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5話

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「テストの結果も良かったし、解放感があるな」

「そうですね」

 ヘルムート様と雑談しつつ、私たちは歩いていた。目当てのカフェは学園からそう遠くないところにある。貴族や裕福な平民向けの店が並ぶ通りにあり、治安も良い。私とヘルムート様は歩いて向かうことにしたのだ。

「今になって訊くのもどうかと思うけど、誘って迷惑ではなかったかな?」

「いえ、そのようなことはありません。……婚約者もいませんし。むしろヘルムート様の迷惑ではありませんか?」

「僕のほうは問題ないよ。婚約者もいないしね」

「失礼かもしれませんけど、婚約者を作ろうとしないのですか?」

「まあ……いろいろと面倒な立場だからね。そうそう都合良く相手は見つからなかったんだ。公爵家ともなると面倒なものだよ」

「そのような事情があったのですね。踏み込んだことを訊いてしまい申し訳ありませんでした」

「いやいや、気にしなくていいよ。婚約者がいないのは事実だからね。調べれば簡単にわかることだし、婚約者選びが面倒なことも公爵家なら当然だし」

 きっと釣り合いの取れる相手がいないのだろう。私のような伯爵家ならともかく、ヘルムート様はヴァインベルガー公爵家のご令息だ。下手な相手とは婚約できないのだと、少し考えれば納得できる。

 なら、どうして私とこうやって親しくしてくれるのだろう? 一緒に勉強する友人だから? それ以上の何かがある?

 ……下手に期待してしまうと後で悲しいことになってしまうかもしれない。でも私だってそろそろ婚約者がほしい。ヘルムート様のような人と婚約できれば最高だけど……。

 そのようなことを考えつつ、カフェに着き、私たちは適当に注文して雑談に興じた。





 ヘルムート様と過ごすひとときは正直楽しかった。ヘルムート様のような婚約者がいればいいのにと思う気持ちが止められなくなってきてしまった。私は伯爵家の令嬢であり、ヘルムート様は公爵家のご令息。婚約が不可能とはいわないけど、難しいことはわかる。

 婚約者がいない状況にお父様もそろそろ落ち着かない様子を見せてきている。私が積極的に動かないと、縁談が舞い込んで来たら望まない相手と婚約することになってしまうかもしれない。お父様は目先の利益に弱いし……。

「嫌になるわね、いろいろと……」

 思わず愚痴をこぼしてしまう。きっと消極的では現状は変わらない。より良い未来を掴み取るには自分から積極的に動くことが必要なのだろう。でもそういった行動ができる私ではない。

 悩むことは多く、解決は難しそう。何かきっかけでもないと私は変われないのかもしれない。

「とはいえアッバス様のような人との婚約だけは絶対に嫌だけどね」

 今の私でも望まない相手との婚約には反対できそう。私だっていつまでも過去の私と同じままじゃない。
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