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「はい。どういったご用件でしょうか?」
「勉強中に申し訳ない。カティ嬢がアッバスから婚約破棄されたことは噂で知っていたけど、どういった事情があったのかなと思ったんだ。他人の事情に首を突っ込むのは良くないと思うけど、どうしても気になってしまったんだ。気を悪くしたら申し訳ない」
「いえ、別に構いませんよ。アッバス様はテストで私に手を抜いて良い点を取らないよう言ってきました。それを断ったら脅すように言われて、それでも私は考えを変えなかった結果が婚約破棄です」
「そうだったのか……。カティ嬢には何ら非がないじゃないか。むしろ非があるのはアッバスのほうだ。慰謝料請求はしたのかい?」
「いえ、アッバス様はガレン侯爵家ですから。下手に慰謝料を請求しようものなら、それ以上の不利益を被るかもしれません」
「そうか、そういった事情もあったのか」
ヘルムート様はヴァインベルガー公爵家のご令息だから弱い立場の実情に疎いのかもしれない。悪意や悪い意味での好奇心で訊いてきたわけではないと思うので不快感はない。
でもどうしてわざわざ私の事情を知りたがったのだろう? 他人のスキャンダルを好むようには思えないし、私と同じように真面目に勉強に励む人だと思っていたけど。
「いやあ、カティ嬢が婚約破棄されるなんておかしいと思ったんだ。でも問題はアッバスのほうにあるとわかって安心したよ」
「それは良かったですね」
「ああ。婚約者がいないなら話しかけたって問題ないよね?」
「え、ええ。そうですけど……」
婚約者がいても話しかけたって問題ないと思うけど? ヘルムート様も真面目で遠慮がちなところがあるし、余計な誤解を招かないようにしていたのかもしれない。私としてはもっとヘルムート様と親しくなってもいいと思うけど……。
だって真面目に勉強するような性格だし、理不尽な要求なんてしそうにも思えない。
「一緒に勉強してもいいかな? 別にいつも一緒というわけではなくて、テスト前とかにね」
「はい、構いませんよ。むしろ私も助かります。一人ですとどうしてもわからないところもありますから」
「それは良かった。なら時々一緒に勉強しよう。テスト前は絶対にね」
「はい、わかりました」
ヘルムート様は嬉しそうに言った。確かヘルムート様は成績もトップクラスだったはず。それなのに手を抜かないのは立派だと思う。手を抜かないから立派な成績なのだろう。誰かさんとは違って努力する姿勢が素晴らしい。
こうしてヘルムート様と一緒に勉強する機会が増えた。勉強の合間の休憩で雑談することもあり、いつしかお互いを知って親しくなれたと思う。
アッバス様と婚約していたときには味わうことのなかった充実感。ヘルムート様と私は同じような価値観だと思う。
「そろそろテストだね。お互いにがんばろう!」
「はい!」
同じ目標に向かって一緒に努力できる関係は素晴らしいものだと思う。
「勉強中に申し訳ない。カティ嬢がアッバスから婚約破棄されたことは噂で知っていたけど、どういった事情があったのかなと思ったんだ。他人の事情に首を突っ込むのは良くないと思うけど、どうしても気になってしまったんだ。気を悪くしたら申し訳ない」
「いえ、別に構いませんよ。アッバス様はテストで私に手を抜いて良い点を取らないよう言ってきました。それを断ったら脅すように言われて、それでも私は考えを変えなかった結果が婚約破棄です」
「そうだったのか……。カティ嬢には何ら非がないじゃないか。むしろ非があるのはアッバスのほうだ。慰謝料請求はしたのかい?」
「いえ、アッバス様はガレン侯爵家ですから。下手に慰謝料を請求しようものなら、それ以上の不利益を被るかもしれません」
「そうか、そういった事情もあったのか」
ヘルムート様はヴァインベルガー公爵家のご令息だから弱い立場の実情に疎いのかもしれない。悪意や悪い意味での好奇心で訊いてきたわけではないと思うので不快感はない。
でもどうしてわざわざ私の事情を知りたがったのだろう? 他人のスキャンダルを好むようには思えないし、私と同じように真面目に勉強に励む人だと思っていたけど。
「いやあ、カティ嬢が婚約破棄されるなんておかしいと思ったんだ。でも問題はアッバスのほうにあるとわかって安心したよ」
「それは良かったですね」
「ああ。婚約者がいないなら話しかけたって問題ないよね?」
「え、ええ。そうですけど……」
婚約者がいても話しかけたって問題ないと思うけど? ヘルムート様も真面目で遠慮がちなところがあるし、余計な誤解を招かないようにしていたのかもしれない。私としてはもっとヘルムート様と親しくなってもいいと思うけど……。
だって真面目に勉強するような性格だし、理不尽な要求なんてしそうにも思えない。
「一緒に勉強してもいいかな? 別にいつも一緒というわけではなくて、テスト前とかにね」
「はい、構いませんよ。むしろ私も助かります。一人ですとどうしてもわからないところもありますから」
「それは良かった。なら時々一緒に勉強しよう。テスト前は絶対にね」
「はい、わかりました」
ヘルムート様は嬉しそうに言った。確かヘルムート様は成績もトップクラスだったはず。それなのに手を抜かないのは立派だと思う。手を抜かないから立派な成績なのだろう。誰かさんとは違って努力する姿勢が素晴らしい。
こうしてヘルムート様と一緒に勉強する機会が増えた。勉強の合間の休憩で雑談することもあり、いつしかお互いを知って親しくなれたと思う。
アッバス様と婚約していたときには味わうことのなかった充実感。ヘルムート様と私は同じような価値観だと思う。
「そろそろテストだね。お互いにがんばろう!」
「はい!」
同じ目標に向かって一緒に努力できる関係は素晴らしいものだと思う。
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