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デートのお誘い?

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 週が明けて月曜日がやって来た。日曜日は明日からテスト期間か~、と思いながらもやる気が起きず、ベットの上でゴロゴロと昔買った漫画を見返していた。やっぱニセ◯イは面白いわ。

 だから担任に朝のホームルームでテスト期間だと言われると嫌でもやらないとなという気持ちになる。

 けれど前回同様の勉強の仕方ではさすがに順位は上がる気がしない。だからって友達に聞くとノート見てるだけ、とか、授業中に理解すれば解けるよ、って言われた。このクラスは天才ばかりか!って突っ込んでしまいたくなるのを抑える。

「どうしようかな」

 頬杖をついて考えていると後ろから肩を叩かれた。振返ると鬼条さんが教室内に入って来ていた。

「鬼条さん!?」

「何回呼んでも気づいてくれないから入って来たの。それよりどうしたの?そんなに唸って?」

「・・・いた」

「え、なに?」

 俺は考えもしなかった。自分のクラスの人間ばかりに聞いて他クラスに聞きに行こうとはしなかった。しかしいるじゃないか、こんな身近にうってつけの人が。なんで今まで気が付かなかったのか自分でも不思議だ。入学試験も一学期中間テストも彼女は同学年で1位じゃないか。

「鬼条さん、俺に勉強教えて」

「?、いいけど」

 彼女は首を傾げながらも承諾してくれた。俺は嬉しくてガッツポーズを小さくやった。別に順位にそこまでこだわっているわけではない。中学の頃から成績が良かった方ではなかったし、中間にいたから別にいいやって思ってもいた。高校でもやはりそれぐらいの順位にはいたい。

 勉強のことで頭がいっぱいで鬼条さんが俺のところに来た理由を聞いていないことを思い出した。

「それで鬼条さんはどうしてここに?」

「えっとね、行きたいところがあって、それに付き合って欲しんだけど」

「どこ?」

「公園」

「公園?」

 俺は首を傾げながらながら彼女に聞き返す。仲のいい友達と行けばいいのに。弁当を共に食べるような友達がいるのになんで俺に?

「実はね、この近くの公園に曜日限定のクレープ屋さんがあるんだけど、そこが今日を最後に辞めちゃうんだって。だから行きたいんだけど、友達に言ったら用事があるからって」

「そうなんだ」

 クレープ屋なんてあった事自体初めて聞いた。公園ってそもそもどこにあるのかすら俺は知らない。

「鬼条さんは場所を知っているの?」

「うん、一度みんなで言ったから」

 そっか、一度はみんなで行っているなら場所はわかるか。テスト期間も初日だし、テストを教えてくれるって言うのに、こっちが彼女の願いを聞かないわけにはいかないだろう。それにクレープの味も気になるし。

「わかった、いいよ」

「よかった。LINEしてもなかなか既読にならないから無視されているんだと思った」

「LINE?」

 俺はポケットの中からスマホを取り出す。すると3件のメッセージが届いていた。どれも彼女からだった。

(今日の放課後クレープ食べに行かない?)

(ダメなか?)

(もしもーし)

 最後のもしもーしってなんか可愛いな。それは置いといて、朝と2時間目の終わり頃、三分前にメッセージが来ていたようで全く気が付かなかった。

「ごめん、全然気付かなかった」

「ううん、いいよ。じゃあ放課後、校門前で待ってるから」

 彼女はそう言い残すと教室を出て行った。

 それと同時にクラスの男子が一斉に俺の席を囲んだ。

「宮岡、あれはなんだ!」

「デートか!デートの話か!」

「鬼条さんはなんでこいつと」

「羨ましい!」

「お前、鬼条さんとどういう関係なんだ!」

 みんなの声がマシンガンのように飛んでくる。俺は逃げ場がなく、みんなの質問やらが終わるまで無言を貫いた。余計なことを言わない方がいいとそう思ったからだ。



「どうだった?」

 教室に戻ると三人が私に根招きしながら聞いてくる。

「どう?誘えた?」

「いいな~、私も彼氏欲しい」

「彼氏、じゃないけど」

「またまた、誤魔化さなくていいのに」

「本当なんだけどな」

 みんなは私の話を本気で聞こうとはしてくれない。というのも、私が宮岡くんと屋上に向かっているところを三人が見つけて、仲良く話しているところを見ていたらしい。その時の言葉が途切れ途切れに聞こえていたらしく、親公認なんでしょって言われるようになってしまった。

「誘うには誘えたよ」

 その言葉に三人がキャーっと奇声を上げる。その声はさすがにクラス中に聞こえていて、みんなが私たちの方を一斉に見る。

「ついて行っていい?」

「ダメ!」

 一人のからかいに本気で声を上げてしまった。それを聞いて三人が頬を緩ませる。

「青春ですな~」

「青春ですね」

「青春したいな~」

 みんなが私の方を見ながら羨ましそうに口々に言ってくる。

「もう終わり、この話終わり!」

 そう言って三人が聞いてくれるわけがなく、この話はもうしばらく続いた。






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