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114 PM8時45分 均衡の破綻をむかえる
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例えばさ、サイコロがあるじゃん。普通のね、1から6までの目が刻まれた正四角形のサイコロ。
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お互いにサイコロを振りあってさ、おおきな目が出たら勝ち、相手よりも目がちいさければ負けって勝負をするとさ、どうやったら相手に勝てると思う?
そう、運だよね。運がいい方が基本勝つんだ。
だから運がものスッゴくいいヒトならば相手よりも毎回おおきな数字を出して勝ち続けるかもしれない。本当に運がいい、豪運だとか超運だとかって言うヒトならばずっとずっと勝ち続ける事も出来るかも知れないね。
けれど僕もアオちゃんも運が格別いいってわけじゃない。
たぶん人並みだと思う。悪くもないけれども特別良いってわけでもない普通の普通。
だったら普通の僕たちがサイコロを振って相手よりもおおきな数字を出すのならば、出し続けるのならば運以外の要素をプラスして勝負に挑まなきゃならない。
アオちゃんの場合は『実力』かな? ドラゴンとしてヒトよりも勝っている能力。魔法を扱うことの巧みさや空を翔べることとかね。
アオちゃんはそういった『実力』を加味して一度の勝負で四つのサイコロを振れるんだ。
だから相手はアオちゃんの最低数『四』以上の数をひとつのサイコロで出さなきゃアオちゃんに出さなきゃ勝てない。
じゃぁ僕はなんだろう? こうして三人のエルフ兵を相手に勝てないまでも負けていないのはなぜだろう?
エルフ兵のハエルフ、ヘドエルフ、カスエルフが僕よりもおおきな数字を出せずに勝てないのは僕よりも運がいい悪いから?
ちがーう、それはハズレ。このクソエルフどもがどれだけの運を持っているかは知らないけれども(まぁ、こんな本国から遠くはなれた場所まで送られたんだから運はいいとは言えないだろうけれどね)僕と彼らにそう違いは無いだろうと僕は思っている。
ならばなぜ僕よりもおおきな数字を出せないのか? 三人もいるんだから僕が一度サイコロを振る間にあちらは三度振って僕よりもおおきな数字を出せばいいのになぜそれをしないのか?
わかる?
答えは僕が彼らをおちょくってイラつかせて単純な思考しか出来ないようにさせてサイコロの目を誤魔化してるからなんだ。
僕に斬りかかってきている三人は幾度も僕よりもおおきな数字を出し僕に勝っている。けれども僕はその瞬間、土を投げて口に放り込んで気勢をそらしたり、暴言で怒らせ正しい判断をくだせないようにしているんだ。
だから相手はサイコロで僕よりもおおきな出目を出してもそれを確認もせずにまたサイコロを振り続けるって寸法だ。
で、最初にやらかしたのはアオちゃんだった。このサイコロ勝負の話に例えれば自分が四つのサイコロですべて一の目を出して、相手がそれ以上の数を出してしまったのだ。
「当たったっ!!」
「ギャウッッ!??」
自分の優位性に慢心して油断していたのかも知れない。それともただ運で勝られたのか。あるいはぜんぜん違った要因が重なってしまった結果なのか。ともあれアオちゃんの丸々とした胴に相手の氷の礫かついにヒットしてしまったのだ。
「ギャウッ、ガウウッ!」
地面へと墜ちたアオちゃんは痛みをこらえながらもその場で体勢を立て直しふたたび大空へ羽ばたこうと翼を広げたんだ。
けれども飛び立つよりもはやくエルフ兵がアオちゃんの上に覆い被さった。
「…ッ! 捕まえたぞっ!!」
「よしっ、そのまま押さえてえおけよっ、決して傷け付けたりなんかするなよっ値がさがる。なんてったって金貨千枚になる獲物なんだからなっ!」
「ギャウッ、ギィィーーー~!!?」
アオちゃんが必死にエルフ兵の腕から逃れようとその身を捩らせる。アオちゃんを傷付けないようにとはしているみたいだけれども、あんなに暴れたらどう力が掛かるかもわかったもんじゃない。最悪骨が折れる事だって考えられる。
そう考えたら頭頭真っ白になってしまった。アオちゃんを助けることしか考えられなくなっちゃったんだ。
「アオちゃぁあッッ!?」
もちろんそんな格好の隙を三人のエルフ兵は見逃さなかった。戦闘を放棄してアオちゃんのもとへ駆け寄ろうとした僕はすぐさまその脚を剣の腹でしたたかに打ち据えられ転倒。エルフ兵の履いた無骨な軍靴で乱暴に地面へと押し付けられたんだ。
そして神器との撃ち合いでボロボロになった剣の切っ先が僕の首に添えられた。
「おいっ、ドラゴンの幼生体っ、こいつをしっかと見なっ! テメェの相棒のガキの命が惜しかったら暴れるんじゃねえよっ! ナマクラになっちまった剣だが子どもの細ッ頸はねるのなんざ簡単なんだぜっ!!」
そう言いつつエルフの兵、ハエルフは仲間の脚に踏まれて動けない僕のお腹部分を思いっきり蹴りつけやがった。
「ッごぉ!?」
アオちゃんがこちらに気がついたら僕はアオちゃんに魔法を放ち隙を作って逃げるよう伝えるつもりだったんだけれども、腹への鋭い一撃でそれもかなわなかった。
声なんてろくろく出せもせず内蔵を直接掻き回されたみたいな痛みに悶絶することしか出来なかったんだ。
「キュ!?? キューーーッ!!」
「………ッ!」
もちろんアオちゃんの心配そうな叫びにも応じられない。最初の一撃よりも心持ち弱いとは言えアオちゃんに見せつけるみたいに何度も襲ってくる衝撃に身を守るしかできなかったからだ。
「さぁ、これ以上相棒に痛い思いさせたくなきゃあ抵抗はやめな、大人しくするんだ。」
「……キュウ」
エルフ兵の言葉にアオちゃんは大人しくしたがう。もがいていた身体から力を抜き抗うことを諦めた。
「やったっ! これでオレらも大金持ちだっ」
すぐさまアオちゃんを押さえていたエルフ兵がアオちゃんの尻尾を掴み喜色に満ちた声ではしゃぎ出す。
その後、僕とアオちゃんは四肢を縛られ来た道を担がれて戻ることになった。
腕や脚が使えなくても魔法を放つ危険のあるアオちゃんの為、僕は人質として常に剣の先を向けられている。
本来のこの隊を率いていたサニーディは部下であるエルフ兵たちにこの勝敗は不当だ、僕を人質にアオちゃんを捕らえるだなんて卑怯な行いだ。と説得を試みていたけど、誰にも相手にされずむしろ「何言ってんだコイツ」って目で見られていた。
ホンットに人望ないねこのヒト。
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お互いにサイコロを振りあってさ、おおきな目が出たら勝ち、相手よりも目がちいさければ負けって勝負をするとさ、どうやったら相手に勝てると思う?
そう、運だよね。運がいい方が基本勝つんだ。
だから運がものスッゴくいいヒトならば相手よりも毎回おおきな数字を出して勝ち続けるかもしれない。本当に運がいい、豪運だとか超運だとかって言うヒトならばずっとずっと勝ち続ける事も出来るかも知れないね。
けれど僕もアオちゃんも運が格別いいってわけじゃない。
たぶん人並みだと思う。悪くもないけれども特別良いってわけでもない普通の普通。
だったら普通の僕たちがサイコロを振って相手よりもおおきな数字を出すのならば、出し続けるのならば運以外の要素をプラスして勝負に挑まなきゃならない。
アオちゃんの場合は『実力』かな? ドラゴンとしてヒトよりも勝っている能力。魔法を扱うことの巧みさや空を翔べることとかね。
アオちゃんはそういった『実力』を加味して一度の勝負で四つのサイコロを振れるんだ。
だから相手はアオちゃんの最低数『四』以上の数をひとつのサイコロで出さなきゃアオちゃんに出さなきゃ勝てない。
じゃぁ僕はなんだろう? こうして三人のエルフ兵を相手に勝てないまでも負けていないのはなぜだろう?
エルフ兵のハエルフ、ヘドエルフ、カスエルフが僕よりもおおきな数字を出せずに勝てないのは僕よりも運がいい悪いから?
ちがーう、それはハズレ。このクソエルフどもがどれだけの運を持っているかは知らないけれども(まぁ、こんな本国から遠くはなれた場所まで送られたんだから運はいいとは言えないだろうけれどね)僕と彼らにそう違いは無いだろうと僕は思っている。
ならばなぜ僕よりもおおきな数字を出せないのか? 三人もいるんだから僕が一度サイコロを振る間にあちらは三度振って僕よりもおおきな数字を出せばいいのになぜそれをしないのか?
わかる?
答えは僕が彼らをおちょくってイラつかせて単純な思考しか出来ないようにさせてサイコロの目を誤魔化してるからなんだ。
僕に斬りかかってきている三人は幾度も僕よりもおおきな数字を出し僕に勝っている。けれども僕はその瞬間、土を投げて口に放り込んで気勢をそらしたり、暴言で怒らせ正しい判断をくだせないようにしているんだ。
だから相手はサイコロで僕よりもおおきな出目を出してもそれを確認もせずにまたサイコロを振り続けるって寸法だ。
で、最初にやらかしたのはアオちゃんだった。このサイコロ勝負の話に例えれば自分が四つのサイコロですべて一の目を出して、相手がそれ以上の数を出してしまったのだ。
「当たったっ!!」
「ギャウッッ!??」
自分の優位性に慢心して油断していたのかも知れない。それともただ運で勝られたのか。あるいはぜんぜん違った要因が重なってしまった結果なのか。ともあれアオちゃんの丸々とした胴に相手の氷の礫かついにヒットしてしまったのだ。
「ギャウッ、ガウウッ!」
地面へと墜ちたアオちゃんは痛みをこらえながらもその場で体勢を立て直しふたたび大空へ羽ばたこうと翼を広げたんだ。
けれども飛び立つよりもはやくエルフ兵がアオちゃんの上に覆い被さった。
「…ッ! 捕まえたぞっ!!」
「よしっ、そのまま押さえてえおけよっ、決して傷け付けたりなんかするなよっ値がさがる。なんてったって金貨千枚になる獲物なんだからなっ!」
「ギャウッ、ギィィーーー~!!?」
アオちゃんが必死にエルフ兵の腕から逃れようとその身を捩らせる。アオちゃんを傷付けないようにとはしているみたいだけれども、あんなに暴れたらどう力が掛かるかもわかったもんじゃない。最悪骨が折れる事だって考えられる。
そう考えたら頭頭真っ白になってしまった。アオちゃんを助けることしか考えられなくなっちゃったんだ。
「アオちゃぁあッッ!?」
もちろんそんな格好の隙を三人のエルフ兵は見逃さなかった。戦闘を放棄してアオちゃんのもとへ駆け寄ろうとした僕はすぐさまその脚を剣の腹でしたたかに打ち据えられ転倒。エルフ兵の履いた無骨な軍靴で乱暴に地面へと押し付けられたんだ。
そして神器との撃ち合いでボロボロになった剣の切っ先が僕の首に添えられた。
「おいっ、ドラゴンの幼生体っ、こいつをしっかと見なっ! テメェの相棒のガキの命が惜しかったら暴れるんじゃねえよっ! ナマクラになっちまった剣だが子どもの細ッ頸はねるのなんざ簡単なんだぜっ!!」
そう言いつつエルフの兵、ハエルフは仲間の脚に踏まれて動けない僕のお腹部分を思いっきり蹴りつけやがった。
「ッごぉ!?」
アオちゃんがこちらに気がついたら僕はアオちゃんに魔法を放ち隙を作って逃げるよう伝えるつもりだったんだけれども、腹への鋭い一撃でそれもかなわなかった。
声なんてろくろく出せもせず内蔵を直接掻き回されたみたいな痛みに悶絶することしか出来なかったんだ。
「キュ!?? キューーーッ!!」
「………ッ!」
もちろんアオちゃんの心配そうな叫びにも応じられない。最初の一撃よりも心持ち弱いとは言えアオちゃんに見せつけるみたいに何度も襲ってくる衝撃に身を守るしかできなかったからだ。
「さぁ、これ以上相棒に痛い思いさせたくなきゃあ抵抗はやめな、大人しくするんだ。」
「……キュウ」
エルフ兵の言葉にアオちゃんは大人しくしたがう。もがいていた身体から力を抜き抗うことを諦めた。
「やったっ! これでオレらも大金持ちだっ」
すぐさまアオちゃんを押さえていたエルフ兵がアオちゃんの尻尾を掴み喜色に満ちた声ではしゃぎ出す。
その後、僕とアオちゃんは四肢を縛られ来た道を担がれて戻ることになった。
腕や脚が使えなくても魔法を放つ危険のあるアオちゃんの為、僕は人質として常に剣の先を向けられている。
本来のこの隊を率いていたサニーディは部下であるエルフ兵たちにこの勝敗は不当だ、僕を人質にアオちゃんを捕らえるだなんて卑怯な行いだ。と説得を試みていたけど、誰にも相手にされずむしろ「何言ってんだコイツ」って目で見られていた。
ホンットに人望ないねこのヒト。
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