがる楓を見ているとこっちまで恥ずかしくなった。楓からすぐに目を逸らす。楓はそうなんだ、と言って両手に持ったクリームパンをかじった。
今は楓と二人っきり。午前中は楓を避けてしまったけど、昨日から気になっていた事を聞くなら今しかないだろう。
「楓はさ」
急に名前を呼ばれた楓はキョトンとした顔で私を見る。そんな楓に真正面から向かい合う。大事な話だから、しっかりと楓と目を合わせる。
「私のどこを好きになったの?」
「全部」
楓は私の質問を即答で返した。
「・・・全部?」
楓はうん、と頷くと青い空を見上げた。
「全部って言われてもわからないよね。例えば・・・、頑張り屋なとこ、何事にも真面目なとこ、みんなは知らないけど人に優しいところ、あげると色々あるよ。そのぐらい私は遥華を見てたし、そばにいた。だから好きになった」
視線を私に向けるとえへへ、と苦笑いしながら頬を人差し指でかいた。
「ごめん、でもこれが私の気持ち・・・だから」
楓はこれまで告白して来た人達とは違う。これまでは一目惚れですとか付き合いたいと思ったからとか、みんな私の外見しか見ていなかった。人と関わりが少ない私がモテる要素はそこしかないのだと思っていた。だから全ての男子を断った。
みんな私のことをほとんど知らない。知っている人もほとんどいない。
楓はそんな人達とは違う。私を見てくれていた。私の外見ではなく、しっかり内側を知って好きになってくれたんだ。
なんだか嬉しいなぁ。
「あのさ!」
空を見ていた楓が私と顔を合わせる。告白の時と同じ真剣な眼差しで。
「私は遥華に断られても親友でいるから」
楓はまだ食べ終えていないクリームパンを袋に入れると、顔を真っ赤にしたままドアの方に走って行った。
私は数秒間だけ雲がなくなっていた快晴の空を見つめていた。
「私は楓にいい返事が出来るのだろうか?」
昼休み、持ってきた弁当を持って屋上に着ていた。一人で昼食は久しぶりだ。
いつもは楓と一緒に食べるけど、今日はまだ、一度も楓と言葉を交わしていない。
授業中に斜め前にいる楓と目が会うことはあった。だけど楓の顔を見ると告白の事を思い出して目を逸らしてしまう。
移動教室の時も一緒に移動するのに、今日は一人で先に移動した。
「・・・はぁ」
ここに来てからの何度目かのため息が口から出る。誰もいない屋上は暖かい日差しと風で昨日より涼しい。
膝においている弁当に箸を向ける。お母さんのいつもの味なのにいつもと違うような気がした。一人だからだろうか。
空では雲が西から東に流れて行く。その雲を見上げながら目で追う。
その時、ガチャッと屋上のドアノブが回される音がした。ドアは金属音を鳴らしながら開いて行く。
私の体はドアの方を見ながらこわばった。クラスの人に問わず、女の子の集団にでも鉢合わせしたらなにを言われるかわからない。
だけどその心配はドアから現れた人物を見た途端風に流されるように消えていった。
「遥華ここに居たんだ!?」
現れたのは誰でもない楓本人だった。私のこわばっていた体が少しだけ脱力していく。
「探したんだよ」
楓はそう言いながらドアを閉めて歩み寄って来る。手にはビニール袋を携えていた。ビニール袋には絵柄や模様すらない。購買で売っているパンを購入した時にもらえる袋だった。
「みんなで購買に行って帰って来たら遥華居ないじゃん。だから遥華の居そうな場所全部回ったんだよ!ま、二箇所しかないけど」
よいしょっと、と年寄りみたいに声を出しながら私の横に腰を下ろした。すぐさま袋を開けるとビニールに入ったクリームパンを口に運んだ。
私はそんな普段通りの楓を見つめてしまっていた。
昨日の告白はまるで嘘だったのだろうかとも思ってしまう。あれは夢、そう夢だったんだ!ラブレターも私の妄想だったんだよ。と思えてくる。
だけど私の頭には楓の言葉が何回も再生される。夢ではないと自分に言い聞かせるように。
いろんな思考を巡らせていたから、じっと見ていたはずの楓が頬を赤くしながら俯いたのに気づくのが遅れた。
「遥華どうしたの?私の顔ばっかり見て」
「・・・え!?、いやごめん。考えごとしてた」
恥ずかしがる楓を見ているとこっちまで恥ずかしくなった。楓からすぐに目を逸らす。楓はそうなんだ、と言って両手に持ったクリームパンをかじった。
今は楓と二人っきり。午前中は楓を避けてしまったけど、昨日から気になっていた事を聞くなら今しかないだろう。
「楓はさ」
急に名前を呼ばれた楓はキョトンとした顔で私を見る。そんな楓に真正面から向かい合う。大事な話だから、しっかりと楓と目を合わせる。
「私のどこを好きになったの?」
「全部」
楓は私の質問を即答で返した。
「・・・全部?」
楓はうん、と頷くと青い空を見上げた。
「全部って言われてもわからないよね。例えば・・・、頑張り屋なとこ、何事にも真面目なとこ、みんなは知らないけど人に優しいところ、あげると色々あるよ。そのぐらい私は遥華を見てたし、そばにいた。だから好きになった」
視線を私に向けるとえへへ、と苦笑いしながら頬を人差し指でかいた。
「ごめん、でもこれが私の気持ち・・・だから」
楓はこれまで告白して来た人達とは違う。これまでは一目惚れですとか付き合いたいと思ったからとか、みんな私の外見しか見ていなかった。人と関わりが少ない私がモテる要素はそこしかないのだと思っていた。だから全ての男子を断った。
みんな私のことをほとんど知らない。知っている人もほとんどいない。
楓はそんな人達とは違う。私を見てくれていた。私の外見ではなく、しっかり内側を知って好きになってくれたんだ。
なんだか嬉しいなぁ。
「あのさ!」
空を見ていた楓が私と顔を合わせる。告白の時と同じ真剣な眼差しで。
「私は遥華に断られても親友でいるから」
楓はまだ食べ終えていないクリームパンを袋に入れると、顔を真っ赤にしたままドアの方に走って行った。
私は数秒間だけ雲がなくなっていた快晴の空を見つめていた。
「私は楓にいい返事が出来るのだろうか?」
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