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「カティ、お前は本当に酷いな」
理由も告げずに酷いことを言ったのは私の婚約者のアッバス様。こういったことは以前から何度も繰り返されているので今さら驚いたりはしないけど、気分のいいものではない。
「どういう意味でしょうか? アッバス様」
「テストの結果だよ。俺はお前に負けた。お前があんなに良い点を取るから俺が無能みたいに思われるじゃないか。俺に恥ずかしい思いをさせるなんて酷いぞ」
「それはあんまりだと思います。私はアッバス様のためにも努力しました。婚約者が優秀であれば誇らしいのではありませんか?」
「それとこれは別だ。俺にだって立場というものがあるんだ。こうも点数の差があるとな。もう少し加減してくれてもいいんじゃないのか?」
「ですが私の能力を証明しないと婚約に文句を言われるのではありませんか?」
「それもあるかもしれないが……」
煮え切らない態度のアッバス様はガレン侯爵家の令息で、私はアズール伯爵家の娘。わざわざ格下の家との縁を結んだのは私が優秀な成績を収めたからだと思う。それなのにアッバス様よりも低い点数だったら婚約破棄の理由にされてしまうかもしれない。
そもそもアッバス様が努力しないから点数が悪いのに。それを私が悪いように言われても困る。王立学園では他人との交流を深めることも大切だけど、勉学に励むことも大切だと思う。
……アッバス様は私のことなんて大切にしてくれないし、婚約破棄ならそれでも構わないのかもしれない。私だって婚約関係には疑問を抱いている。ガレン侯爵家の令息だからと親が乗り気になってしまったのが運の尽きだったのかもしれない。
自分の境遇を嘆いたところで状況が変わるはずもない。
「どうしても手を抜けとおっしゃるならそうしますが、そのことを文書にしてサインしてもらえますか?」
「そこまでする必要があるか? ちょっと手を抜けばいいじゃないか。それで問題は解決するんだ。わざわざ文書にするなんて面倒だ」
「ですが何かあったときに困るのは私です」
「そんなことをすれば何かあったときに俺が困ることになるだろう? ちょっと手を抜くだけでいいんだ。簡単なことだろう?」
ちょっと手を抜いたくらいではどうにもならないくらい私とアッバス様には成績の差がある。不当に成績を下げるくらいなら婚約破棄されたほうがまだいいと思える。いくら婚約者だからといって、アッバス様のために私は自分の人生を捨てることはできない。
……やはり私はアッバス様のことなんて愛していないし、本音では婚約関係を解消できればいいと思っている。だから今後の自分のためにもアッバス様の要望を受け入れるわけにはいかない。
「それで答えは?」
「……いくらアッバス様の要望とはいえ、受け入れることはできません。私の成績を下げたところでアッバス様のためにはなりません。もっと努力してみてはどうですか? まずは自分が努力すべきではありませんか? もしアッバス様が努力されるのであれば私が一緒に勉強をみてもいいです」
「くっ、屈辱だ! そこまで言わなくたっていいだろう!? カティ、お前は婚約者のくせに生意気なんだ! 大人しく俺の言うことをきいていればいいんだ!」
「生意気で申し訳ありません。ですが私の意思は変わりません」
「そんなに俺との婚約が嫌なのか? ベルメール伯爵家はガレン侯爵家との縁を結びたいのではないのか?」
そこまで言えば私が譲歩するとでもアッバス様は考えているのだろう。でも私はそのように脅されて屈するつもりはない。婚約破棄されようが私は間違ったことなんてしていない。アッバス様と無理に婚約関係を続けたところでベルメール伯爵家の利益になるとも思えない。
「さあ、謝れ。そうすれば許してやろう」
「……それはできません。許してもらいたいとも思いません」
「な、何だと!? 本気か!?」
「はい」
「……それなら婚約破棄されても構わないというのだな?」
「はい」
「……いいだろう。カティ、お前との婚約を破棄する!」
「わかりました」
こうして婚約関係は終わってしまった。アッバス様との婚約は私にとって良いものではなかった。それはベルメール伯爵家にとっても同じ。お父様は許してくれるだろうか?
理由も告げずに酷いことを言ったのは私の婚約者のアッバス様。こういったことは以前から何度も繰り返されているので今さら驚いたりはしないけど、気分のいいものではない。
「どういう意味でしょうか? アッバス様」
「テストの結果だよ。俺はお前に負けた。お前があんなに良い点を取るから俺が無能みたいに思われるじゃないか。俺に恥ずかしい思いをさせるなんて酷いぞ」
「それはあんまりだと思います。私はアッバス様のためにも努力しました。婚約者が優秀であれば誇らしいのではありませんか?」
「それとこれは別だ。俺にだって立場というものがあるんだ。こうも点数の差があるとな。もう少し加減してくれてもいいんじゃないのか?」
「ですが私の能力を証明しないと婚約に文句を言われるのではありませんか?」
「それもあるかもしれないが……」
煮え切らない態度のアッバス様はガレン侯爵家の令息で、私はアズール伯爵家の娘。わざわざ格下の家との縁を結んだのは私が優秀な成績を収めたからだと思う。それなのにアッバス様よりも低い点数だったら婚約破棄の理由にされてしまうかもしれない。
そもそもアッバス様が努力しないから点数が悪いのに。それを私が悪いように言われても困る。王立学園では他人との交流を深めることも大切だけど、勉学に励むことも大切だと思う。
……アッバス様は私のことなんて大切にしてくれないし、婚約破棄ならそれでも構わないのかもしれない。私だって婚約関係には疑問を抱いている。ガレン侯爵家の令息だからと親が乗り気になってしまったのが運の尽きだったのかもしれない。
自分の境遇を嘆いたところで状況が変わるはずもない。
「どうしても手を抜けとおっしゃるならそうしますが、そのことを文書にしてサインしてもらえますか?」
「そこまでする必要があるか? ちょっと手を抜けばいいじゃないか。それで問題は解決するんだ。わざわざ文書にするなんて面倒だ」
「ですが何かあったときに困るのは私です」
「そんなことをすれば何かあったときに俺が困ることになるだろう? ちょっと手を抜くだけでいいんだ。簡単なことだろう?」
ちょっと手を抜いたくらいではどうにもならないくらい私とアッバス様には成績の差がある。不当に成績を下げるくらいなら婚約破棄されたほうがまだいいと思える。いくら婚約者だからといって、アッバス様のために私は自分の人生を捨てることはできない。
……やはり私はアッバス様のことなんて愛していないし、本音では婚約関係を解消できればいいと思っている。だから今後の自分のためにもアッバス様の要望を受け入れるわけにはいかない。
「それで答えは?」
「……いくらアッバス様の要望とはいえ、受け入れることはできません。私の成績を下げたところでアッバス様のためにはなりません。もっと努力してみてはどうですか? まずは自分が努力すべきではありませんか? もしアッバス様が努力されるのであれば私が一緒に勉強をみてもいいです」
「くっ、屈辱だ! そこまで言わなくたっていいだろう!? カティ、お前は婚約者のくせに生意気なんだ! 大人しく俺の言うことをきいていればいいんだ!」
「生意気で申し訳ありません。ですが私の意思は変わりません」
「そんなに俺との婚約が嫌なのか? ベルメール伯爵家はガレン侯爵家との縁を結びたいのではないのか?」
そこまで言えば私が譲歩するとでもアッバス様は考えているのだろう。でも私はそのように脅されて屈するつもりはない。婚約破棄されようが私は間違ったことなんてしていない。アッバス様と無理に婚約関係を続けたところでベルメール伯爵家の利益になるとも思えない。
「さあ、謝れ。そうすれば許してやろう」
「……それはできません。許してもらいたいとも思いません」
「な、何だと!? 本気か!?」
「はい」
「……それなら婚約破棄されても構わないというのだな?」
「はい」
「……いいだろう。カティ、お前との婚約を破棄する!」
「わかりました」
こうして婚約関係は終わってしまった。アッバス様との婚約は私にとって良いものではなかった。それはベルメール伯爵家にとっても同じ。お父様は許してくれるだろうか?
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