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第二十七話

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「どうする?」

 借り物カードの置かれた台の前でカードを見ながら頭を悩ませる。さっきまで横にいた他クラスの生徒はすでに保護者席に向かっている。

 どうする・・・料理の得意な子って・・・

 頭の中には二人の人物が浮かんで来る。真奈美と母さん。しかし母さんは運動会には顔を出さない。っというより出せない。毎年このシーズンに入ると仕事が忙しくなるらしい。

 真奈美は・・・本人には言うわけにはいかないがお世辞でも料理が得意だとは思わない。実際、真奈美が作ってくれた弁当は半分ぐらい焦げていた。頑張っていたことは伝わって来たけどな。

 そうすると知らない人を連れて行くか?どうせ証明するものは提示しなくてもいいだろうし。でも・・・。

 そこまで考えていると後ろから荒い息遣いで近づいて来る三人が来ていた。

 俺は焦っていたせいか救いを求めて周りを見渡す。

 家庭科の時間に料理を作っていれば誰が得意ってわかるのに。なんでうちの学校は三年生からなんだろう。

 焦ったまま自分の座っていたテントの方を見る。多くの生徒がだっている中でピョンとはねた髪の毛が目立つ一人の生徒と目が合った。

「・・・菜穂がいた!」

 俺はすぐさま自分のテントに向かって全力疾走した。さっき保護者席に向かっていた生徒は声を上げながら「パラソルを持っている人」と叫んでいる。

 俺はまだ間に合う、そう信じて一年生の席の前に息を荒立てながら立つ。

「菜穂、一緒に来てくれ!」

 その言葉に周りの女子が奇声を上げる。多分好きな人を引いたんだと思っているのだろう。

 菜穂の同様なのか、目を大きく開けておどおどしている。

 横を見るとパラソルが見つかったのか、保護者席の上を鮮やかな傘が後ろから前に渡されている。

「速く!」

 菜穂は周りの子たちに押されながら前に出て来る。

「あの、先輩・・・」

 目を合わさない菜穂や勝手に盛り上がっている生徒に誤解であることを話さないといけないのだがそんな暇はない。

「話はあと」

 目を合わさない菜穂の手を取るとグランドの中央にあるマイクの下に菜穂が転けない程度の全力で走った。
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