【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ？

7話

「これは俺とカティの問題だ。関係ない奴が口出しするな」

「おかしいな？　君たちが婚約していたのは随分と昔のことだろう？　まさか自分から婚約破棄したことすら忘れてしまったのかい？」

「だから婚約関係を復活させれば問題ないだろう！」

「今は婚約者同士でもないんだ。他人に対し、あまり無理な要求をするのもどうかと思うよ」

「謝罪し復縁を申し込むのが悪いとでも言うのか？」

「悪いね。少なくとも嫌がる女性に無理矢理申し込むものではないと思うけど？」

「くそっ、公爵家の人間だからって偉そうに……」

　そもそもアッバス様のほうが無理な要求をしていて非がある。正論を言うヘルムート様に勝てるはずがないのに。アッバス様の数少ない取り柄の一つが家柄だけど、それだってヘルムート様には負けている。

「別に僕が公爵家の人間でなくとも正しいことを言っていたと思うよ。アッバス、君は本当にどうしようもない人間だね。真面目に学ぶこともしなければ人間性を磨くこともしない。そんな人と婚約したいと思うような女性がいると思うかい？」

「いるに決まっている！　実際にカティは俺と婚約したんだ！　俺に魅力がないというのは間違いだ！」

「あの、父が欲に目がくらんで勝手に婚約してしまっただけなので、間違ってもアッバス様が魅力的だから婚約したということはありません」

「だ、そうだ」

「くそっ、お前たち、揃いも揃って俺を侮辱するのか……！」

「事実を言ってしまってごめんなさい」

「だ、そうだ。どうやら自分に価値があると思っているのはアッバス、君だけのようだね？」

「くそっ、くそっ、ガレン侯爵家を馬鹿にするなよ！」

　アッバス様は捨て台詞のようなものを残して逃げ去ってしまった。

「あの、ありがとうございます、ヘルムート様」

「いやいや、当然のことをしたまでだよ。それにしてもアッバスを怒らせてしまったようだ。面倒なことになりそうだね」

「はい……」

　ヘルムート様の善意だと思うけど、私とアッバス様の問題で迷惑をかけるのは申し訳ないと思う。

「こうなったら覚悟を決めないといけないかもね。このままだとアッバスが好き勝手して振り回されるだろうし。そのような未来をカティ嬢は望んでないだろう？」

「もちろんです！」

「それなら問題解決に手を貸してもいいかな？　文句があれば後で言ってほしい。少なくとも悪いことにはならないと思うけど」

　ヘルムート様の好意に甘えてしまっていいのだろうか？　今までも散々私に良くしてくれたし、今回は結構迷惑をかけてしまうかもしれない。

「これはヴァインベルガー公爵家の問題でもあるんだ。アッバスには自分の立場を理解してもらう必要がある。だからカティ嬢は気にしなくていい。結果が嫌だったら文句を言ってくれればいいんだ」

「はい……。ではよろしくお願いします。でも無理はなさらないでくださいね？」

「気遣いありがとう。驚かせてしまう結果になるかもしれないけど、文句は後で受け付けるから」

「わかりました」

　ヘルムート様はいつになく積極的だし、文句がどうのと言っているから大きな問題に発展してしまうのかもしれない。

　私にできることはヘルムート様を信じること。きっとヘルムート様が悪くない結果にしてくれると信じている。